898セブンス。戦の始まり・・・潜入3

ばきん。
切断者(ダイセクター)が金属の塊を叩き斬る。
「楽勝じゃよ~」反り返った刃は刃こぼれ一つなく。
すっと鞘に戻される。
カボチャの被り物に、下着一枚のララフェル。
ここ、カストリウム・セントリの警備装置を壊して廻る、という任務を魔女から引受け、こなしている最中。すでに3つもの警備装置を破壊した。
残るマーキングは2つ。
「うむ。楽勝じゃよ~」マップを見ながら。
「!」無言で斬りかかってくる帝国兵。
振り返りもせず、ひょいっと避けて。
「もうちょっと修行がいりそうじゃの~」自身の身長の倍はあるかという兵士を鞘で殴り倒す。
「レティ達は大丈夫かのお?」


(さて。こっちはなんとか、ってところか。)
グレイの髪の女性は走ることなく、先ほど「剣王」が伸ばした帝国兵を置き去りに、とはいかず。
逆に利用する。
「失礼いたします!」敬礼。
「どうかしたか?」上官らしき兵士に声をかけ。
「騒乱に紛れて不審者が出たようです。負傷者が出ました。ただいま追跡中です。そして・・負傷者の搬送が必要です。許可を頂いてよろしいでしょうか?」
「いいだろう。許可する。貴官の所属と名は?」
「第二分隊、リカ上等兵であります。」
「わかった。負傷兵の運搬を任せる。それと、不審者の見た目はわかるか?」
「はい!カボチャの被り物を頭に。見た目ですぐにわかると思われます。体格はララフェルとおぼしき男です。」
「ほう。」
「ただ、すばしこくて、追うことができませんでした。」
「まあ、負傷者がいれば仕方あるまい。ご苦労。この先に医療室がある。合言葉は覚えているな?」
「はい・・ですが、時間ごとに変わるはずです。そろそろ変わるので新しいワードを教えていただけませんか?」上目遣いに、少し胸元も強調する。
「・・・いいだろう。「ラース」だ。」
「了解しました。それでは。」
「ああ。それと・・なかなか可愛いじゃないか。後で俺の所に報告に来い。」
「はっ!」(下衆め・・)

皆の元に戻り、殴り倒した兵士の口に布切れを突っ込んで喋れないようにし。
「このまま奥に向かう。いい?あたしの名前は今はリカ上等兵。合言葉はラース。上官の言葉には絶対に従う、という意思表示だけは忘れないで。Ok?」
「ああ。」「はい。」
(さすがだな・・)(ええ・・グリダニアのトップを張る諜報員の名は伊達じゃないですね。)
「じゃあ、行くわよ。とりあえずこの兵士を医務室に連れ込む。そこで情報収集するわ。」
「わかった。」「はい。」


「はい?」
ノックの後、医師が顔を出す。
「急患です!お願いですっ!彼を助けてくださいっ!」
グレイの髪の少女兵士が泣き叫ぶように医師にすがりつく。
「来月に式を挙げようとしてたのに・・・こんな・・こんな事って・・・」泣き崩れる。
「解った。お嬢さん。まずは彼を寝台に。」
(かかった)
全員が医務室に入り、兵士を寝台に。
助手の女性がいるが、一人だけ。意外と小さな医務室だが、数が多いのだろう、各部署にそれぞれありそうだ。
が、かえって好都合とも言える。
「その・・・」
グレイの髪の女性。
「ごめんなさいね。騙しちゃって。」腰にあった「山猫の爪」をはめて、医師の喉元に添える。
「な!?」
「この数日前に金髪のヒューランの女の子。看てない?」
「あ・・ミンフィリア・・」コーラルが・・
「ああ。左手に銃撃で・・手の平に大穴が開いた子が連れ込まれた。応急手当だけして、その後は分からない。できれば・・医師としては、早急になんとかしたい・・・」
「そう。ありがとう。」爪を腰に。

「どうするんだ?」エレゼンの術士。
「一刻も早くミンフィリアを助けなくては!」ミコッテの術士が涙を流し訴える。
「落ち着け。もう一度順番の確認だ。再認識、とも言うな。」魔女はあくまで冷静に。
「このやろう!!!」ミコッテの術士、コーラルはもう耐え切れない様子・・・
「野郎、とは女性が使うべき台詞じゃない。少し落ち着こう。コーラル君。」発火者がミコッテを押さえつける。「くぅ・・・」

「とりあえず、奥まで行く。ここからはあたしの予想だが・・皆の前で辱めを受けさせ、クチを割らせる・・・ないね。手にでっかい穴開けてまで黙り込んだ。
そんなのが、その程度の屈辱に落ちるわけない。むしろ、連れていった連中を嬲り殺し、かな。目の前で。となると。そこそこ広い場所が都合いいんじゃないかな?」
もう一枚のマップを広げる。
「ここ。」
「その・・・例の将軍とかは?」
「ああ。そうだな。そっちはどう読む?」

「簡単。「将軍しか知らない情報、故に希少価値がある。」なら、部下が勝手に尋問したらマズイじゃない?だから、先手を取るしかない。」

「君らしいな、レティ。」
「お供させてください。」

グレイの髪の女性はうなづき。
「じゃあ、行くわよ!」


「ワシも行くんじゃよ~」
カボチャ頭が降ってくる。

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