さわ・・・・
さわ・・・ さわ・・・
さわやかな風、緑の草花、そこに混じり、3国では見たこともないような珍妙な木、花?
が見受けられる。
ほんの一刻ほどだろうか?
神聖イシュガルド教国から、飛空艇に乗りこの地にたどり着き。
エレディタは、正直ビックリしていた。
なぜなら、こんな光景は正直初めてだった。
いや、一部地域では、空に浮かぶ岩塊を見ることは出来た。
ただ、それは「観光スポット」的なものであって、しかも岩の下にはエーテルを放出しているであろう、結晶が張り付いていたから。
それが・・・・
かなりの大きさを誇る、島がそのまま空に浮いていて。
「なんや・・これ・・・。」
としか言えなかった。
元はと言えば、フォルタン伯邸にやっかいになり、伯爵との友好関係を(オルシュファン卿の口添えもあり)結ぶ事が出来た。
ただ。
早朝とも言えないが、早めの時刻に呼び出しを受けており、行った先には。
軽薄を絵に描いたような、なよっとした男。
「ああ。俺はエマネラン。実は君たちに依頼があるんだ。」
そして、受けた「依頼」というのは、視察とは名目で、いわゆる「意中の人」への文だった、と。
なんともつまらない依頼だとは思ったが、伯の次男である彼の依頼を邪険にするわけにもいかず、相棒の暗黒騎士に「しゃあないけど。ええか?」
応えて、黒髪の女性は「ええ。かまいませんよ。」と微笑む。
二人して、色恋沙汰?な依頼にはどうか?と内心思いつつも、この国の内情や、閉じられていた国がどんなもんなんや? 異世界って、どうなのかしら?
という、好奇心も捨てきれない二人なのであった。
翻って。
イシュガルド下層の宿兼酒場で騒動を起こした二人はといえば。
本来なら、二人を殺害したうえに、この騒動。
神聖騎士団に引き渡すなり、教皇庁の審問委員会に引き渡すのが通例だが・・・
「女性二人で部屋を取っている、というのはないかな?」
突然の騒乱、そして貧民街との繋がりもあるマスターは正直。
どうしたものか、悩む。
なぜなら、漆黒の青年はギルがたっぷりと詰まったであろう、ずっしりとした革袋を握らせてきた。
「いえ・・・その・・・・」
「身内なんだ。」その革袋をしっかりと握らせる。
重さだけではない、ちゃんとした金属音と、感触は「ギル硬貨」であることが分かる。
そして、その金額を想像すると・・・
「ああ。そうでしたか。それなら・・・。」
ここしばらくは無かった「対竜戦」で、上層にも仮設の宿があったりするのだそうだ。
そこには冒険者達や、城壁修復のための人夫もおり、それほど警戒はされない、だろう。
「ただ、な。あんたら。俺も金をもらっておいてなんだが、アレはあんまりだ。・・・それでも、うちの娘を助けるためだった、て事に感謝はしてる。
もし、次やらかしたら、教皇庁に即通報するからな?」
マスターは、やれやれ。という感じで・・・ワインを一杯づつ渡す。
現場はもう店員達と二人しかいない。これ以上の問題は厄介だ。
「それ飲んだらさっさと出て行ってくれ。特に、ミコッテの坊や。アンタは目立ちすぎる。しばらくココを離れるといい。」
そこで・・「僕?え?そうなの?」とニッコリとした笑み。
「だな。」漆黒のアウラ。
「いや、俺から言わせれば・・・アンタも十分だ。 もうこの時間だが、・・・明日一番で、アバラシア雲海に出る飛空艇がある。しばらくソッチで過ごしてくれないか?」
「アバラシア?」漆黒の青年、アリア。
「ああ。浮遊島って知ってるか?」マスターの問い。
「聞いた程度だな。岩っころが浮いてる場所はあるが、ただの観光地だ。それに「島」という大きさじゃない。」
「そうか。なら、行ってみるといい。」
「楽しそうだな?」
「どうだろうな?少なくとも、あの地は「僻地」だ。竜の監視とは名目だけで騎士団でも、下位の・・いや、今のは流してくれ。
竜の侵攻に一番程遠い。ゆえに、お上から目を逃れるには、下層や、雲霧街なんかよりよっぽど都合がいいだろう、ということだ。」
「なるほど。」
「この金に見合った情報だと思うよ。だから、さっさと出て行ってくれ。俺はこの死体の処理をしなくちゃならねえ。」
「そうか。悪かったな。ああ。そうだな。礼とは別に・・・・」(黒猫、という単語を覚えておいてくれ。)
「ねえ?アリアさん?ドコ行くの?」「黙ってついてこい、トラブルメイカー。(全く、あの女の実弟だけのことはある。)」
かくして、二人はランディングで、飛空艇に乗り込む。
