763セブンス。東方の作法について。

「さぶっ。」
掛け合わせた上着の襟をきゅっとしながら、一陣の風に文句を一言。

レイ・ローウェルの秘書であるレルヒェは首を縮めて隙間風に対抗している・・
「あの、まだ、ですか?」
「うん、もうちょっと我慢してね。」という声になんとか足を踏み出す。
声の主は、髪や肌の色がチョコレートブラウンだからか、ショコラと呼ばれているミコッテの女性。わりと薄着が多い種族ではあるが、寒さには意外と弱いらしい。
毛皮があちこちとついた服(しかも茶色)なので、上着なのか地毛なのか、少々判別がつきにくいモコモコ具合。
で、秘書である彼女が何をオドオドと足を動かしているかと言えば、目隠しをされていて、足場がどうなっているのだか分らず、手を引かれるままに歩いているから、だ。

彼女が今、案内されているのは目的の人物の「家」で、この「家」というのは、言葉通りの「家」なのだが、少々ややこしい分類になる。
というのも、グリダニアの非合法の実働隊、とでも言うべき存在で、公にはされていない。中には、卒業というか足を洗い?有名すぎるほど有名になったヒトもいるが。
少なくとも今回案内するのは、まだ仕事を数件しかこなしていない「新規」のメンバーであるため、アチコチと名前が売れるのはよろしくないが・・少々、豪胆というか、大胆というか。
細かい事にそれほど気を使うでもないのか、あまり気にしていない、か。適当な言葉を捜してるうちに見えてきた。
この「家」は川がすぐ裏手にあるため、この時期かなり寒い。夏季などは涼しげなのだが。

「はい。着いたよ。今、目隠しはずすね。」と言われ、大人しく。
はらり。覆いが取れ目が光に慣れてくると「家」が見えた。「なんか・・外見、変ってますね。」
グリダニアの家屋はえてして木造がほとんどであり、中にはステンドグラスを嵌めこんだり、樹をそのままくり貫いたりと一部には変ったものがあるが、大抵、
そういう建物はなんらかの施設であったりする。そして、目の前の家は・・壁に土を練ったものだろうか?白っぽい壁で木をそのまま組み上げたわけでもなさそうだ・・・。
そしてドアだが、普通は開き戸で両方が内か外に開くようになっている。が、この家のドア?は板(それなりに装飾?はされている)が一枚。それも開くようには見えない。ん?

こんこん。とん。そして、横にある紐を引く。
なんだろう?
すると、ドア?が横開きに開いていく。
「どうぞ。」と、密やかな声が耳に響いた。
「や、ハクちゃん。」と軽やかなキーファー氏の声に「キーさん、相変わらず軽い。」とショコラが肘打ちを青年に。
ぐふ。といいながらも笑顔は絶やさない青年に少しだけ敬意を評してみたレルヒェであった。

