703セブンス。魔女と黒衣。

(なんなのよ、この男。)
黒い衣装に身を纏い、にこにこしている男。
先導するかとおもいきや、後ろに付かれた。
レティシアはむずがゆく、いや、「後ろを取られた」のだ。
黒衣森を歩いていく。
「ねえ。」
声をかける。
「どうかしたのかい?」と。優しい声の黒衣。
「その。言ったらなんだけど。あたしもそれなりに顔はバレてるんだけど?」
そもそもがこの少女を囮に使うというもの。
その囮がバレていては話しにならない。
「問題ないよ。ちゃんと準備はしてある。」
「本当でしょうね?」
「ああ。」

二人はグリダニア市街地に入る。
黒檀商店街に入り、店の主人に。黒衣は。
「来たよ。」一瞬の構成と呪。
「ああ、はい旦那。ちゃんとあります。」
服屋の主人はピンク色のワンピースを持ってきた。ついでにウィッグ(かつら)も。
「じゃあ、着替えてきてくれるかな?」
「な!な!なにい!」
「いや、ここで着替えてくれても構わないんだが。」
表情は全く変わらない黒衣。
「お粗末な胸には興味は無い。気にしないでくれ。」
此処は大通り。人の行き交いは多い。
「このっ!」振り上げた拳は、だがこの後を鑑みるとよろしくない。
「わかったわよっ!」と。ピンクのワンピース、そしてウィッグとを持って、店舗の着替えスペースに。
しばらくして。
出てきた少女は「愛らしい」
「上出来。」黒衣はつぶやく。
「むかつく!」頬を上気させた少女。
「そう言うな。似合っている。」という言葉と同時に術式が。
「え?」
一瞬の出来事に少女はついていけない。
「人払いをした。さすがにこの大通りではバレてしまうだろう?」
「人払い?どういうこと?」
「そのまんまさ。」
「え?」
「では、行きたまへ。」
背中を押し出される。

(なんなの?あいつ。)ふらふらと。
結局のところ、つかみどころの無い誘拐を見つけるためのオトリな訳だが。
そもそも、何をしていいのやら。
積極的に探す、のはパス。オトリじゃない。
ということは、拾われ役、か。
そこに。
「あれ?君、一人でこんなとこに?」「だね。」
ミコッテの少女とエレゼンの少女。
「え?」
「私達、観光で来てたの。もしよかったら一緒しない?」
「へ?」
同年代の少女達。
少し疑念が浮かぶ。(この年齢で二人だけで?ちょっと怪しい・・。けど。そこについていくのがオトリよね・・・。)
「どう?」「いいよね?」
「あ、うん。初めての街で。親とはぐれちゃって。せっかくだから一緒に居てもいい?」
と、アドリブで。
「うん!じゃあ、いいお店を紹介してあげる!」「あの店はいいぞ。」
二人は熱心に誘い
奥まったところの衣装店を紹介する。
「ここの服はいいの多いんだよ。」「うむ。」
ヒューランの店主は気さくで、「どれでも試しにどうぞ。」と。
「コレが似合うんじゃないかなあ?」「こっちもいい。」と二人に進められる中。
更衣室に。
入って・・・
「どうかな?」とミコッテ。「似合うだろう。」とエレゼン。
仕方なく袖を通してみることに。怪しいのはなんとなく。だが、決め付けるのも。
もしかしたら、本当に好意かもしれない。
それに。
着ているのすら恥ずかしいピンクのワンピースを脱いで。




だが。
やはり、というか。結果は裏切られた。

更衣室の床がいきなり二つに割れて抜けたのだ。
「きゃあ!」

落ちた身体をクッションが受け止めて。
数人の男達が寄り付いてくる。
「え!」
慌てて腰を探るが、下着だけだ。杖や長爪は無い。
「あ!」
そこに術式が。
構成が分る。
あれは、眠りをもたらす術式構成。
(やばい!)分ってはいるけれど、今は打つ手がない。
「何してるのよ!」
思わず叫んだ。
そこに。

「おや?呼んだかい?」と。
黒衣の男は一瞬でその男達を石像に変えた。
「え?」
「お邪魔だったかな?」と黒衣の男は。
「お、遅いっ!」
「でもまあ、それは謝罪するけれど。言い訳をしてもいいかい?」
「・・・・・聞くだけ、なら。」
「店主の脳を洗っていたんだよ。大体つかめた、かな。」
「洗う?」
「うん。記憶の1ピースも残さずにね。これで売られていった娘達も帰ってこれるだろうしね。まあ、店主は・・ね。」にこ。
「どうなる?」
「廃人確定。かな。」
「あんた!」
「言ったはずだよ。僕は女性の味方だと。」
「この・・・・。」





「ていう訳でねー。あの「黒衣」にはスゴイけど、ムカついてるんだよねー。」
カーラインカフェ。本来は和やかな空気が・・・今は・・。

その場にいる女性、一人を除き、残り5名が凍り付いている。
「レ・・レティ?」
「ん?スゥ?どした?」
「その武勇伝、話しちゃってもいいの?」
「そりゃあ、あの黒衣から術式習ってるんだし。」
「せ、先生はやっぱりスゴイひとやんやね!?」
「まあね。ただ、女性には甘いけど、男にはねえ。一瞬で石像にしちゃったりしてるし。」
「お姉ちゃん、実は黒衣の先生に・・・」
「氷の結晶になりたいのか?ユーリ!」

カフェでの混沌(ケイオス)は続く。

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