「わお!すごいね。なんだかワクワクだね?」「黙ってろ・・・ん?」(あの女は・・)
ランディングに横付けした飛空艇から、二人の女性と、二人の男性、他に乗客は居ない。
「では!」と、キャプテンは、イシュガルド行きの乗客を乗せると飛び去っていく。
二人の女性。
「はー、なんだかスゴイね。リンちゃん?」
黒髪を短めにざっくりとした女性。
聞かれた方、長い黒髪を束ねた女性。
「あ、エリ。うん。さっきのすごかったね。」
とはいうものの、それほどビックリしたわけでもなさそう。
「あの・・・さ、リンちゃん?こういうの、馴れてん?」
「あ・・・その・・・。前の世界・・・じゃ、リヴェーヌ岩塊群、っていう・・まあ、こういう場所があって。なんだか。。その、かえって懐かしい、というか・・・。」
うつむいて声を出す。
「あー、こういうの、あったんやな?ヴァナ・ディール?そこは飛空艇で?」
「いえ。移動術式で。」
「へー?どんな感じ?」
「エオルゼアみたいな、頭のなかに「指定場所」が出るわけでもないんで、地図を作りながら、かしら?ここから飛べば、こっちに飛べる、みたいな感じ。」
「ふ~ん、それはアレなん?ミッション?ヤバイモンスター退治?」
「そうね、ミッション。そして当然ヤバイのがいたわ。」
「ほうか。ほんなら、この先も・・・ヤバイのも居そうやな?」
「・・・それは・・・とりあえず、その・・恋文?を届けるのが最良では?」
「ああ、こんなん「ついで」や。まずは、この辺の情報収拾からやろうか。」
確かに、見たことのない草花、怪物?がいるであろう、この土地では知識の欠落は致命的だ。
「ああ、おおきに。」と言いながら、砦?みたいな場所に。「ちょ、待って!」ついていく。
(ふむ。面白い地形だ。それに、先の女は・・「拳聖」か。連れは分からないが。)
アリアは、周囲をくるりと見渡す。
見慣れない光景に正直驚きを禁じ得ない。
まずは、情報が要るだろう。そして、この「お荷物」
正直、連れでいるメリットと、デメリットはかなり微妙だ。
メリットとしては、見た目や態度に反して、高い戦闘能力を持っている。しかも回復職。
しかも、警戒心が無いのか「会社」の内情を面白いほど語ってくれる。
とはいえ、最近会社に来た、というのであまり深くは探れない。が、ゴシップ含め、面白い情報の収入源といえる。
デメリットは、「軽すぎる」 特に女性に対して。誰にでも声をかけては、撃退されているのがオチだ。
本人は「友達になりたいだけだよ。」と言っているが、「今夜、一緒にどう?」というのは、初対面の女性に対して「軽薄」と取られて仕方ないのだが、彼は「学習」をしない。
ヘタをすれば、引っかかる女性もいるかもしれないし、その場合「今の立場、同行している自分」の事までペラペラと喋りかねない。
ただ。
愉快なのだ。
今でこそ、屋敷に篭っていたのだが、外の世界を存分に楽しめそうだ。
なので。
「おい。あの二人連れに声を掛けるなよ?」
とクギを刺して・・振り返ったら、居るはずのミコッテの青年は居なかった。
「ねー!!ソコのおねえさーん!?僕たちと一緒しなーい?」
アリアは、ただ呆然とするだけだった。
(おやおや、僕の出番が増えたのかな?)
もう一人、ひっそりとランディング出口を通過せず、物陰に潜んでいた女性。
イシュガルド行きの船が出たので、小屋に戻った係員の目をすり抜け。
「クォ、ネ?何がしたいンだ?」
スタッバーは、しばらく身を伏せながら、事の成り行きを見守ることにする。
「とりあえずは、此処の指揮官さんにお話、ですよね?」
黒髪の暗黒騎士。
「せやなあ。あの手紙はその後や。」
返す、拳聖。
歩きながら。
なんといっても「ついででいいから」なのだ。
そこに。
「ねー!!ソコのおねえさーん!?僕たちと一緒しなーい?」
後ろからかかってきた声。
「げ?」「エリ、女の子らしくない・・」「そこ!?」「え。」
振り返ってみれば。
白いローブに、ピンク色の髪、尻尾のミコッテ。すでに駆け出して追いかけてきている。
間、もなく追いつくだろう。
それと、視界の端に捉えた黒尽くめ。
(アイツは・・・)
「やあ。さっき、船で一緒だったね!良ければ、案内してくれないかな?」
朗らかな声。
・・・・・。
「誰や?」
エレディタの剣呑な声に、アイリーンは、ただ慌てて、双方を見比べるだけ。
「あ。僕はエレン。エレン・ローウェルっていうんだ。」
ニッコリと笑顔で会釈。
「へぇ・・。」(あの社長の親族?)
