793セブンス。嵐の最中。

がうん・・・!

「な、なんや?」
ブロンドの髪を持つ少女は思わず尻餅をついてしまった。
原因の一つとしては、身長が低いために履いている厚底のブーツ。そして。
昏い世界の中心にそびえ立つ、赤黒い楔。
その楔が轟音と共に砕かれていく。

「まさか・・。」エーテルの塊のようなあの楔を破壊するにはかなりの火力がいるだろう、とは思っていた。そのための構成も編んでいたのだが・・・
問答無用で破壊されていく。
「あの兄ちゃんか。やるやんけ。」立ち上がり、妹を見る。
「ユーリ!」
「お姉ちゃん!あれ!」
「ええから、お前は騎士様ンとこ行け!」
「わかった!」

状況は変わりつつある・・・だが、気を抜くことはできない。
編んでいた構成を破棄し、新たに練る。
「凍れ!」一つ。
「砕けろ!」二つ。
「這い蹲れ!」三つ。

周囲の水分を気化させ、凍結させていく。
「さっさとええとこもってけ!ミーラン!」
ユーニの叫びに。

「任せて!」と女騎士が返してくる。
「ほんま、たまらんわ。」
術式を・・・・


エレディタは・・「戻せえっ!」回復術式で皆の火傷を癒していく。
このままでは・・。ジリ貧だ。しかも剣だか楔だか。よくわからない魔力源があり、どう見てもまずい。
が・・・
轟音と共にそれが砕けて。
「銃?」
結界の外から撃たれたのか。
「やるやんけ。」
視線を相棒に。「ミー、頼むで。」


「うーん、この辺でどうや?」
大きい斧、アトラスを振るう。
炎の神の右足の半ば以上にまで刃を食い込ませる。
ユーリは遠慮なく斧を引き抜き、「痛いかあ?」
少しぼうっとした感のある少女は、どこにでもいる町娘にも見えなくはない。
ただし、この大きな斧アトラスを背負っていなければ。
少し茶色っぽく見えるブロンドを短めにし、革鎧と、わかりやすい格好のためよく戦列(パーティ)に誘われる。
だが・・・・
「お姉ちゃん、なんていうかなあ?」で、大抵の冒険者は引き下がる。「あの姉妹か・・。」と。
ウルダハでは最近特に有名なのだ。本人が知らないだけで。


「神!イフリート!」
エレゼンの騎士は刃を向け。
「さらに問います!御身は同胞を死地に向けその在り方を具現させています!何故です?」
荒ぶる炎の神が応える。
「・・・問答・・・か・・・応える前に・・・・耐えて見せよ。」
炎が震え、結界の外側を豪炎が囲い。
4人のいる場所をも焼き尽くさんと。
灼熱の炎に照らされ、鎧の中の体が・・・
焦がされんと・・。
「耐えて見せます!」決意を神に述べる。

「・・・よかろう。。。」
斧で片足を無くしかけているというのに・・・
炎の塊が突進してくる!

「ミー!」悲鳴が。「なんやって!?」斧を振りかざしたまま・・。「まてや・・。」構成が霧散していく。

「耐えて見せます。そう言いました。御身よ、答えは?」
炎を内に宿した盾と、蒼い剣。二つで構えて。
「・・・・ならば良し・・・・」

赫い炎に自身を焼かれながら・・・・
「余は、在りながらにして在る。故に余は在る。余は全である。すなわち在るために在る。そして一でもある。この姿すらかりそめ。余の姿は在るが故に無形。解ったか?」

「解りました・・・神よ。ですが、今は御身の出る番ではございません。」剣を振るう。

「・・・勇ましき小娘。また相まみえようぞ。」
「はい。神よ。」
ジュワユースを振るい抜きながら・・・


昏い結界が消えていく・・・・


「あー・・。疲れたあ。」ぺたん、と座り込む。
「ミー!」相棒が。
「またって、ないし!あんなの、もう二度とゴメンだよ・・。」倒れこむ。
「ミー!」抱きつくが・・・意識が無いようだ・・・

「コレでケリついたんかいな?」と術士。
「そうやなあ?」斧を背中に戻した妹。
「あの兄ちゃんと話つけんとあかんなあ。」
「お姉ちゃんに任せるわ。」
「ああ・・ミーがちょっと・・。」


「ねえキーさん?」
「なんだ?ショコラ。」
「いつまでウルダハにいるんですか?」
「あー・・。今ちょっと立て込んでてねえ・・。」
「まーたサンクレッドなんて名前で女の子に声かけてるんでしょ?」
「そう言わないでくれって。これでも仕事してるんだ。」
「ほんと?」
「ああ、カヌ・エ様にいい知らせ、ができそうだ。」
「ふーん。」
「じゃあすぐにもどるよ。フネラーレにはお土産を用意しとく、って伝えてくれ。」
「わっちには?」
「もちろんだ。」

名前を持たない青年は、亡霊とその弟子の少女と祝杯の準備をするべく。
「じゃあ、行きましょう。」と。

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