883セブンス。ある日の休日。

「ねー、ショコラ。美味しい店どっカ見つけタ?」
長めの黒髪(最近少し切った)の人形のような容姿の女性。
「わっち情報ですかー?これでも情報屋ですからねー。お代はもらいますよー?」
「ほウ。」
「わ、ごめんなさい!」茶色いミコッテの女性は平謝り。
「お嬢様。謝る事はございません。」漆黒の肌に銀髪のエレゼンの給仕。

いつもの事、といえばいつもの事なのだが、この3人の女性は奇妙な共同生活をしている。

まず、最初のヒューランの黒髪の美女は、暗殺者(スタッバー)として、「家」に雇われている。
そして同時に二重スパイでもある。

ミコッテの女性は、元はリムサ・ロミンサの豪商の娘だったが、出奔してここグリダニアで情報屋をしている。
本来ならアチコチの宿を渡り歩いて過ごしているのだが、この「家」が気に入って、半分住み着いている。

銀髪のエレゼンの女性は、このミコッテの女性の実家に仕えていたのだが、ひょんな事からこの「家」に住む事に。

「そういえば最近、キーさん来ませんねえ。」ミコッテのショコラ。
「あン?どっかで野垂れ死んでルんじゃねエ?」黒髪のフネラーレ。
「そろそろ、路銀も乏しいですし、お仕事が欲しいところですね。」エレゼンの給仕、ベリキート。

「お前なァ。仕事っても、無イのが平和っちゃ、平和ダ。」
「仕事」とは「暗殺」なのだから。

「まあ、いいじゃない。美味しいご飯食べに行こうよ。」ショコラの提案に反対は無い。

夕暮れのグリダニア市街。
なんといっても目立つ面々なので、できるだけ真昼間は避けたいので、大抵外出するのは夕暮れ以降。
フネラーレは黒いチュニック、黒髪、そして白磁のような肌で人形のような容姿。
ショコラは茶色の髪、肌、碧眼。ある意味一番目立たないが・・・
ベリキート、ことベッキィは漆黒の肌に銀髪、さらにいつでも給仕服。

3人揃えば少しどころかかなり目立つ。
一人づつなら、さほどでもないのだが(ベッキィ以外は)


ちょっとした屋台で少し早めの夕食を。

「ねえ、フネラーレ。どーする?キーさん来ないと食いっぱぐれだよ?」
「お前こそどーなンだヨ?」
「わっちは、本業は情報屋だし。」
「ワタクシはクォ様からの仕送りがありますし。」
「ベッキィ、家賃くらい払えヨ!」
「そうですね。しかし、クォ様から頂いたお金を勝手にはできませんし。」
「メシ食ってルだろ!」
「そのくらいは許されるかと。」
「だったラ、僕のお気に入りの食器を割りまくっタ分くらい弁償シろ。」
「それと・・これとは・・・」明後日の方を向く給仕娘。
給仕のクセに、家事全般が壊滅的なベッキィ。元がストリートギャングだったわけで・・

「まあまあ。ここのサーモンは絶品なんだよ!」ショコラが取りなす。
「ふうン。」
「いただきます。」

「ウチのサーモンはなあ、ギルドに納品優先のヤツを、まあ・・な?」

確かに絶品のひと品。オーブンで紙にくるんで野菜と一緒に焼き上げた、など、屋台のひと品を超えてる。

帰り道にクリームまみれのパンまで買い込んで、ほおばりながら。
「おいしかっタ。ショコラ、たまにはやル。」
「わっちはいつも美味しいものを探してるんだよ!」
「お嬢様のご研鑽、感服いたしました。」

「ンじゃ、たまにハ僕もイイところ見せないとネ。こっち。おいデ。」
郊外を離れて森を少し過ぎ。
小高い丘で。
「わ。」ショコラが感嘆の声。
「こんな所、あるんですね。」ベッキィもただ見上げるだけ。
夕暮れもほとんど過ぎかけ、陽の沈む直前。
オレンジ色と、藍色の境界線。そして、藍色の中にいくつかの光点。
誰そ彼の時。
腰を下ろした黒髪の女性は、藍色に染まっていく空を指差して星座の説明を・・・

「以外ですね。アナタがそんな博識だったとは。」
「これでも船に乗っテたからネ。知らなきゃ死ヌ。」
「へー。」
(それと・・ベッキィ。ショコラをかくまエ。)
(!?・・・ああ・・)
(な、なに?)
(賊ダ。静かにシろ。・・・4人、ほどカ。気づかないフリでカタつけル。)報酬は無いが仕方ない。

振り向きざまに棺桶製造者をつがえ、まずは一矢。賊の胸に。そして眉間に。
「僕達相手、は、分が悪かっタ!」

「やっちまえ!所詮女共だ!組み敷けばこっちのもんだ!」賊の頭が叫ぶ。

「ナメんじゃねえっ!このクソ!」スパルタンセスタスをはめ込んだ給仕娘が殴り込んでいく。
「テメエこそ!」賊の剣がベッキィの背中を切り裂く。が。
ギャリン。
給仕服の下、鎖帷子。
「お・・・お嬢様に仕立てて頂いた服を・・・このクソムシがああああああっ!」
問答無用で殴り倒す。
「おイ!ベッキィ!オーバーキルはヤメとケ!ソイツ、もう死んでル。」
「弓使いとはな!この近距離だとどうかな?」剣を振るう賊に。
「あン?誰の事かナ?」ダガーで受けて、するりと避けると首筋に一閃。
「ダサイヤツだな。遠距離一択のスタッバーなんかいるかヨ。」

「お・・お前ら・・・」賊の頭領らしき男。
「襲う相手間違えましたねー。」にこやかな茶色いミコッテ。
「弓で射殺されルか。」
「撲殺されるか。」
「「選んでもらいますかカ。」」
「ひ、ひい!!」逃げ出す。
「仕方ねえナ。ベッキィ。譲るゼ。」
「弾代、請求しますよ?」
ジャキ。

ずばん。

散弾で頭を吹っ飛ばされた賊。

「グッロー!」ショコラは・・
「せっかくの景色が台無しダ。」
「まあ、家に戻りましょう。」
「だよね。」

なんだかんだで厄介事には困らない彼女達。

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