白い風景。
それは単純。
白い。
それだけ。
そして、一つの真実を。
残酷な世界を「しろい」で覆い尽くす。
「あー・・くそう、なんやねん!」
チョコボに跨った女性。
寒冷地用に厚着はしているものの、「モンク(格闘士)」ゆえか、動きを優先した装備がこの吹雪にはこたえているよう。
鑑みて・・自分は。
アイリーンは布鎧に鎖鎧と、重装備。
結構つらい・・。でも。
(お願い・・エリ・・・頑張って・・)心の中で声援を。
「厄介。って、こういう時に使うねんな・・。」
振り返るでもなく、相棒の消耗はわかりきっている・・
が。
拍車を。
所詮、ポーターチョコボ。
拍車なんて、意味が無い。「くそっ!」
エレディタは手綱を気にしなくていいチョコボに初めて悪態を。
「事態は?なにがどうなっている?」
エレゼンの騎士、オルシュファンは今回の騒動に頭痛だか、心痛だか。
とりあえず、現状の報告から解析を自分だけでこなさないとならない。
3国相手は自分の領分ではない。
はずが・・。
内乱?それも、冒険者がらみとくれば、事はややこしいが・・・
その前に、ウルダハの内乱だとすれば、当人だけで・・
とイカなくなったのが、「暁の血盟」と「クリスタル・ブレイブ」だ。
連中が仲違いをして、内乱をするのは問題ないが、「3国」を巻き込んでの、さらには「冒険者」まで。
ややこしい。
「ええい、誰かおらんのか!」
オルシュファンは珍しく声を荒げ・・・目頭を抑えてこらえるように。
「すまん。とりあえず様子を見る、が、頼ってくる冒険者には手厚く遇するように。だ。」
「はい。」
やれやれ・・イシュガルドの4家もさぞ煮えたぎったモンだろうな。
騎士の位を持つ青年は、これから起こるであろう「厄介事」に・・・・・
「やるしかなかろう。」
正面から受けて立つ、と誓を立てた。
そろそろ・・
「リンちゃん?」チョコボに跨ったエレディタが振り返りながら声をかける。
「エリ?」きょとんとした表情で返す。
「今、ホワイトブリムを過ぎた。そろそろや。」
「分かりました。・・・早く、着くといいですね・・・」
「やな。早く温かいシチューとか欲しいわ。」
「ええ・・でも。」
後ろを走る「暗黒騎士」が。
「そうもいかない。みたいよ。」
チョコボから飛び降り、荷物を雪原に落とす。
「な!?リンちゃん!?」
「追っ手、です。」布鎧に鎖鎧、軽装とは言わないが、十分とも。
「しゃあないな!」
雪原の彼方から黄色い騎鳥に跨る青いコートの群れ。
少なくとも、4騎。
「リンちゃん?」
「はい?」
「なんでわかったん?音の無い世界やで?」
「空気?かな。」
「はぁ?」グランツファウストを拳につけながら。
「うん。こう・・なんていうんだろう?ヤバいのは、分かっちゃう?で納得してくれる?」
「ああ。うちも、な。似たような感覚がある。」
過去に「チルドレン」という、子供達のギャング団を指揮していたから。
「そう。」
すらり。
背中に預けていた鞘から、漆黒の大剣を抜き放つ。
「あ。リンちゃんさぁ。人、ヤった事あるんか?」
苦い表情で。
「ある。」
澄ました表情。
「そっか。じゃあ、しゃあないな。手加減はナシやで?」
「うん。アスカロンがあれば大丈夫。」
「どう大丈夫なんかは聞かん方がええやろな。」
「そんな!ヴァサーゴがあれば、5つ数えたら終わらせれます!」
(いろんな意味でヤバイなぁ、この人。)
「いきますよ!エリ!」
向かい来るチョコボに乗ったクリスタル・ブレイブの兵に。
大剣を振りかぶり、大上段からの一撃。
チョコボを傷つけることなく、ブレイブの隊員を斬り捨てるではなく。
「ぐあっ!」
大剣の腹の部分を叩きつけ、チョコボからまさしく叩き落とす。
「次。」
今度は、騎乗中のおそらくは術士を狙い、大剣を振り切る。
取り回しの悪い武器ではある・・が。
今回は、打撃ではなく牽制。
術士が、構成を編むのを防いだ。
「エリ!」
「あいよ。」
格闘を極めた彼女は、軽業師のように跳躍。そして術士をチョコボから蹴落とし、奪う。
「こやつら!」
ブレイブの隊員は、武器を構え直すが遅い。
結果。
青いコートの一軍を縄で縛り・・
「なんやねん?うちら、なんかしたんか?」
短い髪のモンクの女性。
それに応え・・
「クーデターだ。お前らの雇い主、暁の連中がウルダハ国家を脅かした。」
