よーし、ぼちぼちか。
「いくよっ!」
「はあ~い。」「うん。」
妹と弟が他のクルーに指示を出し始める。
「錨あげて~。」「帆をはるよー。」
「レイ!進路は東方だけど・・・まあいっか。」
「どうかしたの?お姉ちゃん。」
「いや、ちょっと思うところあってな。」
暁一家の船出。
レオは、少し感慨深い・・・・(マルス・・)
実は、思うところあってエオルゼアからの船旅もこれで終わりにしようかと。
理由は・・・特にあるというか。
まあ、敢えて言えば他に楽しい事を見つけてしまったから。
東方との貿易をいくつかこなし、外の世界が楽しく見えてきた、というべきか。
どうにも、コロセウムあたりから、少しヒネたところが出てきたのかもしれない、と自己分析を。
武装商船エーアガイツ号が波間に舵を取り、動き出す。
「よし!行くよ!みんな!」
「はいっ!」「うん!」
暁レオは海風を頬に受けながら。
(ま、航路自体はいつもどおり、だしね)
実際に東方貿易を成功させている商船など数隻しかない中、かなりの利益を上げているのは他ならぬ自分たちで、自負もある。
ただ、東方にも海賊の類はいるわけでそういう点でも・・・・
「姉ちゃん!」ルイ。末っ子のミコッテだが、危険に敏い。
「あ、またか。レイは?」
「レイ姉ちゃんは今、機関室に。」
「あいつも大分わかってきたな。」
「どうしよう?」
「そりゃ、あれだ。海賊だろ?」
「うん、たぶん。こっちに手旗も無しに近づいてくる。」
「じゃあ、遠慮はいらないな。ぶっぱなせ。」
「らじゃー!」
「ルイったら、どこ行ったのかな?」機関室にて。
「お嬢!どうするんで?」室長の通称「おやっさん」ことボステソ。
「うん、火を入れて。多分、使うかも。」
「わかった。」
武装商船、エーアガイツ号の裏ワザと言ってもいいこの装備。
魔導器炉を積んであり、帆だけではなくこれで水中翼を稼働させて速度を上増すことができる。さらに。
主砲。
普通の大砲とは違い、魔力を打ち込む。火炎系術式を遠距離攻撃に使う、その魔力を供給できるシステム。
「レイ姉ちゃん!主砲使うんだって!」弟が伝声管から。
「OK!おやっさん、いくよ!」「ああ。」
主砲を使うと移動力を引き換えにするため、加速はできない。しかも、反動も半端ないためその衝撃でかなり揺れる。
ボステソは各スタッフに声をかけ、伝声管で「おい!ぶっぱなすぞっ!」
レイも近くの手すりを握り締める。
次の瞬間。
ドンっ!
衝撃。
「うわ。」いつものことながら、スリリング極まる武器だ。
「お姉ちゃんも遠慮ないなあ。」次撃を撃つには少しの充填が必要だ。その間にブリッジに。
「ルイ。あっち沈んだか?」
「んー、今のじゃまだ、じゃないかなあ?」耳が少し動く。
「ふうん、まあ、この距離だしなあ。万が一、普通の商船だったらこっちが海賊扱いだしなあ。」
「大丈夫だって。ボクの勘を信じて。」
「ああ、そうだな。」レオは頷き。
「よし、第二射、用意。」
「アイ、サー!」
「っ撃っ!」
ドン!!!
「敵船、撃沈を確認!」「よし!機関室に連絡!推進に全力を使え!この先の海流突破だ!」
「アイ!マム!」
「ふう。ルイ、レイと一緒に休憩してこい。この先少し揺れるからな。」
「はあい。じゃあいってきまーす。」
「さてと。私も少し休むか。」
「どうぞ。船長。」副官が声をかける。「何かあれば、常のとおりだ。」「アイ、マム。」
自室にて・・・
「マルス、いいか?」
(どうした?)
「いや、多分これが最後の伝心になる。」
(なんだと!?)
「私は新天地に行く。エオルゼアに飽きた、のかな。」
(!?)
「まあ、そういう事だ。最後に話ができてよかったよ、親友。」
(待て!どういうつもりだ?お前!)
「そういうこと、だよ。じゃあね。」
(待・・)ぶつ。伝心が切れる・・・・
「さて、新天地、か。いい響きだ。何が待っているのかな。」
ミコッテの船長は、棚からグラスとラムを取り出し。
「乾杯、我が友よ。」
祝杯を。
リアフレのレオ(暁)さんが引退するという事なので、旅立ちをテーマに書いてもらいました。(管理人