1043トリニティ。 商談はディナーの前に?

「ふにゃ~~あ。・・・・。あふぅ。」

グリダニアのとある「家」にて。

リビングルームにしっかりと自分の寝床を確保しているミコッテの女性、ショコラは。
朝日を浴びて・・と言っても、昼前のギリである。
そろそろ午後に向けて傾いていく日差しを見て、驚愕をする。
「ベッキィ!」
いきなり呼び出された女給姿のエレゼンの女性、ベリキート。
「わっち。朝ごはん食べてない。」
「ワタクシもです。」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

沈黙は金なり。
多分。


この「家」は、少し事情のある「者」に与えられていて、一般人は入れない。
そして、深緑生い茂るが如く融和を説くこの国も例外ではない。
もちろん、ウルダハや、リムサ・ロミンサからすれば可愛いとさえ言えるレベルだけれど。

この「家」の持ち主は「葬儀屋(フネラーレ)」
主に暗殺、偵察が生業。

そして、専属(自称)情報屋。ミコッテの「ショコラ」
コレに下っ端依頼持ち込み人「キーファー(キーさん)」
さらに、とある事情で転がり込んできた、旧知の女給「ベリキート」

元々、フネラーレが一人で住んでいたハズなのだが、ショコラが常駐するようになり(情報屋は居場所がバレたらヤバい)ということで
いつものようにリビングにあるクッション群を占拠している。
このクッションに関しては、フネラーレの趣味では無い、らしいが、満更でもないみたいなので、こっそりと数を増やしつつある。

そんなリビングで。
「お嬢様。ご昼食は?」黒い肌に銀髪のエレゼンの女給。
見慣れたモノだけど、街中に突然出てくると普通は「へ?」ってなるよねえ?
が、冒険者達の装備も中々のモノで、水着だよ!と目を凝らしてみると、重装備だったりする。
なんでも「武具投影」なる幻影術式でオシャレをするのが流行っているらしい。

「水着姿で、魔物に突っ込んでいくメンバーを、仲間達はどう思ってるんだろう?」
自分には、戦闘経験は皆無なので想像しかできない・・・

とりあえず。

「ねぇ、ベッキィ。何食べたい?」
「え!?ワ、ワタクシは・・・お嬢様にお任せいたします。」


この流れは、今しがた始まったワケでもなく、銀髪(自称)イケメン、キーファーが行方をくらませてから。

しばらく自主待機していた葬儀屋だったが、堪え性の無い彼女のコト。
「ちょット、行ってクる。」
と、ホイホイと出て行ってしまった。

その「ちょット」が長いのか、短いのか、判断に苦しむところであるので、こうやって「家」の管理兼、怠惰を貪っている。
もちろん、情報屋としてのネタの入手には余念がないのだが・・・。


「じゃあ、マリーさんとこに。」
「はい。」

スパイシーなウルダハ料理を提供する露店「マリーの店」は、いつも繁盛している。
それでも「あ、ショコラさん!」と声をかけてくれる。
応えて「マリーさん、わっちんトコ、ふたつ!」「はあい!」

しばらくして料理が運ばれて・・・
満腹。

そして。
「ねえ、ベッキィ?」
「何でしょう?お嬢様。」
「人ってさ、一生に食べれる量って決まってるんだよ。」
「そうなんですか?」
「毎日3食、ドードーって、ムリでしょ?」
「そういわれれば。」
「なので、今朝の分を取り返す!」
「矛盾していませんか?」
「え?」
「いえ、それではご夕食のご予約を。」
「ん~。ちょっと考えるから。」
「はい。」
「美味しいお店はいくつもあるけど、ね。」
「なるほど、さすがお嬢様。」

ホメられてもね?な、ショコラ。



ルビーロード国際市場。
ウルダハをウルダハたらしめる商業区域。
サファイアアベニュー国際市場がもっぱら、他国からの冒険者ボったくるのだとすれば、此処は健全だ。と。
その一角で露店を営むミコッテの女性。
明るい茶髪、「盾」を看板にしているので、常連さんがほとんど。
もちろん飛び込みも。

