581外伝。黒衣森の少女 二人V

「もう!ちょっと!何やってんのよっ!」
「あ、いや。その。これは・・・。」
「もう知らない!顔も見たくないっ!話しかけないでっ!」
「や、ちょっと待った!」

ばたーんっ!
イキオイよくドアが閉まる。

ウルダハにある住宅街。その長屋の一軒。
一流の傭兵として名高い「猟犬」の家である。
長屋だけあって、それほどゼイタクな造りではないため、ドアを開ければエントランスなどなく、
部屋(リビング)になっているのだが、彼はそのリビングを私室にしている。
そのため、寝台からテーブルからキッチンまでが一部屋に揃うわけで。
今しがた出て行った女性は、この奥にある寝室を間借りしていて、最近独り立ちしたので、別の長屋に住んでいるのだが。
「なあ?どうしよう?」
「て、いわれても・・・。」
上半身裸の男、ハウンドは寝台にうつ伏せになり、その横に女性が。こちらは服は着ているが、少々薄着かもしれない。
「マッサージ屋を頼んだ、って信じてくれないかなあ?」
「そうねえ?どうかしら?本当だけどねえ。」
「だろう?」
「でも、誤解を招くのも仕方ないんじゃない?」
「まあ、いいか。なにもこれが初めてじゃないしなあ。」
「あら。かわいい彼女にヒドイ事してるのね。」
「かわいい、は否定しないが、性格キツイからな、アイツ。」
「ふうん。で、どうするの?」
「あと肩の辺り揉んでくれたらOKだ。この後仕事を取りにいかないとな。」
「熱心ね。りょうかーい。」



「ふん!なによ!人が家出たら、次から次へと女連れ込んじゃって。」
薄緑色がかった銀髪を腰まで伸ばしたエレゼンの美女は、憤懣やるかたなし、だ。
そう、一度や二度ではない。
その度にこうしてケンカしているのである。傍から見れば微笑ましいとも取れるが。
師弟から、ある時、男女の関係になってしまったのだが、それはそれで満足してるし、納得もしている。
彼の女癖の悪さを除けば。実際、さっきのだってマッサージかなにかだろうが、お金を払えばその先も。という職種でもあるし。
「不潔よっ!」
通りを歩くと、大抵の男は振り返るが、今回は違う意味で振り返る人が多そうだ。
そこに。
「や、おねえさん。何を怒ってるの?ボクが話を聞いてあげようか。」
と軽い感じの男が。
「あンだとぉ。」睨む。殺気十分の視線で睨まれて、男は、ひえぇぇぇと悲鳴をあげて逃げ出していった。
「あーあ。仕事でも探しにいこーっと。」クイックサンドに足を運ぶ。

「冒険者、傭兵の方々ー!護衛任務、お願いできませんか~定員は3名、残り2名です。
グリダニアから、ここウルダハまで隊商の護衛です。前金制残りは出来高払い、いかがですか?」

あ。グリダニア、か。いいな。ちょっと気を鎮めるにはちょうどかも。
「あ、わたし、それ参加しまーす。」と早速受け付けに。
「はいどうも。お嬢さん。参加クラスは?」
「剣術です。」
「はい了解しました。最初の方は幻術士ですし丁度よかった。また後ほど連絡しますのでこのパールをお持ちください。」
「はい、よろしく。」

ふふ。これでしばらくあのアホの顔見なくて済むわ。
グリダニアかあ。幻術修行以来かなあ。綺麗な空気、美味しい水。ううん。リラックスできそう。
あ、そうだ。先に行って水浴びでもしてこよう。パールを取り出し、先ほどのクライアントに。
「先にグリダニアに行ってきますね?」「どうぞ。」
よし。移動術式。


「なあ、おっちゃんよ。その隊商の護衛って、まだ空きあんのか?」
「ええ、後一人の予定です。」
「じゃあ、俺もたのむわ。」
「わかりました。クラスは?」「剣術だ。」
「バランスよく組めましたね。ではパールで説明を・・・・・・・」


「ふむふむ、明朝チョコボ厩舎前集合ね。てことは、まだ半日あるじゃない。宿だけとって散策でもするかな。」
エレゼンの女性はすっかり機嫌を直している。

散策も終え、ほどよい疲れをカフェでのワインで流し落とす。
ウルダハでは高価な野菜料理や、川魚料理もここではお手ごろを通り越して、激安だ。(ウルダハからすれば)
普段食べれない料理に舌鼓を打ちつつ、ワインも程よく回ったところで自室に。部屋には浴場までついている。
ウルダハなぞ、水がめがあって、そこから桶に汲んで布で体を拭くくらい。
残った水で洗髪、という質素極まりない生活だが。水浴びを心行くまで堪能し、寝台へ。
「ああ、いい一日・・・・。」スースー・・・


