942セブンス。少女たちの日常的な・・・。(少し過去、 追憶 終わり

「でね。傑作なのよ!」淡いグレイの髪の少女。
「ターシャ、貴女のその笑顔、時々すごくコワイんだけど。」ペイルグリーンの髪の相棒。
その綺麗な銀髪を薄い緑に染めた少女が、あえて聞く。
「で?」
「それがね・・・」


試験当日。
やはり講堂で向き合ったのは、薄い金髪の儚げなエレゼンの少年。
「どうも。よろしく。」と手を差し出してくる。
「どうも。」とこちらも手を握り返す。
(やりにくい。)
隣では、ウララがミオと対戦しているようだが、見た目ではどうにもミオが勝っているようだ。
ウララ達姉妹は、大技が大好きで時間がかかるのに対して、ミオは小技を断続的に連発する傾向にある。
必然的に、実際の発動が禁じられているのだから、この小技の連打というのは相手の術式に対して牽制としては十分以上の効果がある。
そして、自分も以前に対戦した際に、このラプターには、小技の連打でしてやられたのだ。
しかも、彼はその小技の間にも大技をランダムに組み込んで、こっちの防御を崩してかかる、そんな裏技まで持っている。
それも、こちらが大技じゃなく、小技を使おうとした瞬間に。
普通なら、それを相殺するための小技なのだけど、あくまで牽制に使おうとした合間に大技を仕込んでくる。完全に「読まれている」ということか。

そこで。

裏の裏、まさしく裏技を使うことにした。

「ねえ、アイン。わたしに負けたら、貴方、わたしの夫になりなさいよ。」

さすがにコレには愕然とした様子。
「行くわよ!」

突然の告白にうろたえながらも、彼女の術式に対応する構成を編み、なんとか凌ぐが、どうしてもいつもの冷静さが足りない。
(な、なんだって!?)
雷撃術式はもう見慣れたものだが、対応するのに普段以上に時間がかかり、焦り始める。
さらに、今までファミリーネームでしか呼んでこなかったのに。
ファーストネームで・・・
(うわあ!)
混乱は続く。

(よし!)少女は喝采をあげる。
どう見ても以前に対戦した時よりも、技量が下がっている。
事前に放った、あの一言。あれが「最初の爆弾」だ。
正直、彼が自分の事を意識している、とは分かっていたけれど、こっちから告白するなど思ってもいなかっただろう。
でもまあ、自分も気にはしていたから。ただ、年齢的に婚姻なんて考えてはいなかったけれど。

そして。
お互いの手札を出し切った、と思わせておいて、とっておきの「一撃」を。

彼は「第4位」にこだわるために、わたしにその座を譲らせない。
なら、わたしが次席のサララを落とせば、ウララに勝てばいいだけで。

させてもらいましょう。

雷撃術式、それも広範囲の人達から魔力を拝借する術式。
でも。
誰が「広範囲の人達」って決めたのかしらね?目の前の一人から全て拝借することだってできるんだから。

アイン・ラプターは、いきなり視界が真っ暗になる事に違和感を覚え、慌てて頭を振るが、逆に目眩がして、倒れ込んだ。

「救護班を!」教師が大声で。

「勝者・・、ヴァイオレット・シール。・・・ただ、君。あの術式は対戦相手を殺してしまうかもしれない。今後、控えなさい。」
「はーい。」

この後、その一戦を見ていたサララは、不戦敗を告げ、次席にはヴァイオレットが収まることに。


ミオと二人で看護室のラプターの見舞いに。
「ごめんね。とっておきの隠し玉でね。」ヴァイオレットはすまなさそうに、でも笑顔で。
「もう。大変だったんだから!」主席のミオは憤懣やるかたない。
ラプターは
「いや、すごいものが見れたよ。まさか範囲術式だったのを、一点凝縮なんてね。反則だよ。」
「だから切り札。でも、教師連中には、以後厳禁って言われちゃった。また新しいの考えなきゃね。」
「すごいな。君は。僕の妻になってくれるとしても、僕ももう少しがんばらないとね。」
「へ?え?ちょっと!ヴィオ?なに?それ!」
「え、あはは。」
「あ、ミオは知らないよね。ぼくに勝てば、結婚してあげるって、対戦前に言われたんだ。」
「な!?」
「ちょっと!それ、今言う?てか、わたしの事気にしてたでしょ!?」
「もちろん気にしてたよ。いいライバルができたってね。まさか告白されるとはおもってなかったけど。」
「うわああああああ!!!!このバカやろう!」
「はあ。お熱いことね。」溜息の主席。

この後3年で二人は結ばれる事に・・・


「てなワケ。」ターシャはニヤリと。
「あー、そんな出会い無かったわねー。」ウィステリアも溜息。
「ウィスは、お高くしすぎだったから。」
「ターシャは引く手数多だったのに、軒並み蹴っ飛ばしたでしょ?」
「つまんない男に興味ないしー。」
「よくいうわ。」
「お互い様でしょ?」「そうね。」笑い合う。

そろそろ待合場所に着きそうだ。

「あ、ヴィオ先生ー!」二人が駆け寄る。

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