ふむ。
こんなところか。
あとは、名前・・。
そう、「空気」でいい。
「アリア」
女性名だが、返って疑惑に繋がるかもしれない。
それもまた、一興。
だろう。
己の「真意」にも繋がる。
そう。これは「興じさせる宴なのだから。」
腰に吊るしたホルスター(銃帯)に収めた銃、ナイトメア。
次さしぶりに触る。
そして、その後ろに・・・。
鱗のついた尻尾。
コレには、さすがに違和感を覚えなくもない。
なにせ、走るたびに勝手にバランスを取ろうとしているのか、はたまた、乱そうとしているのか。
着席の際にもジャマになる。
柔らかい尻尾なら、どうとでも収まるのだろうが・・・
硬すぎて、邪魔にしかならい。
「連中は、こういう尻尾をどうおもっているんだろう?」
思わず、独り言。
黒髪、漆黒の肌。そして、金色の瞳を持つアウラの青年は、とある酒場。
大した名でもないので、記憶の片隅にも置いていない。
そこに。
ピンク色の髪のミコッテの青年。
「やぁ!」
何気なく、不穏な気配も見せない「彼」は、冗談ではなくこうのたまった。
「ガンスリンガーさん、ですよね?」
少しの動揺も見せまいとしたが・・
「いやあ、見た目、そのまんまなんですね!びっくりです!」
「少し・・声(トーン)を落として欲しいのだが?」
「ああ!ゴメンナサイ!アリアさんでいいよねっ!」
「(ヒトの話を聞いているのか?)」
「ああ!ごめんっってば!小声、だったよね。うん。小声で話すよっ!」
「・・・・。」
「あれ?怒っちゃった?オカシイなあ、お姉が言うには冷静らしいけど?」
そこで、腰にある「夢魔」を突きつける。
「あ、これ!知ってるよ。銃だね。」
「・・・。いい加減、黙ってもらえないかな?」
「えー・・・。お姉に無理やり参加させられたんだよ?ちょっとくらい、話聞いてくれてもいいんじゃない?」
パン。
一発の銃声。
「わお!銃ってスゴイんだね!」
エレン・ローウェルは。
目の前に出来上がった小石の群れに、弾丸を吸収され。
無傷で、無邪気な笑顔。
アリアは(厄介、だな。)銃をしまう。
「あ。今のね。土の精霊術式でね。ちょっとしたケガとかだと吸収してくれるんだよ。」
ほんわかとした説明をするミコッテの青年。
「いいかね?自分のことは、アリア。それ以外でもそれ以上でもない。もっとも。」
青年は、やれやれ、といった仕草で。
「アズラエル(告死天使)とも、呼ばれている。理解できたかな?エレンくん。」
「へー!かっこいいね!」白衣のフードを取っ払った彼は、ピンクの髪を尻尾と同じく「明るいイメージ」で。
「で、さあ?」
問いかけるミコッテの青年。
「やんの?やらないの?」
突きつけた杖には、魔力の塊。
そして、背後には緻密で膨大な術式の構成。
「ここは、穏便に済まそう。それがお互いのため、になる。」
「そうなの?」
「ああ。姉君にでも相談するといい。」
「ふうん。 あ、お姉?」
「いきなりだな、君は。まあ、いい。お互いの状況を把握出来るだろう。」
漆黒のアウラは、・・
パールを。
(なあ、アドルフォ?)
(はい、クォ様。)
(そちらはどうだ?)
(はい。問題はありません。)
(そうか。なら、引き続き頼むが。もし、問題が起きた場合。)
(はい。)
(お前の裁量で事を運べ。)
(かしこまりました。)
(たまには、羽を伸ばすのもいい事、だろう?)
(仰せのままに。)
さて、だ。
この筋書きをどう解釈すればいいのだろう?
そう。
パーティーはこれからだ。
この先に見えるものは。
退屈の破滅か、破滅のための安寧か。
いやいや、カタストロフィ(破滅)だけが全てではない。
だが。
「最適化、ね。」
黒猫は、窓越しに満月を観る。
そこに。
「お邪魔、するわね。」
暗闇になお、影を落とす。
「ああ。レディ。お早いお着きだ。」
「そう?時間軸としては・・・最適化を図ったんだけど?」
「いいね。今さっき、報告のやりとりをしたところだよ。」
「その内容を知られたくなかった?と?」
「どうでもいい報告さ。」
「クォ。色々と面倒を押し付けるかも・・って、もう、押し付けてるよね。じゃあ、コレ。」
女性は、メモを渡す。
「はいはい、了承しましたよ。「稀代の女神」、キュベレー。」
「あらやだ。そこまで「上」じゃないのよ?「大地母神」、とは言われたこともあるけれど。」
「それでは、祝辞の抱擁をお願いしてもいいかな?」
「ああ。かまわんぞ。小僧。」男性の声で。
黒髪の女性に抱かれる。
「では、次の話題、だ。」漆黒のアウラ。
「うーん?ん~?」
白衣にピンクの髪色、と目立つことこの上ないミコッテの青年は・・・
先の「次の話題」とやらに、困惑?というか、なんで?が先に。
まず、実姉の要請(というらしい)に、パーティを組むハメに。
自由を尊ぶ(他人からすれば。自分としては気の向くまま)性格ゆえに、どうにも他人行動を理解するのがむずかしい・・というか、理解する気もない。
なにせ、やりたい事がありすぎるから。
姉をして「カオスの権化」とまで言わしめたらしいが、その意味もよくわからないし、分かる必要もないので流していて。
たまには不便も感じるが、概ね順調だ。
そして。
「要はさ、逃げてるヒトと一緒に行動すればいいんだね?」
・・・・。
アリアは・・。
「まあ、そうとも言える。できるだけ、核心をついた連中だとありがたい。」とだけ。
(ふうん?こういうのは、お姉が得意そうだし・・・あ、レイちゃん元気にしてるかなあ?)