翌朝。厩舎前に行くと昨日の商人と、それ以外に幾人か。
全部で10人と6台のキャリッジという話だったが、キャリッジは外に止めてあるという。
護衛としては自分が一番乗りだったらしく、他にそれらしい人はいない。
「わたしが最初、ですか。」
「そうですね。術士どのはもうすぐ・・あ、来た。」
フード付きのローブを着た少し怪しげな男性?だ。フードの中にまで仮面をつけている。
怪しいことこの上ないが、どうも見た目ほどではないらしい。
「あ、自己紹介しますね。カタリーナ、といいます。よろしく。」
「・・・・トラオム・・・・・ろ・・く。」
「ええとですね、あとお一方・・・もうすぐですかね?」
「遅いですねー。遅刻ですか。前金から抜いちゃいましょう、あはは」
「はは!っと。あ。あれかな?」
ん?
少し離れたところから、こちらに走ってくる人物。
へ?
まさか・・・・。
男が到着するや、カタリーナは硬直した。
「あ、あんた、このアホ・・・。」
「お、リーナ。お前も受けてたのか。よろしく頼むぜハニー。」
「イッペン死ンデミル?」
「照れるなよ。」
「殺ス。」
「まあまあ、お二人とも。お知り合いでしたか。道中仲良く楽しんでくださいね。」
「誰が!」「ええ、そりゃもう。」
カタリーナの殺意の視線を、飄々と受け流すハウンド。
「では、出発しますよー。」


キャリッジの停めてある場所まで移動し、荷物の確認を済ませると隊商は発進した。
しばらくは鬱そうとした小道を一列縦隊で進み、ちょっとした広場に。
この先少し進めばキャンプ・ベント・ブランチだが、今回は通過予定。
その先をさらに南下していく。
予定としては、夕暮れにはトランキルに着き休息という事になっている。
だが。ベント・ブランチを越えてすぐのところでトラブルが。
先頭にはハウンド、最後尾にはカタリーナ、横をタラオムで固めていたのだが、2
台目のキャリッジのチョコボが「キノコ」を踏んづけてしまったのだ。
クェェェ!
このキノコ、見た目はやや大ぶりな平たい傘のキノコだが刺激を受けると、
いきなりその10倍以上の大きさにふくらみ、地中から這い出して襲い掛かってくるという、トンデモないキノコで。

「ちっ!」ハウンドが切りかかる。ぐるん。振り向いたキノコには何故か顔みたいなものが浮かんでいる。キーーーーーー!
今度はハウンド目掛けて襲い掛かってきた。
「リーナ!ちょっとコイツをどっかに離してくる。先に進めといてくれ!」
「いいわよ!帰ってこなくても!」
「つれねえなあ。」と走り出す。

「さっさと切り伏せりゃあいいのに・・・・。馬鹿ね。」
「そういうな、無益な殺生はしない主義なんだ。」
「はいはい。あ、たしかソコの先にいるカニ、キノコが好物だったんじゃ?」
「先に言え!」
キノコの後ろにカニまで引き連れて男は茂みの方に逃げていった。
「大丈夫かね?彼は。」と心配げなクライアント。
「大丈夫でしょ。殺しても死なないし。」
「では・・・」「ええ。先に行きましょ。」

