868セブンス。進撃は止まらない。

「あ。危なかった・・・。」
ミコッテの青年、リガルドはもう少しで・・・
(思い出すのは・・・)
もう少しで。
甘美な誘惑の囚人、あるいは咎人となるところだった。

寝台に横たわる恋人。その姿は言葉で言い尽くすには難しすぎる。ただ、恋人。いや、愛しい人。
「・・・らしくないな。」
この誘惑を振り切れたのは、ひとえに熱い雫、としか言い様がない。
たらり。
鼻から出てきてしまったこの一滴が我に帰らせた、と言っても過言ではない。
とりあえず、自分を納得させるためにも。
夜風に当たるほうがいいだろう。それに・・・「男の魅せどころや。」「頑張ってください!」
などと隣の部屋で聞き耳立てている二人を喜ばせるつもりもなく。
その辺を散策していると。
時間が時間ゆえか、控えめな音量ながらも優雅な、そして扇情的な音楽が聞こえてくる。
チラリと目をやる。
ミコッテの女性が肌もあらわな衣装で篝火の下で情熱的に踊っている。
(なんだ、あれ・・)つい先ほど、恋人の・・・いや、何も言うまい。
無視を決め込んで前を通り過ぎる。
そこに。
「お!ミコッテの君!」口ひげを蓄えたララフェルの男性が葦だろうか?寝台のようなベンチのような所から声を。
その言葉に反応した一人の女性のミコッテが踊るのをやめ、ララフェルに擦り寄る。
「お前の踊りは好きだが、今呼んだのはお前じゃない。」この言葉に、失望か期待か。もう一度踊り始め、残りの二人が薄笑いを。
「お前、新入りか。だったらコレを片付けろ。」紙切れを投げる。
リガルドがその紙片を拾い上げると、さっと読み・・・
「悪いが、俺はあなたの小間使いじゃない。それに、ここの踊り子をどうこうする気もない。決めた人が居るからな。」
「なんじゃ!ワシに逆らう?ココを何処と思っておるっ!」激昂するララフェルに対し。リガルドは。「ただのリゾートだろ。」
顔をボムさながらにしたララフェルが「おい!誰ぞ!ヴェイスケートを呼べ!不埒者だっ!
このゲゲルジュ様を上から見やがるクソがいるッ!踏捕まえて、魚のエサにしろッ!!」
「つまらん茶番だが、いい情報が聞けた。たまには夜風にあたるのも悪くない。」
踊り子達は突然の出来事に身を寄せ合い引き込もってしまった。

「315の貢、タイタン・エギを此処に召喚す。」一冊の本を片手に。召喚士は。
「なあ!」ララフェルは驚愕の表情で・・
ぱたん。本をたたみ、黄色い光に覆われた召喚獣を見る。
「コイツに纏わる話を是非ともそのルガディン殿からお伺いしたい、と。さすがに早い。」
後ろのルガディンを見返り。
「こやつを連れて行けばいいのかな?」片目の偉丈夫。
「そうじゃ!さっさとしろ!」
「あい、了解。」
ぐいっと腕を後ろに。敢えて本を持つ手ではなく。「来い。」

連れて行かれたのは酒場。「あれ?俺、捕縛じゃ?」「いいから座れ。」
「お前もアレか。噂の。」「噂の?」
「ああ。オレの所にな。二組の冒険者共が来てな。言うのがこぞって「タイタン討伐に!」だ。意味がわからん。なので独自に調べてみたら、だ。」
「興味深いですね。もしかして、その二組。ハイランダー二人、ミコッテ二人。共に女性。違いますか?」
ほおう。隻眼のルガディンは「エールを2杯だ!」と注文しつつ。「できるじゃないか?」
「まあ、事前情報ですしね。そしてもう一つ。黒髪の女性、も来てませんか?」
「・・・合格だ。エレンとか名乗ったか。どうせ偽名だろう。つまらん茶番をさせたのは詫びよう。オレはもう旅団を引退した、というか辞めたかった。
タイタン戦だけじゃあない。リヴァイアサン討伐も同時期に請け負ったのだ。損害は・・・酷いものだった。」沈痛な顔で「なので敢えて無理難題を吹っかけた。
あたら若い命を棒に振るなど・・オレには。だが。希望の光も確かに感じた。次代を次ぐのはこういう光なのだと。」
「ヴェイスケートさん。」
「お前の拘留の代わりに、この課題を出す。世界3大珍味を探せ。すでに先の二組には伝えた。残りはトランキルの亀。ソイツの卵だ。
ま、二組は女二人だったからな。お前のptは4人だろ。ワインもちゃんとしたのをもってこい。バッカスの酒だ。いいな?」
「任されました。では。」「ああ。乾杯。」カン。器を鳴らす。

ほどほどに酔い・・・「あの二人は寝不足だろうな・・・ミーは・・どこまで期待してたのかな・・」

部屋に戻り、添い寝くらいは、と思っていたのだが・・・
ちょっとした。いや、もう少しレベルを上方修正して。さらに予想の斜め上な現状に。
「ベンチで寝よう・・・・」部屋を後にする・・・

あの惨状に「俺が抱きしめながら寝ないとダメかも・・」少し弱音が・・・

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