リーダーの男性。
厳しい顔つきだが、今は・・
「なあ?おっさん。うちらは、そもそもウルダハに滞在してへん。なんで追われるんや?」
「関係は皆無では無いだろう?」
「まあ、せやな。関係大有りや。せやさかい。」
顔を近づけてエレディタが豪語する。
「全力で無実を証明したろうやんけ?あぁ?」
「我々を拘束した時点で、貴様らの反逆の意志は明確だ。」
「さよけ。ほなら、一番手っ取り早い手段にでるわ。」
「な・・・なんだ?」
「周りを見てみ?」
両手を使って、大雪原をアピールする、エレディタ。
「ふっ、だからどうした?すぐにも我らの救助がやってくる。」
男は、拘束されながらも胸を張る。
「あ、っそ。」
黒髪のモンクは、傍らで雪を掘り起こしている相棒を見る。
「そのさ。目立つコートを取っ払って、雪の中に放り込んだら・・・どうなん?」
「!!!」
「せやなあ。うちやったら、よう見つけんわ。ついでに、コートの下の防寒着も頂戴しとこうか。うちらも寒いし。」
「やめろっ!」
隊長は必死に懇願する。
「あ?」
「・・・やめてください・・・。」
「せやって。どうする?リンちゃん。」
「・・・無用な殺生は・・」
「せやな。」
(かつての相棒も不殺を通してきた。)
「やってさ。隊長サン?どうしたもんかいな?」
「分かった。状況を言う。代わりに・・助けてくれ。」
「・・・・」
「そ、そんな。」
絶句する二人。
あってはならない、いや・・・あってしまった。
「お前らな、どんだけ噛んでるんや?」
エレディタは、冷静を保つのに精一杯・・・
「いや・・我々は・・」
「リンちゃん。話にならんわ。」
諦め顔。
「そうなの?」
「ちゃんとした情報がほしいわ。やっぱりドラゴンヘッドに行かんと。」
「参ったわね・・。」
「しゃあないな。まずはそっち。」
「了解。」
まずは彼の地に。
「でも・・エリ?」
「なんや?」
「こんなことって・・。」
「あった、んや。過去は変えれへん。先を見ようや。」
「そう・・だね。」
(まゆりちゃんは・・・過去は過去、として見てるのかな?)
チョコボを駆り、キャンプ・ドラゴンヘッドにたどり着くやいなや。
「おい!この町はうちらの味方か?」と、開口一番。衛兵に。
「エリ?」黒髪の女性。
「黙っといて、うちらの進退に関わる!」
「分かった。」
しばらくして・・・
「そうか。君達もか。」
エレゼンの青年騎士。
「話がわかる、ちゅうのは、ええことや。」エレディタは満足そうに相棒を見る。
「・・・ええと・・。」
「安心したまえ。俺が君達の身分を保証しよう。」
褐色のエレゼンの騎士。
「まー。そう言ってもらえるのはナニよりや。ただ。どういった話になってるんや?」
もっともな疑問。
「コレは・・確証は得れていない。なので推論になる。」
「めんどくさいなあ?」
「ああ。そうだ。非常に面倒、かつ切羽詰まっている。」
「その・・?」
「ああ。レディ達。少しばかりとは言えない。黙秘を誓ってもらえるか?」
「いまさら、やな?」「です・・」
「そうだな。イイ。」
「不謹慎やないか?」
「いや、君達の覚悟が、だ。」
「さよけ。」「・・・。」
場所を変え、騎士詰め所に。
「ここだけの話、とはもういかないな。ただ黙秘を誓ってくれたレディ達だ。はっきり言おう。」
「十分勿体つけたやんけ?」「エリ!」
「いい。あくまで噂以上にだ。クリスタル・ブレイブが、「暁の血盟」がクーデターを起こし、主犯、ミンフィリアと、実行犯、ラウバーンを捕らえたという。
そして、女王ナナモの消息がわからない。一説にはすでに亡き者とされた、とか・・・」
「おい。まてや。なんやそらっ!」
エレディタは激高して騎士に掴みかかる。
「エリっ!」
アイリーンが相棒を抑える。
「まあ、待て。君達。」
エレゼンの騎士。
「未だ状況は未確認だ。クーデターの件にしろ、女王の件しろ、だ。そのうち状況は明らかになっていくだろう。ただ、クリスタル・ブレイブの連中だけは接触を避けてほしい。
こちらにも通達が来たが、「保留」という形で収めておいた。もちろん、君達には絶対の信用を得ている。」
「なんでや?」「ですね・・」
「疑い深いな。では・・・おいでください。アルフィノ殿。」
銀髪の少年。