(コイツ・・、本当にアイツの血縁なのかね?)アリアはため息を殺す。
暗闇の中。
「貴殿のご意向に添えれば、と思っていますよ。キュベレー。」
「そうかい?んじゃあ、楽しみにしとこうか。あ、しておきますわ、がいいかい?」
「貴方の中の貴女が、そうおっしゃるのなら。」
「そう?クォ。嗜みは、さすがね。」
「いえ。」
・・・・・・・・・・・・
(クリスタルは・・・・)
氷の魔力結晶は。
以前の「降臨」の際に、ほぼ全てに近い量を消費してしまった。
が、この土壌故に、貯蓄は増えている。
イゼルは(仮の)神殿にある寝台から起き上がり・・・
「巫女様!」と、侍従の女性から声を。
「だい・・丈夫。」
「どうぞ、お静かに。」
かすか?に切羽つまった声に、疑問を。
「何が・・・あった?」
「・・・。」
「言ってくれ。」
少しの沈黙・・・・
「実は。・・・・・・」
「それは、真かっ!」
あまりの巫女の激昂に、腰くだけになる侍従の女性。
「は・・。はい。ですが、真偽はわかりません。ただ・・。」
「ただ、なんだ?」
「竜族が、イシュガルドに侵攻した、という情報は間違いありません。」
「・・・・なんだと・・?」
「イゼル様が、降臨をされた後・・・かの戦が始まった、と。」
「なぜだ? 私は・・・かの・・・竜詩戦争を止めんがために・・・」
「いえ・・竜族は・・・」
「誰が!誰だ!?」
「ニーズヘッグ、が此度の争いに関わっている、とだけ・・。」
「あの・・・」
「かの竜は・・・邪竜と呼ばれし存在。巫女様。どうか、今しばらく安静に。」
固い寝台に拳を打ち付けるしかない現状では・・・。
「わかった。少し養生をしよう・・。」(少し、だ・・・すまない。
「困った、わ。」
砂埃の風。
もしくは、風に「砂」が混じった。
「あのね?母さん?」
ブルーグレイの髪を肩までで切り揃えた女性。
実年齢よりは、相当?若く見られるだろう。
「んー?」
こちらはグレイの長い髪を無造作に後ろで束ねた女性。
二人並んでいると、姉妹にも見えるが・・・
「あー。スゥ達も、今、さ。躍起になって現状の認識?をしてるんだって。」
「そんで?」
「あー。マユ?そういう子に育てた覚えはないよ?」
「ターシャには、えらく「子育て」をしてるじゃないの?」
「反抗期?」
「・・・・・そりゃ、まあ・・ってか、あの」
「うんうん。洗濯物の中に書き置きして出て行った「家出娘」が、ここまで子煩悩だとはね?」
「あー・・?ケンカ売ってる・・?」
「違うところでケンカの準備が要る、かもね。」
「どういう意味?」
「キナ臭い話。とだけ。 正直、お前には関わってほしくないし。」
「ちょっと!」
「最悪、手伝ってもらうかもしれないけど。今は大人しくウルラと一緒に周りに気をつけて。」
「・・・・はぁ・・。」
「いいじゃない。「魔女の後継」として、しっかり、ね?」
「うっぜー・・。」
「じゃあ、魔女は魔女なりに、いってきまーす。」
「ナイトノッカーじゃね?」
「ヒドイわ?せめて「ウィッチ・ケイオス」って呼んでよ。」
「はいはい・・。ハザード。」
「うわ・・。」
「・・・・ちゃんと、天魔の魔女って呼ばれるくらいに暴れて来てよ。じゃないと、墓標作ってあげない。」
「・・・墓標が大前提かい! ま、そうね。自慢の娘に恥じることない名前を残しておかなきゃ、ね?」
「死ぬな!って言ってるっ!」
目の前の席には、誰も居ない。
パールを握りしめ・・・。
後継。と、二つ名を持つ女性は、家へと。
「うわっちゃー・・・。」
銀髪の「元」ミコッテの、アウラの女性。
「うーん?」
自室、もとい船長室にある鏡台。
なるほどねえ。
東方へ貿易をこなしに行って、そのまま現地で儲けよう、というハラだったのだが。
どうにも政局の混乱、という「お題」があれば、コレ幸い。と、商人の血が騒ぐ。
が、デカイ「おさらば」をやった今、堂々と帰るのも如何なものか?
なので、苦肉の策?として、薬品を使って「アウラ」族に変身してみせたのだが・・・。
「どうさ?コレ。」
和毛ではなく、鱗の乗った尻尾。それに角。
あと・・。
名前。
エーア・ガイツ号は、名前を変えて登録はできても・・。
外見で、あっさりとバレる。
「マルスに頼る、しかないかあ。」
ちょっとだけ、しおらしいところを意識して・・。
「姉貴、オカシイ?」「うん。」
姉弟は、異論は口にしないが。
なんとなく以上に女性らしさを出そうとしている姉を生暖かく見守る事にする。