565外伝。黒髪の・・・

「なんだっていうんだ・・・。」
戦場となっている瘴気の地、モードゥナ。
その少し高台に黒髪のエレゼンの男性が。
その傍らには負傷し、今は身を横たえている黒髪の少女。
傷口は塞いだが、出血もかなりあったので今しばらくは動くのがつらいだろう。

そこに。
あの赤い小月が。
いきなり幾何学的な光を全体に刻み、内側から破裂しようとしている。
「あの紋様は・・・。魔紋?」
黒魔道士であるところの彼は、術式を構成として編み、そこに魔力を流して呪を唱え、発動させる、というプロセスを熟知している。
だが。

ずどん。

轟音と振動と共に剣が落ちてきた。
これは?
剣というよりは・・・。
そのあまりの大きさに、声も出ない。何せちょっとした塔くらいの大きさなのだ。
下に居た兵士達が巻き込まれていない事を祈りつつ、その剣を見る。
この剣にも魔紋が刻まれ、黒い刀身に青い幾何学的な文様が。
「こいつは!」
鍵だ。
どう見ても上の月と連動している。そして月からこれが外された、という事は・・・。

「やばい!」
アルフレートは少女を抱きかかえると、走り出す。
どういった術式であの月を抑えこんでいたのかわからないが、アレは逆転の術式だ。
全ての構成が逆に働いている。
つまり。
ほどけていっている。

ならば。あの月には何かが封印されていたのだ。
そして封印するために、あの規模の封印をするために。注がれた魔力は何処に行くのか?
普通なら術式を施した者にいくだろう。だが。そんな術式を組んだ人間が今生きているわけが無い。
もう何百年、ヘタをすれば千年以上は前の人物だ。
高台から走り降りる。
少女はいまだ目を覚まさないが、かえってそのほうがいいだろう。
あんなモノを見れば、心に傷を負う可能性もある。
そして。


無音。


というよりも。音という音が意味を成さずに炸裂した。


「があ!」腕の中の少女をかばいつつ走っていたが、爆風に倒されてしまった。
これは・・・。やはり体力をつけないと・・・。
少女は未だに眠っている。ケガもないようだ。
が。
背中に鈍痛が走る。
「ぐ・・。」
触ってみると割れた石が背中に二つほど刺さっている。
「これは確かに痛いな。」抜き取り、回復術式を構成する。

傷を癒し、さらに少女を抱えて逃げるが。
「な!」ありえないものを見てしまった。これは・・・
「俺の方が心に傷できそうだ・・。」
神と見まごうほどの大きさ。そしてその翼。
そうか・・。コイツは蛮神か・・・。しかも、あの規模の結界術式を自ら打ち破るほどの。龍?か・・?そして・・・
「おいおいおい!なんだありゃ!」つい大声を。
上空に展開していく無数の構成。その魔紋を見た瞬間、家族の顔が浮かんだ。
「ち、お前ら無事でいてくれよ!」
数百に及ぶ轟炎の構成。
次の瞬間、魔力が注がれるのがわかった。
「やばい!!!」少女をかばい、地に伏せる。

轟音とも呼べる咆哮の後、無数の光の軌跡と、その後の爆炎。
とりあえずは戦場ではなく、無作為に飛ばしたようだ。
だが。
一発一発が轟炎(フレア)どころの比ではない。冗談抜きで数発あれば都市一つ壊滅できそうだ。
「まったく・・・。冗談じゃない。」
なんとか立ち上がり、家族の安全を祈るのみだ。
振り仰ぐと。
「おいおい。冗談だろう?」
もう一度。上空に魔紋が展開している。この構成は・・・・。
「この戦場に落とす気だ!」走る。
その瞬間。
足をすくわれた。別に転んだわけではない。至近距離にあの火球が落ちたのだ。

吹き飛ばされ、それでも腕の中の少女を抱きかかえ護る。






「ン?」
少女は轟音で目を覚まし。
上にかぶさっているエレゼンの男性に。「ちょッ!」
と体をわきにどける。ついでに殴りとばして・・いや、待てよ。
確か・・。ええと。そうか。治療してくれたナ。
でもだからって、抱きついていいはずも無い。
「おイ。」男性を見る。
意識が無いようだ。
どうにも先の爆音のせいだろうか?とすれば、自分をかばって?
暗い赤のローブは背中の方が焦げている。熱線が焼いたのだろうか。
しかし。自分には回復術式は編めない。
しかも二人だけの部隊、それもしらない内に移動しているようだ。
どうしよう・・・・。
どうしたら?
黒髪の少女は泣き出しそうになり・・・。
「そうダ、グリダニアに飛べばなンとカなル。」
移動術式を展開。
テレポ契約がしてありさえば、何処でも飛べるのだ。

「テレポ!グリダニア!」
だが、術式が起動しない。
「あレ?アニマ、まだ使いきってナいよ?」
もう一度。
「テレポ!グリダニア!!!!」
術式は・・・・
「おイ!誰だヨ!こンな事しやがルのは!」
少女は火傷で倒れた術士を背負い、必死に走る。


----------コメント----------

ウルラ君が瀕死になったときはフネラーネ嬢がテレポで撤退した事がありましたね。
「書き物。少年と少女の始点。4」
http://lodestone.finalfantasyxiv.com/rc/diary/entry?e=415445
この話です。

フネラーネ嬢・・・、ケアルくらい取りましょうよ・・・。
マユもケアルを取って戦闘が楽になったのを実感してますし。
「装備編。その2」
http://lodestone.finalfantasyxiv.com/rc/diary/entry?e=255939
この話です。
Marth Lowell (Durandal) 2013年04月24日 07:46

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>マルスCEO、それはですねー。
海賊出身の彼女は「攻撃こそが重要」って教えで育てられてまして。
海戦だと、アスタリシア戦でもそうですが、常に優位な位置から一方的に攻撃、撃破が常道なんですよね。
そしてその後、「家」に所属して暗殺が主な任務なので、回復なんていらなかったんです。そんなのよりも、的をいかに早く、ですし。まず見つかった時点で仕事はおじゃん。普段でも気配を殺しながら影のように歩いてるのはそこですね。
マユはその点、なんというかお転婆を通り越して、暴走してますからw
さすがに回復の必要性を見出したというかw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月24日 08:13

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