「どうしようかな・・?」
桃色に染めた髪「ほんの冗談」を、元に戻し。
アゴに手を添え、思案に耽る召喚士。
ライトブラウンの髪が揺れ、尻尾も同じく揺れる。
ミコッテの青年は、少々、いや。かなり悩む。
リガルド・レオンハートは。
恋人であるエレゼンの女性。
その、天真爛漫な性格と行動に心奪われていた。
ミコッテという、「ネコ」と称される男性比率でいえば、マイノリティ(少数派)な種族は、異種族間では「子を授かることが非常に稀」を利用して、
奔放な生活を送る者が後を絶たない。
詰まるところ「信用できない男」として、まかり通っているのだ。
そんな境遇だろうが、あの娘を想う気持ちは本当であって、決して遊びではない。
それだけは、その。
本当にあの娘に理解というか・・解ってるのか?とむしろ問い詰めたい。小一時間ほど。
「ああ・・」
潮風が時に頬を癒すテラス。
レストラン「ビスマルク」で一人。
テーブルの上には、料理ではなく、一対のリング。
攻略や、冒険で、もしくはパールなどで指に嵌めるもの。
でも。
今は。今だけは。
このリングを渡すタイミング、それに、決めセリフを考えて。
「マリッジリング」結婚を決めた相手に誓いを込めて添える、大切なリング。
サイズは一緒に冒険をした時にそれとなく聞いておいた。
彼女はどう取るだろう?
やはり、ただの遊びではなく(もちろん、そんなことはない。寝台を共にしたことも無い。)
ちゃんと自身を受け入れてくれるだろうか?
普段、クールな彼だが今夜ばかりはホットになってしまった。
なぜなら。
「あ。おまたせー。」
明るい表情で彼女が向かいの席に座る。
エレゼンの女性で、華奢だが芯の通った。その外見を裏切るような、その強さは何度も見ている。
そして、惹かれてしまった。
「ミー、大丈夫。俺が早く来すぎたよ。」リングを目の届かない場所に。
こういう時、手の中の「写本(幾つもの英知を溜め込んだコピー)」は役に立たない。
いいところ、彼女の笑顔に、笑顔を返すのが自分にできるいっぱいいっぱいだ。
もちろん、そんな事はこの「写本」には書かれていない。
「ねえ、リーガルド?たしか今日ってお仕事無いんじゃなかったっけ?」
「リーでいいよ。」
明るい日差しの中ではオレンジ色に輝く髪も、夕焼けだと赤くなる。
(はは、さすがに「発火者」の娘だな)なんて。
そんな考えなんて気にもせず。 「あ、白ワインくださーい!」彼女の声が響く。
「で?なんなの?」
軽く乾杯した後、ミーランは。
グラスを前に、前菜をつまみつつ。
「ミー?知ってるかい?」おそらくは知っているハズの質問を。
「にゃにを?」ミコッテとしては、その訛り、というか、エレゼンの女性がコクり、とペティトマトのマリネを食べながら返されてしまう行為に(反則だろ)
「かの、ミコッテの女社長、いや、CEOと呼ぶべきかな。有名な「機工士シド」と組んでテーマパークを作るらしい。
そして・・・そのなんだ。被験者と呼んだ方がいいのかな?」
(何を回りくどい話を俺は・・・素直にその・・ああ。考えがまとまらない)
「げ?」彼女があからさまに悲壮感たっぷりに睨んでくる、彼女のスープは減っていく。
(ここは・・なにか・・いや、このタイミングでリングじゃない・・・)
リガルド笑顔だが・・期待タップリ(およそ)な彼女に
「観覧車?とでも呼ぶのかな?よくわからないんだが。」
空いた皿を手に取り。
「こう、回るんだって。そこに一席、まあ、いっても12くらいかな?どうなのかはわからないけど、個室みたいなところで景色を楽しむための施設らしいんだ。どうだい?」
限りなく微妙な数秒。
「ん・・・行く。」
赤髪のエレゼンの女性は軽やかに。