863セブンス。進撃の予兆。

潮騒が聞こえる中、冒険者向けの宿ミズンマストの窓からは朝日が差込み。
「う・・ううん。」
枕から溢れる髪は、陽の光が当たったところだけがオレンジ色に見える。

「っく・・・・」となりの寝台で寝ていた黒髪の女性は、その光景を見ていつもながらすごいなあ、なんて。
つい、笑いをこらえるのが難しくなって、口元を枕で抑えて爆笑する。
相棒のエレゼンの女性は確かに枕に頭を埋めている。まあ、もっと言えば横向きに。
床の上で。下半身だけが寝台に乗っている。でろん、と上半身が枕ごと床に。
丁度背を仰け反らせて、柔軟運動でもしてるみたいだ。さらに横向けの顔は口が半開きで、ヨダレまで・・・
この姿をかの恋人のミコッテが見れば何と言うだろう?まあ、黙っておいてあげるが。
「ミー!起きなっ!」エレディタは耳元で大声で。
「ふみゃっ!」まさしく驚きで目がバチッと開いて、ビクッと体が跳ねたかと思うと両脚が寝台から落ちてくる。

びたんっ!

「い、いったーい!」涙目で相棒を見る。「な、なによー、エリ・・」
「まーったく、なんちゅーカッコで寝とんねん。(よう寝れるわ、ホンマに。)」
「え?おかしかった?」キョトンとした顔で見返してくる「剣聖」
「目が覚めたら、床やった、って普通オカシイやろ?」
「そういえば・・・。そうよね。」細いおとがいに指をあてながら。
「まあ、ええさかい。はよ服着て顔洗いや。先顔洗いに行っとくから。」
「ああ、うん。」がさごそ・・荷物から普段着を探し出す。
先に衣服を身につけたエレディタは洗面台に向かう。
(・・・リガルドさんにちょっと聞いてみようかしら・・・わたし、寝相が悪いって言われるんだけどって・・・)

階下の酒場、溺れた海豚亭にて朝食を。さすがに朝食からラムだのワインはナシなので、パン、チーズ、サラダ、オレンジジュースというメニューで。
「ねえ、エリ。寝相のコト、リガルドさんに言ったらなんて言うかな?」
「ミー。自殺する気か?」
「なにそれ!」
「せっかくイイ男捕まえたんや。自分から放らんでもええやろ。」
「えー?そんなぁ・・・」
「ええから、黙って・・・あ。」ポケットをまさぐる。
「どうしたの?エリ。」
「パールからの信号や。って、ミーかて持ってるやろ?」
「あ、部屋に置いてきた。」
「緊張感、カケラもあらへんな。」
「まあ・・それは置いといて。なんて?」
「暁の血盟から。ミンフィリアさん・・・・・はあ。わかりました。できるだけ急ぎます。はい。」
「なんて?」
「ベスパーベイの「砂の家」に来てくれって。で、うちらリムサに居る言うたら、黒渦団からの依頼らしく、話が聞けそうなら情報を持ってきてくれだってさ。」
「ふうん。じゃあ、ご飯食べたらちょっとそのへんの黄色に聞いてみよう。」
「せやな。」


「んー、みんなあんまり知らないみたいね。黙ってる、というより寝耳に水って感じだったもんね。」「せやなあ。箝口令でも敷いてるのかもしれへん。」
「と、いうことは砂の家か。」「やな。」「あ、リガルドさんに挨拶しなきゃ!」「パールでええやんけ。」「え、でも・・」「ほんなら聞くけど、家知っとるん?」
「あ。」「ほらな。」「うう。」「ほな、行くで。」
移動術式。
黒髪の女性が淡い光に包まれて、少し遅れてエレゼンの女性も。
次の瞬間、転移する・・・・

「エリ、どこに跳んだの?」周りを見渡す剣聖。
「ホライズン。一番近いんちゃうか?」エレディタはチョコボ屋目指して歩き出す。
その時「あ!」ミーランの声に「どないしたんや?」エリが怪訝そうに。
「リガルドさん!はい!元気です!今、お仕事でザナラーンまできてるんです!次、いつくらいに、ですか?お仕事次第ですけど、終わればすぐに!・・・・・」
(パールなんやし、いちいち声出すなや・・・・)
チョコボを2頭借り出し、ベスパーベイへ。

そして、海際にある家に足を運び、中に居たララフェルのタタル女史に挨拶を。
「おー、お待ちしてましたですよー、剣聖、拳聖。どうぞ、ミンフィリアさんがお待ちですぅ。」
階段を降り、ドアを。ノックをし「どうぞ」の声にドアを開ける。
「お久しぶりです、おふた方。変わりはありませんか?」他にはシャーレアンの賢者たる、5名がいるだけだ。
「ええ。元気です。」「なんやったんや?要件も言わんと呼び出して。」
「実は。今朝早くに黒渦団のメルウィヴ提督から直々に連絡がありまして。驚かないでくださいね。
蛮族コボルド達の崇拝する神、タイタンが再降臨されようとしているらしいのです。」
「へ・・・・?」「なっ!」
「ああ、エレディタさんはご存知でしたか?」
「名前だけはな。昔、ガキのころに海雄旅団ていう傭兵集団で退治したって、一時有名やったしな。」「へー、エリそんなの知ってるんだ?」
「ミーがグリダニアでママゴトしとる間にもうちらは生きるために必死やったからな。どんな些細な情報でも知らんかったらあかんかったんや。」
「ぐ・・・ママゴト・・・」
「そんで?」
「はい。話が早くて助かります。ヤ・シュトラ。」
「はい。このコボルドという蛮族は閉鎖的で対話によって、なんとかするのは無理かと。シルフ達のようには行かないでしょう。
なので、こちらから先手を打って、神降ろしの前に社を急襲し、儀式術式自体を止めてしまおうというコトです。」
「そういうことなのです。そして我ら暁の血盟は、蛮神問題をメインに活動していますゆえ、黒渦団から協力要請が来たということです。
ただ、万が一タイタンと一戦する事になれば、と思うとやはり手練の冒険者の方々の協力が必要であると。
その点、おふた方は高名ですし、申し分ないかと思い、お呼び立てした次第なのです。
もちろん、出来るだけのバックアップもしますし、ウルダハ、グリダニアにも増援要請はしてあります。
ただ、命の危険は伴います。ですので、強要はしません。いかがでしょうか?」
「ミー?」「エリ。」二人して頷く。
「「やったろう りましょう!」」
「ありがとうございます。あ、また御ひとかた来られたみたい。どうぞ!」
「お邪魔しますよ。」
「え!?リ、リガルドさん!」ミーランが凍りついた。

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