中に入れてもらい(こちらは木板だが靴を脱ぐらしい)、白髪を綺麗に結い上げた女性に案内されるままに奥へと。
驚くべきことに、通された部屋のドア?は紙でできているようで、こちらも引くのではなく、ずらすように開けるらしい。「お姉・・姉さん、お連れしたよ。」(ん?姉?言い直した?)
?マークが頭の中で周りっぱなしだが、そんなコトはお構いナシにショコラが「おー、大分サマになってきたね。」と周りを見ながら。
「はい、おかげさまで。」と白髪の女性はぺこりとお辞儀を。
「あ?そか。いいよー。入っておいで。ガキは今裏庭で修行中だから。」
「また・・姉さん。草むしり?」「この寒いのに雑草抜きなんてやってられねえし。」
開いた戸の中には背の低い丸いテーブルがあり、敷き布団?だろうか。それが人数分用意してあり、その内の一つにはだけた着物を着た黒髪の女性が。
「よ、あがりな。ハク、茶たのむわ。」「はい。」
眼を疑う。先の白髪の女性と、この黒髪の女性だが、ほとんど同じ容貌だ。髪の色と、髪型と、白髪の女性には泣きホクロくらい。ただ、雰囲気はまるで違うが。
「で?今日の用件は?あ、座れよ。ねーちゃん。こいつらに遠慮なんていらねえし。」
「あ、は、はい。」
どうぞどうぞ、とショコラが手招きしながら勝手に座る。キーファー氏は最後に座るつもりだ。
とりあえず、布団?に腰掛けようと・・どう座ればいいのか分らないので、女主人のように両ヒザを外に向け、足を組むように。
「を、胡坐たぁ、たいしたもんだね。気に入ったよ。で?の続きも威勢よく言えるかな?」
「はぃ・・。あの、実は。その。・・・」「いいさね、まあ茶が出るからそれからでも。」
「すみません・・その、緊張しちゃって・・・」「あのね、黒サン。この子、アリティアさんとこのデキる子なんだ。仲良くしてあげてね。」
「そうなの?ふうん、あの社長さんは元気かねえ。」「はい!その、とても。」
「失礼します。」がら。
「はい、お茶が入りましたので。」
膝をそろえて座ったままの姿勢、戸を開けると一礼してしずしずと入り、後ろ手に戸を閉めてテーブルにお茶とお菓子を置いて周る。
どうにもサマになる。もしかして、この座り方はマズイのかもしれない、が、今更である。
そういえば、服装もこちらは紅い着物でキッチリだが、姉の方は着崩した感じではだけたところからは色白の素肌が見えている。妹が清楚ならば、姉は妖艶とでも言うべきか。
「あの、頂きます。」カップには取っ手もなく、そのまま持つのだろう。主人は普通にそう飲んでいるし、隣のショコラも同じく。
カップの中身は香茶の薄い茶色や、淡い草色、紅茶のように黒っぽくも無く、なんというか、緑色。しかも、底には何やらもわっとした物が沈殿している。
カップを持ち上げた拍子にソレがカップの中で踊る。
おそるおそる、口をつけ・・・仄かな苦味と渋み。後味には・・・甘み?ヘンな味だが。
「コレが東方のお茶だよ。」とショコラ。
「粗茶ですが・・。」と、最後に座った白髪の女性。
「あ、そうそう!ハクさん!次はコレ飲もうよ!」とショコラは缶を取り出す。
「まあ!それはどちらで?」「うん、まあ、後で。」にしし、と微笑む。
「あの。それでは本題、と申しますか・・・。その、アリティア産業本社代表取締役のマルス・ローウェルからの依頼、です。この、」と内装や、
お茶を指差し「東方に、いや、東方出身の貴女様に是非とも見ていただきたいものがありまして。」
「は?」
「有体に言えば、東方からの荷物なのですが、一体何に使うのか解らない、そしてその使用方法なども含めてレクチャーが欲しい、との事です。」
「意味がわかんねえな。そっちで発注?したんだろ?何かも解らずに買い付けすんの?アンタんとこは。」「ちょっ、姉さん。」
「いえ、それが・・少しの手違いで、担当者が居ないんです。(本当はミス宅配をネコババしたなんて・・いえない・・・)」
「そりゃまたなんで?」
当然の質問に用意しておいた答えは、「実は仕入れに行く途中で事故、というか・・何かに襲われて、施療院で治療中なんです。」
「術式で直るだろ?」
「はい、外傷は・・ですが、襲われたときのショックで、未だ精神的に落ち着かないようでして。しばらくは・・はい。」お茶をすする。
「ふうん、なるほど。で、どうすればいい?」
「勝手な申し出ではありますが、現物を見ていただいた方がいいかなとは思うんですが。その、こちらまでは、持ち出せない、と言いますか。
先ほども、自分は目隠しされてましたし。運び入れとか、手間ですし。よろしければ本社のあるリムサ・ロミンサまで足を運んでくださるといいのですが。いかがでしょう?」
「んー、まあ、最近退屈といえば、そうなんだけど。メンドくさいのもいやだし。」
「そこをなんとか。報酬などはこちらでご用意させていただきます。そして飛空挺の代金など、もし宿泊されるのでしたら、そちらも最高級のものを・・」手が制する。
「は、ダメだねえ、ねえちゃん?」
「え、そ。その。何か気に触ることでも・・?」
「あのさ。興が無い。もっと、楽しい提案が欲しいね。」
「と、いいますと?」
「ヒリヒリするような緊張感のある・・・そうさね、その「物」を賭けて、一勝負とかってどうだい?」
「え!?そ、そんな事・・わたしの一存では決めかねます!」
「だからイイんじゃない?さあ?どうやってわたしを口説き落とす?この交渉に失敗すればどうなるかは知らないけどさ。緊張してきただろ?」
「あ。あああ。その。少し待ってください・・。」縮こまる。
「黒さん、あんまりイジメちゃ可哀相だよー。」
「ん、イジメてなんかないよ、ショコラん。この感覚が楽しいんじゃないか。追い詰められて、そこからの起死回生っていうのかね。これはクセになる。その喜びってやつの入門さ。」
「わかりました!その勝負、受けましょう!」毅然とした表情で。
「ほら、な。楽しいだろう?」
「はい!もうトコトンお付き合いさせていただきます!」
「はん、イイ顔じゃない。な?ショコラ。で?勝負の方法はコッチで決めようか?」
「お任せします。トコトン受けると決めましたから。」
「ほう、言うようになったわ。さっきまでより、ソッチの方がいい。気に入ったよ。えと?」
「レルヒェ・トーア、です。」
「名乗りが遅れたのはお互い様か。わたしは黒雪。妹は白雪だ。後、ガキが居るがきにしないでいい。」「姉さん!」
「じゃあ、レルヒェ。賭けの勝負は、そちらの社長と一騎打ちだ。もちろん、真剣でもいいが、殺しかねんしな。「刃の付いてない武器」で、先手を取ったモノが勝ちだ。いいだろ?」
「はい・・ですが、勝ち負けのその報酬?はその物で?」「気に入らんか?」
「いえ、そうではなく。具体的な内容は・・」
「まあ、いい。今日明日の話でもないだろ?おい、キーの字、この先の予定は?」
「ああ、そうですね・・」メモを見ながら・・「特に急ぐのは。ただ、葬儀屋が少し席を外してますし、できれば早めに始末して欲しいところですね。」
「なにやってんだ、あの女。」
「さて?個人的な事には首を挟まないんですけどね。まあ、悪運は居ますし。なんとかなる、かな。」
「では、事の次第を報告してきます。それでは、お世話になりました。また折り返しご連絡を・・ショコラさん宛てでもいいですか?」
「いいよ、レルヒェ。でも、さっきの決断?カッコよかったけど・・・相談ナシで決めたんだよね?大丈夫?」その台詞に・・真面目な秘書は少し引きつりながら・・・「た、ぶ・・ん?」
「まあ、そういう事で。じゃあ、ハクさん、お茶お願いしてもいい?」
「ええ。いい葉を使ったお茶ですね。どうぞ、レルヒェさんもせっかくですし。」
「いただきます。」
「ああ、白、いい茶受けあったろ?あれ持って来いよ。」「あ、そうですね。」

