「まったく、くだらないわ。」
少女は、駆け出しながら。
前を走る3人についていく。
(海賊共の理由に蛮族共の理由の合致、ね。それを幾度も繰り返すなんて。)
エレゼンの少女呪術士、ヴァイオレットは毒つく。こういう輩がもう出なければいいのに。
つまるところ、ここの海賊や蛮族はさらに大きな組織の手足、か。
「きゃっ!」
ぬめった床?に足元を取られる。
考え事をしていたせいか。
ヴァイオレットは海水の水たまりにすっ転び、ローブがびしょ濡れに。
「おう~?」「あ、パンツ見えてるよ。」「うわ、ローブの裾!裾!!」
「ひゃあっ!」
顔が真っ赤になってるのがわかりながら、ローブの裾を抑え、そうすれば立ち上がれないのに気がつき、「見、みないで!」と叫びながら・・・・
ハプニングもありつつ。
「この先ですね。エレンさん、防御術式。お願いします。」びしょぬれの少女。
「大丈夫?パンツ、ピンクなんだね。ぼくの髪と同じだね!」
「黙って言う事聞けっ!」
先ほど、広場にて「船長(どこのだかわからない)」を撃退したあと。
今度は広間。
この先にいつものごとく、洞窟の主として居座っている蛮族を倒さなければ。
ヴァイオレットは、なぜ丈の短いローブを選んだのか。
まさか、あんな事態になるなんて。
びしょ濡れのローブは、帰ったらクリーニングせねばなるまい。
業者に頼めばお金もかかる・・・
ブーツも革だし・・・「うー。」
装備のリカバーだけでも、今回の報酬の半分くらいは持っていかれるかもしれない。
気が滅入る・・・
「それでは。行くんじゃよ~。」のんきな掛け声とは全く逆。
カボチャ頭に、下着のみ、なんて格好だが、動きが。
どうやれば、あんな被りものをつけて、敵の動きが分かるというのか。
視界はほぼ、無いに等しいはず。
声もないヴァイオレット。
「ヴァイオレットさん!」鬼哭隊の青年が床にある網のような床を。
そうだった。この床から増援が来る。注意して網を突き破って出てくる魔物を出さないよう、常に意識しなければ。
「ぼくは~」もう少し出番が先というか。
「ワシが牽制しとるからじゃの~」剣王は盾も持たずに剣筋だけでサハギンの手刀をしのいでいる。
(私もしなければ!)網に注意しつつ、構成を。
「出よ!雷!」単純な構成だが、あまり頑張りすぎればこっちに注意を引きつけてしまう。
「ぎしゃあ。」蛮族のリーダーが叫ぶ。
網目から泡が立ち上り・・・
(マズイ!増援!)慌てて床を踏み、術式を叩き込む。「出よ!紫電の奔流!」全力攻撃。
あちらでは、槍を網目の中に突き入れ、撃退している。
以前の経験で、海水は雷属性がいい、と。
ヴァイオレットはもう一度「出よ!雷!」と蛮族のリーダーに牽制を。
「コノ・・・鯱牙ノ・・デェン・・ヲ。ヨクモ!」水流を弾丸にして白魔道士に狙い撃つ。
「おっと。危ないなあ。あたったらどうしてくれるんだい?」エレンが笑いながら。
パチン。と指を鳴らす。
ゴツ。
一瞬で展開した構成がサハギンのリーダーを穿つ。
岩の塊に近いそれは、デェンの腹部にめり込み。
「ワシの出番じゃな。」
ブレイズエッジがララフェルとは思えない速度で。
跳躍してからの一撃。
左肩から脇まで切り抜く。
そして、突きを5連続。
「岩をも切り裂く絶技」とはコロセウムで見せられた、という噂も。
「終わり、じゃのう~」とのどかな台詞。
「さっすがー!」ピンクの髪のミコッテの青年。
「意外とすんなり行けましたね。」鬼哭隊の青年。
「・・・・・・」言葉が出てこない少女。
「ところで、君。もしかしてマルスさんの?」ネルケが。
「あ。そうだよ。お姉、なんかした?」
(いや、君が・・・)とは、言えず。「ああ、そうか、よろしく伝えておいて。」としか。
「じゃ、その。お疲れ様でした。至らない私でしたが、本日はどうも!」頭を下げるヴァイオレット。
「ワシは畑に戻るんじゃよ~」
それでは、解散。各自が簡易移動術式の結界に触れていく。
学院の女子寮にて。
「ふう。いろんな意味で疲れた・・・・」寝台で横になり。
「どうかしたの?ヴィオ?」相方のミコッテの少女、サララ・サークルが聞いてくる。
「え?なになに?」サララの双子、ウララ・ドット。
「なんてことないわ・・・。」ヴァイオレットは、事も無げ。
「うっそー!ローブびしょ濡れだったじゃん!」サラが。
「だよねー。どんなプレイ?」ウラ。
「はいはい、そこまで。」4人部屋の室長、ヒューランのミオ・メーアエンゲが部屋にもどって。
グリダニアからの留学生だが、「教室」では委員長として。成績でこそヴァイオレットの次席だが、仕切る事には長けている。
長い少しクセのある赤毛をひとまとめにし、そばかすの浮いた彼女。
双子が「委員長、面白い話ききたくなーい?」「なーい?」
「ほじくり返すのが面白ければね。」にべもない。
「ピンクのパンツ、見られて硬直したって、さっき白状したよー」「よー。」
「ぐっわああ!いうかそれいうか!」ヴィオが起き上がり。
「はぁ・・。」ミオは目頭を抑えて・・・「男子にその話したら、わたし、キレるから。ね?」
「はあい。」「い。」
女子寮での夜が更けていく・・・・