森の都グリダニア。
精霊達にまつわる知識と技術を教える学び舎。
硯老樹瞑想窟。
霊災の被害もさることながら、この街の復興に尽力した組織でもある。
そして、その復興に精霊達の加護が大きく影響していたと。
そんな中。
桃色の髪のミコッテの青年は、白いローブに身を包み。
ルガディンの師から訓示を授かっていた。
「汝、エレン・ローウェル、汝の受け継いだ志は、精霊達の御霊に沿い・・・・・」
長い訓示にアクビを噛み殺しながら、青年は聞いた振りをするのに精一杯で、労力の全てを費やすのではないか?と。
表面上は真摯な面持ちで聞いているが、内容はサッパリだ。
とにかくこの口上が終われば「仰せのとおりに誓います。」と言えばいいだけ。簡単だが、眠い。
そんなことよりも、あの女の子。
ラヤ・オ・センナと言ったか。
あのかわいい女の子と遊びに行きたいなあ・・・なんて。
白魔術を収めた、と言っていたが・・。自分よりもかなり若い、いや幼いように見えたが。
角尊とかいう希な種族ゆえ、見た目と年齢は違うのだろう。
現に、国家のトップといってもいいカヌ・エ・センナだって、年齢がわからないとも聞くし。
幻術のトップであるエ・スミ・ヤンだって、見た目は少年だ。
(とりあえずは姉ちゃんとこに顔だせばいいか・・。)なんて思っていたところに、「汝、誓を果たすか?」と言われ。
「仰せのとおりに誓います。」
と答え、頭を垂れる。ついでに溜まっていたあくびも。
「よろしい、汝、エレン・ローウェル。白魔道士としてさらなる研鑽を積むべし。」
「はい。レーゲン導師。」
やっと終わった。面倒なんだよねー、いちいち。
退出する時にあくびをしたのがバレていないか少しは気になったけど。
「ま、いいや。」
とりあえず白魔道士として一人前に認められたのだ。これで姉からも少しは認めてもらえるだろう。
「レイちゃんところ、か・・。」
グリダニアにある、姉の会社の一つ「アリティア・サービス」へ足を向ける。
尻尾を振りながらのんきに・・・は行かない、あたりが彼ならではでもある。
通りすがりの町娘や冒険者の女の子に声を・・・
「ね?今ヒマ?カフェでお茶とかどう?」
「僕、白魔道士してるんだ。お誘いってないかな?」
「君、かわいいね。どう?これから。」
彼自身は全くの悪意もなく。ただ単に可愛い女の子が気になって声をかけているだけなのだが・・。
「何をしているっ!」
すぱこんっ、と後頭部を叩かれる。
「え?」
振り向けば、姉が。
「あれ?お姉ちゃん?」
黒髪の女社長は、手に分厚い本?を持ち、その背表紙で弟の後頭部を・・
「全く。遅いと思って来てみれば。手当たり次第に女を口説く若者が居るとか聞いてだな。」
「えー?」
「お前だと思ったよ。いいから早く来い。」
耳をつまみ、引きずるように連れて行く。
「痛い、痛いってば!」
「面構えがマシになったと思ったが、中身はまだまだ変わらんようだ。」
「えー!?」
「いいから来い。そして、お前。マッチング登録をしろ。」
「へ?なにそれ?」
「冒険者同士、相性のいい相手を見つけてパーティが組めるシステムだ。リンクシェルが無い相手でも、専用の腕輪さえつけていれば問題なく組める。
そして仕事が済めば自動的に解散される。」
「へー?」
「今、実験的にマッチングをしている最中らしい。そのレポートを取ってこい。」
「え?お姉ちゃんが行けば?」
「私は忙しい。ヒマなヤツを探す手間を省くためにも、お前が適任だ。」
「そんなあ。」
「いいから行け。今、レイに連絡をしてマッチングの腕輪を用意させている。」
「えー、レイちゃんとお茶飲みに行こうと思ってたんだけど・・・。」
「アレはアレで忙しい。茶飲みくらいなら一人で行け。」
「ぶー・・・。」
会社のオフィスに着き、腕輪を渡され待合室で。
「あーああ。こんな事ならもうちょっと遊びたかったなあ・・・」青年は尻尾を揺らしながらマッチングされるのを待つ。
「レイ。」
「はい、社長。」
「あのマッチングだがな。何処に行くのかは不明、だったな?」
「みたいですねえ。」
「まあ、アイツの事だ。何とでもするであろう。」
「そうですね。意外と彼、頼りになりますし。」
「そういう過大な評価がアイツをダメにしていると思うが。」
「そうですか?社長。社長の評価は私達以上に高いと思いますけど。身内だから、じゃなく。」
「・・・・そうかもな。」
「お?」
腕輪が光りだす・・・・・
「マッチングだっけ・・?」
光に包まれ・・・・・