1019トリニティ。 粛々と・・・

イヤな風。
なんとなく。

ここ、森の都グリダニアでは、適度な温度・・木陰が多く、川も街の中にあって、快適と言っても間違いない。
ウルダハなんかは、埃と、乾燥しすぎた空気のせいで喉を痛めこともあるくらい。
街中に噴水を用意してるあたりがまだマシだが、あんな荒野の街で「いかにもお金つかってます」な施設は、正直好きではない。
その点、リムサ・ロミンサは潮風が心地良いのと、日差しも素敵だ。
といっても、生まれつき日差しに弱い体質なので、眺めるだけでいいのだけど。

で。

木陰とせせらぎに、気持ちよさを覚えている街に、なんだかイヤな風。
まとわりつくような視線があるような。

とはいえ、自分の正体・・というか、僕の実態すらつかんでいないハズの連中が街中に出てきて。
こいつらが「イヤ」な空気の元というか・・。
「チ。」
つい悪態が出るけれど、街中に出て行って「始末」するわけにもいかない。

「ヤになるナ・・・」

つい十日程前に「では、また連絡しますよ。」とへらへらした笑みを浮かべていた男と連絡ができなくなり・・。

そのあたりから、ヘンな連中の出現とカブったり・・・。

「いっそ、1人ラチって吐かせルか。」
ぼそっとした独り言に
 「フネラーレ!?今、スゴイことサラッと言った!」
寝室のドアを開けて(カギはしていない)茶色のミコッテの女性が入ってくる。
「ンだヨ?」
「いや、拉致?ダメだって!!」
「お前ガ使えなイからダろ?」
「う"・・」

長い黒髪に白磁のような肌を、薄手の寝着でくるんだ「人形」みたいな女性。
そこに、地味な街娘風のブラウス、スカートの茶色いミコッテ。

さらに。

「お嬢様は、控えめに見ましても尽力しておられます。」
唐突な声。
こちらは、「家」の主人と正反対で、透き通るような銀髪と、漆黒の肌。さらに、給仕服(いつ、いかなるときでも。)

「ベッキィ?」フネラーレはご機嫌ナナメを彼女にも向ける。

この二人は・・リムサ・ロミンサの豪商、クォ・シュバルツと親しい、というか血縁だったりして、自分の監視役もしているんだろうな、な間柄ではあるが。
一応、「家」の住人でもあるわけで。
結構、曖昧なバランスで生活をしている。

「クォはサ?どこまで情報持ってるノ?」
「それは・・存じ上げません。ワタクシにわかるのは、ウルダハで一悶着があった、という事。」
「へぇ?」
「フネラーレ、これ以上の情報はワタクシもお嬢様も、リムレーンに誓って知らないのです。」
「だよぅ・・」

仕方ない。自分で探すか。

そこに・・「あ。もしかしてあの青い制服組を気にしているのですか?」

・・・あの・・クリスタル・ブレイブとか言う奴らね。

「デ?」
「彼らが出張ってきているのは以前からですが、ここしばらく頻繁に動いていますね。正直、ウザいです。」
「あ、だよね!わっちも捕まりかけた!」
「!?お嬢様!!!」
「ベッキィ?」
「今すぐに討滅しましょう。     あんのクソ野郎共!テメェの脳みそが何色かじっくり見学させてやるッ!」眼鏡を取り出し、凶悪な瞳を隠すように・・
「ベッキィ?」慌てたミコッテは、どうどう、と手綱を・・。


はぁ・・。僕よりよっぽど凶悪だナ・・。

茶色のミコッテ、ショコラは「自称」情報屋で、アンダーグラウンドなものから、露店の品揃えまで把握をしている。それも、他国を股にかけて、だ。
その彼女をして、「現状がわからない」ときたもんだ。
さらに、この危ない給仕も密偵、兼実行役。
ついでに、へらへら銀髪男も情報を売り買いしながら、「依頼」を持ち込んでくる「お得意様」なワケなのだが・・・。
ここまで「今」がわからない、というのも珍しい。
さっきの「からまれた」ショコラも、普段は目立たない上に、逃げ足と知識くらいしかスキルがないわけで、冒険者とは違う・・このへんも不思議だ。
かの組織は、冒険者達を募って組織の拡充をしていたハズだが・・?

「出かけテ来る。」
寝着を寝台に放り出し、最近気に入っている単衣に袖を通す。

「フネラーレ?」「どちらに?」

「様子伺い、だヨ。」

二人を置き去りにして(なんせ、ショコラはともかく、銀髪給仕は目立ちすぎる)
ささっと「家」から出て・・。

(手持ちは・・矢が10本、か。ま、ダガーもあるしな。)
あえてコフィンメイカーを持ちだしたのには理由が・・・

「そこの君。冒険者かな?」
青い制服のブレイブメンバー。
「うン?なにかナ?」
「弓術士?」
「うン。(スタッバー、とは言えないよねえ)」
「実は、聞きたいことがあってだね。」
「なんでスかぁ?」(バカのフリはしんどいが・・)
「ちょっと、こちらに。」と、街中から少し離れた木陰に。