「うん、お昼にしようかな。」盾に声を掛け・・
ささっと商売道具をカバンに詰め込み、盾を背負うと・・・声が。
「エフィ!久しぶり!」

モスグリーンの髪のミコッテの女性。
「パニさん!」
「さん、はいらないって。」
「いや。でも・・。」
「エフィらしいね。」
「あの、お仕事、ですか?」
「ああ、それは近いけど。少し違う。やっと戦闘職を終えてきたんだ。」
「わお!おめでとうございます!「教授(プロフェッサー)」ですね!」
「いやあ、実は。内職はまだ少し掛かりそうなんでね。」
「そうなんですか?」
「じっくりやるよ。で、今から昼食?」
「あいにゃ。」
「じゃあ、ボクも一緒に。いいかな?」
「是非。」
二人のミコッテは、近くにある「クイックサンド」に。

「あ。」

「あ!」「あ?」

一人で昼食をとっていた、ミコッテ女史。
三者三様の「あ」だけれども。

グレーの髪の彼女は、ウルダハに進出をしている「アリティア産業」の子会社「アリティア物産」の社長でもある。

それとなく?見つけられた、見つけた、何のこと? が「あ」の中に多種多様に含まれていて。

「まずは・・えふぃ。状況・・・」
「あ。うん。お昼を食べに、だよ。」
「それはわかるよ。」
「ボクのコト?」
「いきなりの核心だね、パニッシュさん。」
「いえいえ、エリス・ローウェル女史。ただ単に友人と食事、久しぶりなんで。」
「えふぃ、そうなの?」
「エリス、何か勘違いしてない?」
「むむむ・・・」

とりあえず相席して、料理を注文する。

「んで?」もぐもぐ。
「・・だよ。」ごっくん。
「そうなん・・だ・・」んぐ!

大皿料理をシェアしながら、ちょっとしたグチも混じってくる。
「そこで!」茶髪のミコッテ。
ん?と訝しげな二人。
「ワタシに名案!」

「ほう?」「なるほど。」

グチもありつつ、おめでとうも言いたい。が、今じゃない。というか。
とりあえず、美味しいモノで〆たい。で一致。

具体的には。
「知り合いの食通に美味しいお店を紹介、もしくはリピートな作戦」
だそうで。
「そのスジに長けてる人に聞いてみるね!」
取り出したのは・・・チョコレートブラウンのリンクパール。


「あいにゃ?」
突然のパールの光に・・つい、銀髪からの連絡かと思いきや・・
「ショコラさん。あの、そおの。」
「わっちでよければ、情報の売り買いするよ。」
「あ。すみません・・・」
「えふぃたん。OKOK!いいよ。なんでも言って。」
「今夜の食事なんですけど、お祝いもしたいし、グチ?もあるかも?な、カオスなパーティなんですけど。美味しくって、カオスが大丈夫なお店、あります?」

「あるよぉ。」にたり。

これで今夜の食事の選択肢は絞られた。

「海戦食堂」だ。

ショコラは傍らの女給を見ながら。
「ベッキィ?今夜、海戦行くんだけど・・くる?」
「え!?」
「どうかしたの?」
「いえ。少し用事がありまして。夕食はそのへんで済ませます。お気遣い、感謝します。」
「そっか。じゃ、兄様によろしく。」
一瞬、表情が強張りそうになるが、これでも諜報員として(主に殲滅)は、ゆるやかに・・
(時折、お嬢様の観察眼が鋭どすぎる。やはり、葬儀屋と組んでからか。)
「・・・。」無言の会釈で応える。

ベリキート・ラピスラズリには。
主、クォ・シュバルツが絶対で。

この居候も、彼の算段で相成った、とは「家」の主たる葬儀屋ですら知らないかもしれない。

というのも。
彼女が承った仕事が。
今夜「海戦」の偵察。
当主である、クォ様が一人で出向く、という。
なんでですか?と、言いたいが・・
決まった以上、仕方ない。

「お嬢様、この後は?」
「ん~?夕暮れまで、情報収拾。本業を疎かにできないからね。」
「さすがです。では、ワタクシは「家」に戻って掃除を。」
「いやいやいや・・・いいよ?大丈夫。(これ以上惨事が増えれば、帰ってきた葬儀屋がブチ切れを通り越して何をするかわかったものじゃない)」
なにせ、この女給は見てくれだけは女給。で。
本質は・・・

「わかりました。大人しくしています。」
「あ、いやいやいや・・・、・・・」美味しい露店の情報を伝えておく、ショコラ。


ミコッテ達の宴の始まり、かも。

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