広場にて一時休憩。
そこに・・・「・・・・・・!!!!」ん?
なにか聞こえたような?
しばらくして。
「ただいまー。」
一人のミコッテの少女を連れて、というか、服の裾を握り締められて男が帰ってきた。
「ちょ!」
ぷ!あは、あーっはっはっはっはっはっはっはは!!!!
なにそれ、まるで昔の自分じゃないの。
「いや、カタリーナ、話すと長くなりそうだ。」バツの悪い顔。
「犯されそうになりました。」薄いブラウンの髪を短めにしたミコッテの少女は真顔で。
「お、お前、なんて事を!」
「ハウンドさん?少女を誘拐したうえ、手篭めに?」
自分でも目つきが怖くなっていくのがわかる。
戦乙女に睨まれると死が約束される、とは戦場で評判になりつつある。
「ち、違う!カタリーナ、俺がそんな趣味じゃない事くらい知ってるだろっ!」
必死の弁明。
「そうね。胸が大きくて髪の長いのが好みだったっけ?」
「ったく・・・。」ハウンドの溜め息。
口説かれた回数を思い出し、ケンカ別れのたびになんだかんだと口説いてくる男を唇を尖らせて睨み付ける。
唐突に、「ハウンドはこの人が好きなの?」とミコッテの少女。
「まあ、なんだ。子供が気にするコトじゃねえ。」どうやらいつもの調子にもどりつつあるようだ。
カタリーナは膝立ちになりミコッテの少女と正面から顔を向けて。
「あら、かわいいお嬢ちゃん。お名前は?あたしはカタリーナ。この男にヘンな事されなかった?」
「ちょっと待て!さっきから聞いてればおれがやましい事したって決め付けてるだろ!」
「あ、遅れました。エフェメラ・ミトア、っていいます。よろしくです。」
「そう、よろしくね。エフィって呼ばせてもらうわね。」「はい。」
「で?ハウンドくん?この子、どうするつもり?」
「知らねえよ・・・勝手についてきちまったんだ。」
「ふ~ん、アヤシイなあ?」ジト目で見つめる。
「言ってろ。」ふて腐れるハウンド。

「じゃあ、出発しましょうか。」商人の声。


----------コメント----------

日記内用に関係ないコメントで悪いのですが、CEOの裏の顔貼っておきますw
マユリさんはけしからん日記見たから分かるかな?w

http://lodestone.finalfantasyxiv.com/rc/diary/entry?e=465157
http://lodestone.finalfantasyxiv.com/rc/diary/entry?e=465184
Marth Lowell (Durandal) 2013年05月07日 17:54

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>マルスCEO、裏の顔、じっくり見ましたw
動画は笑いましたw
さて、黒衣森の少女編もそろそろクライマックスです。予定ではあと2話(伸びても3話)ですので。尚、ラストはやはり注意書きです。
どうぞ、最後までお付き合いくださいますよう・・・
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月07日 18:26

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>マユリさん
了解です、完結したらサイトの方も更新しておきますねw
Marth Lowell (Durandal) 2013年05月07日 18:32

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追記
あぁ・・・、注意書き・・・。
カタリーナの最後の描写か・・・。
Marth Lowell (Durandal) 2013年05月07日 18:39

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>マルスCEO、よろしくおねがいすますw
書いておいてなんだけど、ハッピーエンドにならないってのは辛いなあ・・
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月07日 18:50

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ガーン。ネタばれだ。
Sanshi Katsula (Hyperion) 2013年05月07日 18:54

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>マユリさん
明るいのも読みたいねw
エリスとエフェメラさんの絡みとかw
ネタ置き場に何個か置いてあるのでも良いかもw
Marth Lowell (Durandal) 2013年05月07日 18:56

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>サンシさん
過去のお話なのですでにばれてますけどねw
Marth Lowell (Durandal) 2013年05月07日 18:59

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>三枝師匠、黒衣森の少女のラストで・・・
マルスCEOのいうとーり、すでにケリのついた話なのですよ・・。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月07日 19:13

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>マルスCEO、そうですねw
ネタさえあればw
明るいお話、書きたいなあw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月07日 19:21

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>マユリさん
ネタ置き場
http://lodestone.finalfantasyxiv.com/rc/forum/thread?gcid=2231017&threadId=2002000

社長関係以外だと、ミーランたちの話とか?
Marth Lowell (Durandal) 2013年05月07日 19:28

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>マルスCEO、ありがとw
ミーラン達は新生で頑張ってもらいたいけどねw
まあ、ヒヨッコ時代のミーランってのは前からの続きでいこうかしらw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月07日 19:46

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すまぬ!正直読んでなかったwww
Sanshi Katsula (Hyperion) 2013年05月07日 20:00

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>三枝ししょーwたのんますよーw
ちゃんと読んでからカキコしてーw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月07日 20:13

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もう量が多すぎて、一気に読めないから、まとめサイトを眺めておきます。
それか、出版してw 少しずつ読むからw
Sanshi Katsula (Hyperion) 2013年05月07日 22:54

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量が多いので読み応えあります、ホントw
マルス社長がイフ剣振ってるシーンがようやく出てきました。ここからは再読w
現在473話目で~す。まとめサイト、すっごく助かってます。
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年05月08日 03:08

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>三枝師匠wぼりゅーみーw
マルスCEOに感謝です。もちろん、あたしも。
出版はむりぽ。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月08日 04:39

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>エフィさん、さらに増え続けますw
イフ剣ということは、フネラーレの狙撃ですねw
まとめサイト、ホントいいですよねw感謝ですw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月08日 04:41

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