943セブンス。少女たちの日常的な・・・。(少し過去、 追憶 終わりの後におまけ。

がやがや

ざわつく酒場。その一席にて、エレゼンの女性が一人、香茶を飲んでいる。
カップから立ち上る香気は、リムサ・ロミンサのような花に例えられるようなものではなく、スパイスの効いたもの。そして、流し込まれたミルクとシュガーで一体感がある。
この茶葉は、それほど高いものではなく、むしろ安い茶葉で淹れたほうが味わいがあるのだ。

「あの子達、まだかな?」少し午後を越えた頃あい。
ヴァイオレットは青い髪をなびかせる。
本来は、黒髪だったのだが、主席を取ったお祝いに、と、元主席のミオが染めてくれたのだ。
「紫電」のヴィオと。

しかし、そのミオは・・・あの大戦で・・・自身は、子育てもあって、夫しか参戦していなかった。
無事帰ってきたアインは「ひどいものだったよ。・・・・ミオは・・・」と。

そこに。肩を叩かれ。

「よっ!ヴィオ先生!いや、元、かな?」?」愛嬌のある声が。
「ちょっ!」
ミコッテの双子。
うす茶色の髪と髪型が一緒だが、ホクロの位置でどちらかは分かる。
「サラ!ウラ!どうして?」
「同窓会じゃーん」ん」
彼女たちも攻撃隊として、かの大戦には参加していたのだが、あの逃げっぷりは初めて見た、と言わしめるくらいの逃げっぷりで、大戦を生き延びていた。

今は私塾を開いているという二人は、たまに飲み会で付き合ってもらう。
なにせ、問題児どころか、破天荒な二人の面倒をしばらく見ていたおかげで。
だが、二人に言わせれば「ヴィオも相当アブナイ系だったよー」」と言われてしまうので、いっそ、この「天才」と「秀才」に会わせてやろうと、呼んだのだった。

「貴女たちね、わたしの元生徒には、絶対ケンカ売ったらダメだからね?」
念押しする。
「そんなに?」「ヴィオでも勝てないんだ?」
「あいつらは、規格外。一人目は、魔女の孫娘。二人目は、それに続く技術と、さらに体術。二人揃えば、貴女たちでも勝てないわよ?」
「おもしろそー!」!」
「やめとけ。」
「えー?」。」
「アナスタシア、魔女の血統の秘技を見せてあげるわ。見れば納得よ。その代わり、彼女が術式を発動すればどうなっても知らないけど。」


「あ!ヴィオ先生!」
淡いグレイの髪の少女と、ペイルグリーンの髪の少女。
二人が駆け寄ってくる。
「や。」手を挙げて迎える。

「お?」?」
「あれ?先生?この方達は?」
「同級生よ。今はこの街で私塾を開いてるの。ただ・・個性的すぎて、儲からないみたいだけどね。」苦笑い。
「そんなこというなー」なー」と双子が揃って。
「マジックホリックには、おおウケらしいから、マニアック向けね。」クスクスと笑う。
あ、てことは。
「その。先生。」
「ヴィオ、でいいってば。」
「あの・・つかぬことを伺っていいでしょうか?」ウィステリアが真摯な顔で。
「どうしたの?」
「その、さっき、ターシャから聞いた話なんですけど、確か当時にはもうお一人、仲のいい同級生の方がおられたんですよね?」
「・・・・・まあね。」浮かない顔。
「あ、すみません。出過ぎた話を・・。」ウィステリアは、顔を俯け、謝罪の意を。

「や!」
そこに、少女の肩を叩く誰か。

「ミオ!」笑顔で親友を迎えるヴァイオレット。
「え?」
ニシシシと、親友がウィスをニヤケ顔で。
同じくヴィオも。
(なるほど。思考回路も似てる、ってことか・・・)ウィステリアは、てっきりダマされた、と思っていたが。

赤毛の彼女には、シャツの左袖の中身がない。
呆然として振り返り、さらに驚愕まで追加された彼女の表情を汲み取って。
「名誉の負傷、ってやつ。先の大戦で切り落とされちゃって。おかげで冒険者引退、子育てに専念してるのよ。」
「あ・・・すみません。」頭を下げる。
「いいのよ。命があっただけよかったんだし。」赤毛の女性。

そこに、金髪のエレゼンの男性。何度かあったことのある、ヴィオの夫。「あれ?」
さらに。黒髪の壮年のエレゼンの男性。物静かな感じ。「やあ。ターシャ。久しぶり。」
「アルフレートおじさま!」

なんだか、もうクエストなんかより、このまま宴会にでも行きそうな。

でも、それもいいかな。
この場の全員がおそらく、そう思っただろう。

ウィステリアは「じゃあ、いっちょ乾杯だー!」と、普段らしくない大声で。
「おう!相棒!」抱きつくアナスタシア。
「全く、この子達は・・」ヴィオが見守り、双子は早速注文をしている。ミオも呆れ顔でワインを注文し、アルフレートといくらかの問題を繰り広げている。


宴たけなわな頃あいで「じゃあ、・・アナスタシア、一発芸やりまーす!」
無音構成。
「な!」「あほか!」慌ててヴィオとウィスがターシャを押し倒す。
何事が起きたのか解らない他の面々だが、とんでもない構成が展開されたのだけは解った。
ただ、少し理解が追いつかないが。
「なんだ?あれ?」アインが呆然と。
「無音構成、よ。」ヴィオ。
「一瞬で理解するのは少し無理そうだな・・・」アルフレート
「この子は無茶苦茶すぎるわよ・・私がいないと、何しでかすか・・」ウィス
「そりゃ教師も大変だにゃ~」~」双子。
もちろん席から離れ、回避、いや、逃走体制に入っていた。

「ま、こういう生徒達だったのよ。」半ばあきらめ、半ば楽しかった、と表情でヴィオは。

そこでムクリと起き上がったアナスタシアは「もう一回。」
「やめとけ!」
フィンガーボウルで後頭部をド突き倒して、ウィステリアが吠えた。

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