「我々は、クリスタル・ブレイブという、国家を越えた理念を持った組織でね。」
「・・・」
「少し、協力をしてほしい。」
「・・・どンな?」
「多数の冒険者が、この組織に賛同してくれている。その上でだ。情報提供をしていただきたい。」
「・・・なんデ、ここ?」
「いや、ひと目をはばかる事になるからだ・・。」
ヒューランの中年?男性は、意外とあっさりと。
「着ているものを全て脱いでほしい。」
「ハ?」
「反逆者がいる。そいつらのパールで連絡をされたくないからだ。」
「・・・デ?」
「いや、やましい気持ちではないぞ?」 泳いでいる目がそれを裏切っているが・・
「そう・・・じゃァ、仕方ないよネ・・」
袖を・・・
「ああ!」

目の前の人形めいた美女が肌を晒そうとして・・
そこに。

金色の瞳を見た。

前髪に隠されていた「眼」を見てしまった隊員は。「呪眼・・」
「せいかーイ。」
「た、たすけ・・」
「無リ。」

木陰の中。

大木に寄り添うように縫い付けられた両足は言うことを聞いてくれない。

「さテ?木の養分になるか、ウルダハの街道でミイラになるか、ドッチがいい?」
「ひ!」
コフィンメイカーを背にしまいながら・・・
ダガーを取り出して、頬に当てる。
「僕を知ってル?」
「呪眼・・・とだけ・・」
「じゃあ、もウ一回、木の養分かミイラだ。」
「海葬ってのは、無い・・んだな?」
「僕の領分を犯スとは、いい根性ダ?」
「どうせ殺されるんだ、せいぜいイヤミを言ってやる!」
「いいネ。じゃあ、殺さないかラさ。知ってること喋ろうヨ?」
「・・・」
「まずは、さ。指ってのガ定番だよネ?」
「・・・・・」
「そこでサ。新機軸。ってンで。目玉から逝こうカ。」
「え!」
「僕の眼を、悪く言ったダろう?」
「や。。やめて・・・。」
「大丈夫ダヨ?僕も、この左眼は自分で抉ったんダ。」
「!!!!」
「新事実、かナ?じゃあ、まずは左かラ。」


得られた情報は大したことがなかった。
もう、2、3人くらい当たればマトモな情報があるかもしれない。
ついでに言えば、血抜きをして荒野に放り出してきた手間を考えると、穏やかに進めたい。

「ショコラやベッキィが手間取るハズだ。」
彼女たちは暴力的手段に訴えない、というか、ショコラが訴えさせない。
なので、情報源が乏しいのだろう。
が。
逆に言えば、これは「上」が居る証でもある。
なので、クォに話が聞ければ、とは思ったが・・・生憎?相性は信じられないくらいに悪い。
コロセウムでの一件や、シックス強襲とか。

さらに、最愛のヒトがリムサで働いている、となれば。その影響力もあり。

あー!もうっ!

「僕は僕で動くシか無いかナ?」


スタッバー。
「職業的暗殺者。」
アサシンや、スナッファーとは違う。
立場上、他国との揉めごとはご法度なのだけれど・・

ブレイブ、とかいう連中相手は「国家を越えて」なンだし、いいだロ。 

まずは、「家」に戻ってかラ、だなあ。
2体目を森の奥に捨ててから。


「ただいマ。」
玄関を通り過ぎ、居間に。

「あ、フネラーレ!情報ゲッツだよ!」元気な声。
「ワタクシも一つ。」少し陰気な声。




「というわけで、ウルダハで起きた件はね、不滅隊がらみ。局長がタイホって話も出てて、ソッチは確認待ちだけど、多分間違いないね。」
「へー。」
「ワタクシからは・・・。暁メンバーが、ひいては関係を持った「冒険者狩り」をしているらしいのです。」
「へー。」

なるほど。
なるほど・・。

あの糞虫共の情報の裏付け、というか、こっちが裏付けしたというか・・。

「ところで、フネラーレ?」銀髪のエレゼン。
「あン?」
「暴れましたね?」
「ちょっト、だけだッテ。」
「ザナラーンに干からびたブレイブ隊員と、黒衣森に「肥料」と書かれた木箱があったそうです。」

・・・・

「その情報量をコッチにまわセよ。」

「依頼の無いスタッブは、ご法度ですよ?」
「お前ラが、チンタラしてるかラだろ。」
「それは・・・いい訳ができません。確かに不手際ですね。」
「んジャ、今日はこのへンにして。メシにしよウ?」



キーファーねえ。
居ないと居ないで、楽しみと収入が減るので、居てもらわないとなー・・・



なんとなくな一日は過ぎていく。

「ア。イシュガルドって、雪降ってンだっけ。今度、アイツと観に行こう。」

フネラーレは、夕涼みの風を楽しみながら、寝台に。




「くしゅっ!」
暖かい、いや、爽快な暑さなのに・・
「棟梁?風邪ですかい?」
ヒゲの酒場の主人。
「ああ・・。バデロン。このテのは、風邪じゃない・・・。」
「噂、ってやつすか?」
「ああ。フネラーレが絡むと・・・いや、絡ませようとすると、大抵・・・」
「嬢チャン、一途だね。」
「・・・」
「カルヴァラン棟梁?」
「あ?」
「お互い、いい身分だあね?」
「お前に言われたくない・・。」

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