「うちは、エレディタ。そんで、こっちは・・」「アイリーンといいます。」次いで応える。
「で?何の用や?」警戒心は緩めない。こんな、なんというか、掴みどころのない相手は滅多に居ない。
「あれ?さっき言わなかった?案内してほしいんだよ。」笑顔は変わらない。
・・・・・
本当につかみどころがない。
少女時代、「チルドレン」と言われる、キッズギャングのトップも張っていた。
その後に、「剣聖」と謳われるオッサンに師事した。
さらに、その「剣聖」の跡を継いだ「相棒」と、幾度なく死線を越えた。
だが・・・
こんなタイプは、見たことがない、というか、見たことはあるが、せいぜい悪徳商人の類で。
ただ、決定的に違うのは、彼には全くの邪気がない。
ほんの少しの態度でそれを見抜ける自信はあるものの・・・彼は、そういう気配が欠片もない。
「まあ、ええわ。」警戒心を解く。けれど。
「彼、誰や?」
視界の隅に黒い影。
「あ?あれ?アリア、ドコ?」と、とぼける風でもなく、振り返ったミコッテの青年。
「アリア?」
「ああ。うん。ちょっとした事で知り合ってね。一緒にイシュガルドに来たんだけど、トラブルで大変だったんだ。」
「・・・・!?(まさか?)」
「ん?顔色変わったけど。大丈夫?」ほんわかミコッテ青年は続ける。
「・・・昨夕、酒場で人死にが出る事件があった、って聞いたんやけど?」
「え?そうなの?」
「ああ。うちらは違う場所やったけどな。もみ消しはできひん。(散々、身に覚えがある)」
「僕は殺してないよ。ただ、謂れ無き罪を着せられた、女の子を助けるために動いただけで。」
真摯な表情。
それは、エレディタの眼を持ってしても、嘘とは断じられない、と思えた。
けれど。
「アリアは、短気なんだね。二人ほど銃で殺しちゃって。」
「!」「!」エレディタ、アイリーンは、息を詰める。
「あ。それはね・・」
言葉の最中。
「ここからは、俺が説明する。」漆黒のアウラの青年。
緊張が走る。
「まず、コイツの言ってることは、間違いない。俺たちは恐らくイシュガルドでお尋ねモノだろう。
最初にケンカを吹っかけたのはコイツだし、俺は抜剣した阿呆の頭に「反省」を促しただけだ。ただ、指が緊張のあまり、引きつっただけ。結果、弾丸が発射された。それだけだ。」
(嘘こきやがれ・・・、黒猫・・)
エレディタは、左手でアイリーンを下がらせ、二人を改めて見る。
「え?アリア?僕、悪かった?」と、今更ながら。
「行動自体は悪く無い。俺も好感が持てる。が、場をわきまえろ。」
「何なのよ、あなた達。」
状況についていけてないアイリーンが声を。
「いや。せっかくだから、この。我々の知らない土地の探索を共闘しないか?」
直感的に「はい。わかりました。それではお願いします!」
頭を下げる、暗黒騎士。
「ちょ!リンちゃん?」
「わ、女の子と一緒!」
二人の言葉とは別に、もう二人の視線での会話。
(もし、おかしな事をすれば、私はあなた方を斬り捨てます。)
(見たことのない装備だ、興味深い。もちろん、そちらの要望には最大限、応えよう。)
(わかりました。)(では、良き友よ。)
リムサ・ロミンサの一室。
「社長。」
筆頭秘書。
「なんだ?」
「いえ。エレン君・・氏が、アバラシア雲海に。」
「そうか。」
「ご心配では?」
「いや、それよりも、黒猫の動向だ。」
「それならば、別件で。」
「ふむ。」
「ああ、エレン君といえば。」
「なんだ?」
「彼の提案した、「広告で!」という事でコバルトハルバードの売上は好調ですね。」
「ああ。前から売っていたが、どうしても「ものたりない」装備でな。」
「ええ。ただ、彼の「だらけた態度の、イラスト」がウケたようで。」
「なんだそれは・・?」
「いえ、どうにも、ギルド認定を受けるために、納品を急ぐ職人(クラフター)が多いのだそうで。」
「それはそれで、困ったものだが・・・現状では仕方がない、のか。イシュガルドが開門をし、冒険者に釣られて、職人もついていった。市場の動向に眼を逸らせられん。」
「ですね。」
一、職人から成り上がった自分としては、昨今の「安易」な、認定には疑問はある。が、提供ができないのなら、需要を満たせない。
供給と需要。
これは、バランスの取り方が難しい。
「まあ。あれだ。なるようになるだろう。その結果、こちらに利潤があるなら、願ったりかなったりだ。」
「投げやりですね?社長?」
「・・・・それでも、ハイデリンは廻ってるんだよ・・・」