宴もたけなわとなり。
そこかしこでは、杯を満たすワインが注がれている。
「おい!そこのララフェル!酒や、酒!酒もってこい!」
ブロンドの少女?はいつもとは違うローブ、見るものが見ればかなりの腕前でなければ扱いこなすことは無理であろう、という。
それでいてデザインも優れているため、フォーマルでも十分通用する逸品。ただし、本人の態度とは無関係、とだけ付け加えておかなければなるまい。
「なんやこれ?コリコリしてる・・」ハイランダーの斧使い、ユーリ。「でもまあ、悪くあらへんけど。」
「お前、あのミミズやんけ。」姉のユーニがワインを煽る。
「ひえええっ!」思わず皿を放り投げるが「もったいないな、3大珍味だぜ?」と、ルガディンが受け取る。
「そういえば。」赤い髪のエレゼンの女性。「以前の討伐はどういう感じだったんですか?」
「せやな。」相棒の黒髪の女性も参加する。ただ、口にはバカデカイオムレツが入ったままだが。
「それは、非常に気になる案件だ。セネリオ?」「はひ、しゃひょう?」チーズをたっぷり塗ったパンをほおばっている腹心。
「・・せ・・せんちゃん?」「いはいと、んぐ。こへ。いへまふ。」パンを手に取るのが止まらない筆頭秘書。ぐび、っとワインも。
「案外、というか、そういうものかもなあ・・」召喚士の青年は、かつての五傑に囲まれながら。
恋人である剣聖は、節度というか・・雰囲気に飲まれていないようだが、単に垢抜けていないだけとも取れる。まあ、それはそれでいいとしよう。
「で、結局のところ、どうだったんですか?」この辺は策士である自分の役目として。リガルドが。
「ああ。作戦自体は二手に分かれて、タイタンとリヴァイアサンの討伐に。正直、戦力的にかなりの不安があった。実際、かなりの損耗を強いられたからな。」
ヴェイスケートはうつむく。
「まだ、リヴァイアサンの方は、クリスタル自体が少なかったんだろう。
大した損耗もなく、ヌンと、シャマニをあてただけで何とかなった。が、シャマニは目を、光を失った。これには、な。」
「そうですか。」
「ああ。ただ、流れの傭兵とか言ってた女性がいてな。人手の足らない状況でこれはありがたいと。
たしか、ヒューランの女性で、子供かと思うぐらいの華奢な子でな。グレイの髪を後ろでくくっていた、か。」
「・・。」
「人手がないから仕方なく後衛の配置を頼んだのだが、それより前に作戦立案まで提案してきてな。
本人も前衛で見事な腕前を披露した挙句、タイタン戦だけじゃなく、同時期のリヴァイアサンの作戦までをも的確に指示しながら、勝利に導いた。
シャマニの負傷にもとても心を痛めていたようだが・・気がつけば、彼女は忽然と姿を消していてな。未だに名前すらわからない。
部下が言うには、「あれは魔女です!」とかいうのだが・・彼女を中傷するような、あだ名を付けるな。と言ってはいたのだ。
今回もまた、彼女のような人材が揃っていればいいのだが。」
熟考するリガルド。
「ヴェイスケート殿。その女性は、間違いなく「魔女」ですよ。」
「なんと!?」
「グレイの髪を後ろでまとめた小柄な女性でしょう?」
「ああ。」
「そして、武器は長い爪。常に相手の裏をかく作戦を立て、格闘術でかかってくると思わせて、術式を組み立てて不意をつく。そして・・・情に厚い。ちがいますか?」
「・・・ああ。確かに。しかし、魔女、といえば、かの悪名高い「天魔の魔女」だ。あんな華奢な小娘が・・・」
「噂には尾ヒレがつきものですよ。そこにもっとヒレがついて、勝手に泳ぎだすものです。一度だけ、ご一緒しましたよ。
とても素敵な方でしたね。「もうすぐ孫が生まれるの!」って。貴女、歳いくつですか?って。その時には魔女っておもいましたね。」にこやかに。
「なるほど。今度是非ともお話を改めてお伺いしたいな!」
「ああ、料理の方は全くダメでしたけど。」
「・・・また食材集めか・・」
「さすがにそれは。でもまあ、一人で全部持ってきそうですけどね。」
「なるほど。いい話が聞けた。また詳細は明日にでもするとしよう。情報では、すでにオ・ゴモロの蛮風エーテリアルの活動が盛んになっているらしい。
もしかすれば、すでにタイタンが顕現しているかもしれん。」
「酒盛りしている場合ではないのでは?」
「リガルド、といったか。もう俺達は出遅れてしまったらしい。で、あれば。英気を養って万全を尽くす方がいいだろう?」
「・・・ですね。乾杯!」