エレゼンならではの線の細さと、優美な振る舞い。
「アンタ・・・」
エレディタは呆気にとられ・・
「えーっと。アイリーン、です。」
腰を折り、丁寧な挨拶だが、誰かは分かってないようで・・
「私は・・」少年らしからぬ口調で
「暁の血盟と、絆を結び、共に戦っって参りました、シャーレアンの賢人の一人です。」
「な!」「・・・?」
「盟友、ミンフィリアと共に蛮神の討滅、3,いや4国と共に帝国とも立ち向かう、そのさなか。クーデターに見舞われました。」
「・・・話が見えへん・・。」「エリ、この子が・・?」
「はい。私がクリスタル・ブレイブという組織を立ち上げたのです。この件に際しては、申開きもありません。」
「で?クーデターは?どうなってん?」
「お恥ずかしい話ではありますが・・「起こされた当人」なのです。」
「は?」
「人選を見誤った、としか言いようがありません。組織として、人道として、差別のない、国家を越えての集まりである。そう思っていましたが、アラミゴ出身の男を隊長としていました。
が、彼はアラミゴ奪還とい名目を、ラウバーン局長に対する嫉妬と取り違え・・。ウルダハの政局にまつわる事件にまで発展しました。」
「まてや?おい?なんでうちらまで?」
「はい。ウルダハ国、女王ナナモ陛下の暗殺に冒険者が関わっていると。現に私も追われているところに、ラウバーン殿のご子息と、冒険者・・かの魔女のご息女に救われました。」
はぁ・・
「そして。クリスタル・ブレイブのリーダーとしての地位を追い落とされた、はまさにクーデターです。
そこに暁の血盟を、そして、冒険者の面々まで・・・巻き込んでしまった。そして、ナナモ陛下。」
・・・・・・・・・・・・・・
「ああ、なんやわかったわ。うちらで解決できる事やったら、なんでもするわ。それに。」
傍らで佇んでいる青年騎士。
「ああ。イイ。」
「リンちゃんはええのん?」
「へ?あたし?その・・・流れがよくつかめてないけど・・迷惑じゃなかったら。」
「ごめんやで。迷惑かけるわ。」ニっと笑顔。
「あっは、うん。」はにかむ。
「よし。それでは、他の冒険者達にも連絡を取って、今後の方針を決めよう。オルシュファン殿、エレディタ殿、アイリーン殿、これからもよろしく頼む。」
「ああ。アルフィノ殿。本家にも連絡をとっている。じきに動きがあるだろう。この「雪の家」ともオサラバして、館の方に移ってもらえるとイイ。」
「しょっちゅうお邪魔しますよ、オルシュファン殿。」
「うむ。共に鍛えようではないか!」
「いや、それはちょっと・・」
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某居酒屋。
「あーおっそーい!あーやーめー!?」
「いや?あの、ギン子?もう酔ってる?」
「あー、ごめんねー。あたしのムリが・・・」
「先輩はナニもわるくなーい。あやめのボンクラっぷりがわーるーいー!」
ショートボブの黒髪、両目元に涙ホクロの小柄な女子。
新橋菖蒲は、「残業」という名のフリータイムを所轄・・いやさ、営業所でこなしてきたばかりで。
その相棒、茶髪(地毛)サラサラストレートのロング、でもって長身モデル体型な彼女。なんでもロシア人とのハーフだそうで。羨ましいが・・・いろいろと。
瞳の色が灰色めいていて、「銀色?」となった事から、凛子>ギン子と、一番最初に命名した。
「あー。ゴメン凛子ちゃん。待たせちゃったわね。ココはオゴるよ!」
「先輩!大丈夫ですよ!」と、菖蒲。
「ほー。んじゃ、先輩が来るまでの分はアヤメもち。」
「え?いくら・・頼んだの・・・?」
「ウォッカ1本、トリカラ、エダマメ、ひややっこ、タコワサ、がんも、イタワサ、生キャベツ、串かつが、ウズラ、バラ、ししとう、たまねぎ・・・」
「マテ。」
「へ?」
「その、オーダーした内容は・・・いやいい。遅刻って、30分でしょ?ええと、うん。」腕時計を確認。
「なんでそんだけ?」
「えーと。オーダーはしたけど、まだ来てないのが。」
「そこぢゃねえ!」
掴みかからない勢いの菖蒲嬢。
(あー・・この子、ホント和食好きだねえ。見た目によらず。)
ちなみに、待ってる間の30分でウォッカは一本空いてましたとさ。
まゆりは、二次会っぽいビールで乾杯しつつ・・・
「さすがはロシア、ね。」