「こ、これは・・」レルヒェは先ほどのお茶とは確かに全く違う物を見た、というか味わって。
まず、温度が違う。先ほどは少し冷まさないと熱かったが、この「茶」はぬるい。だが、香りといい、風味、味と、比べ物にならない。しかも受け?とかいったか。
このよくわからない黒っぽい塊は、串でさくっと切れて、甘露な味たるや・・・。お茶と相まって、確かにお茶を上品に受けている。
至高の一時の後に。
「じゃあ、その名無しの担当者に一言言っておいてくれ。おかげでいい者が見れた、と。」
「え、あ。はい。」バレてる・・。
「ありがとうございました!」あとは、報告か・・少し気が重い・・。


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かねてよりお知らせしていましたThe Lodestone(以下、旧Lodestone)から新生Lodestoneへ以降する際に設けていましたログイン期間を 2014年1月6日(月)17:00 で終了いたします。


ロドスト閉鎖っぽいから新生で書き始める準備よろしくw
Marth Lowell (Durandal) 2013年12月02日 20:32

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>マルスCEO、にゃるほど。
あらら~って感じね。
3k字だっけか・・・大変だ。(´・ω・`)
まだ新生ロドスト、よくわかんないのよね・・。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年12月02日 20:41

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>マユリさん
3k字だったとおもう。
直接書くと制限越えそうだから、別に書いて文字数見ながらが良いかもね。
Marth Lowell (Durandal) 2013年12月02日 21:03

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>マルスCEO,むぎゅ。
下書きかー・・・結構、勢いで描いちゃうトコが多いから、下書きてニガテだなあw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年12月03日 02:06

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Windowsに必ず付いてる[メモ帳]に書いてみるのはどうでしょうか?
フリーソフトでワタシが使ってる[TeraPad]なんて言うメモ帳は、更に便利ですよ。
で、書きあげたらコピー&貼り付け。ロドストに。
どっかな?
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年12月04日 20:08

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>エフィ
テラパッドは自分も使ってるw
Marth Lowell (Durandal) 2013年12月04日 20:20

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>えふぃたん、サンクス♪
試してみる~
新生でプレストーリー描いてみますv
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年12月04日 22:51

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