ゆるやかに流れる午後の時間。
海岸からは潮騒。
この音は子供の頃から聴きなれて、心を穏やかにしてくれる。
港から出るときの船の汽笛は、兄が鳴らしているのだろうか?
イマイチ気が利かない兄でも、そのくらいの仕事を任せてもらえているのなら、それはそれでいい事ではある。
ゆっくりと流れる時間。
父からの心温まるスープを食べ終え、傍らの椅子にお皿を置き。
お腹をさする。
実感があるわけではない。
でも。
確かに宿る命は感じられる。
「もう少し待っててね。」と独り言。
ブルーグレイの髪はやや伸びて、肩を越すくらいになっている。
そして、潮風と潮騒を受け取りながら、まどろみに。
夢を見た。
みんなが集まって、そう、みんな。
婚儀の式みたいな、そんな場で元気な赤ちゃんを披露する。隣には愛する夫ウルラ。
そして両親。
親友たちも皆、祝福をくれている。ああ、あたし、幸せだな・・・・
一転。
隣にいたはずの夫が倒れている。血を流し。
そして母も。
親友たちも、いつのまにか消えていた。
手に抱く赤ちゃんはどこに消えたのだろう?
不安だけが頭の中を駆け巡る。
「誰か・・誰か・・・いないの?ねえ?返事してよ!」泣き叫ぶが誰も返事をしない。
「ウルラ?」夫の横にかがみこむ。
夫の顔は髑髏になっていた。「いやああああああああああ!!!!!!!」
遠くから・・・声がする・・・・
「え?」目が覚めるが・・・悪夢の余韻がまだ覚めない。
「おはよう!マユちゃん!」
馴染みの声に意識が覚醒する。
いきなり抱きつかれ。そのふわふわした金髪に安堵を覚える。
「え?えええええ?マリー?」うわずった声をあげてしまい、自身戸惑いながら。
先に挨拶された男性。こげ茶色の髪を伸ばし、ややシニカルな笑みがとても似合う。
親友にして、義理の妹になった年上の少女(ややこしい)は、はにかみながらも。
「うん。強引なのよ。この人。そういう意味じゃお兄ちゃんに似てるかも。」
あ・・。
先ほどの悪夢が蘇る。血を流し倒れ、髑髏になった夫。
「あ、ウルラ・・・。」涙が溢れてくる。
金髪の少女はそうと察し、「あ、ごめんごめん!」と。
「マユちゃん!そうなの、お兄ちゃんがね。寂しがってるだろうから逢いに行ってくれって。」
元気づけるように抱きしめた手に力を込める。
あ、そうだ・・。あたしだけが悲しいんじゃない。マリーにとってたった一人の血を分けた肉親でもあるんだ。
そのマリーがこんなにも自分を慰めるために、癒してくれるためにわざわざ来てくれて。
うん。そうだ。くよくよしてる場合じゃない。
悪夢の残滓は潮風に流してしまおう。
よし。
「む・・・あの野郎・・。」唇を尖らせて、粋な計らいをいつもしてのける夫にエールのつもりで。
「あはは。マユちゃん。いきなりで申し訳ないんだけど。」と青年が。
その笑顔に(ああ、マリーはこの笑顔に惚れちゃったんだなあ)と思いつつ。
そういえばあたしはウルラのどこかつかみどころの無い部分に、どんどん惹かれていったな・・・・。
「あ、そう。うん。」金髪の少女もパートナーに相槌を。
「このお店のオススメってのを教えてくれないかな?」屈託の無い青年の言葉。
「お腹すいた。」こちらはおなじみ。
まったくもう。
「あ、それじゃあ!父さん!ちょっと!」
うん、ちょっと元気でた。ありがとう。ふたりとも。
笑顔の二人を食卓につかせると「クレア、こちら様には特上の品を!」
意図を察した彼女はにっこり微笑んで。
「りょうかーい。」長い栗色の髪のヒューランの少女はオーダーをカウンターに。
席に一緒に着き、開口一番。
「ええと、ファーネさん?だっけ?その、どういった事で?その。」
青年は気軽に。「いや、魅力的な女性にやっと逢えた、それだけだよ。」
「へー。」と隣を見れば、金髪の少女は顔が真っ赤になってうつむいたまま。
「ん?」まてよ・・・。ファーネ・・・・・。え?まさか?
「どうかしましたか?」と聞き返され。
「あの・・。もしかして、あの?ファーネさん?ですか?」
「んー、どういった風評が来ているか知らないが。巷では「一分当主」なんてふたつ名を頂戴しているね。」シニカルな笑みを乗せて。
「げ。」硬直してしまう。
「あ、大変失礼がありまして・・。」頭を下げる。
「ああ、気にしなくっていいよ。俺は今はただの新米冒険者、っと、この子には卒業とは言われたが。まあ、新米だよ。よろしくね。先輩。」
「あああああ。はいいいいい。」緊張してきた・・・。
しかしマリーめ、どうやってと。親友しにして義妹を見やる。
「ま、楽にしてよ。今の俺は本当にただの冒険者なんだし。」気さくな。たぶんソコに惹かれたのか?な?
そこに。
「お待たせしましたー!当店自慢のアクアパッツァでーす!」
クレアは大きな鍋のような器に魚一匹がまるまると煮込まれた大皿をテーブルに乗せて「どうぞ!」とにこやかに去っていく。
「わお。父さん自慢の逸品きたー!」
「ほう、すごいな。グリダニアだと魚介自体が珍しいからなあ。」
「いいにおい・・・」ようやっと赤面から立ち直ったのか、金髪の少女。
「では、お召しあれ。」
----------コメント----------
†14にも悪夢ありましたよねw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月28日 11:31
----------------------------
>マルスCEO、うん。
まあ寝起きのあのなんていうか、安堵感というか、寝覚めの悪さというか。あたし、結構ヘンな夢みるんだけど、怖い夢が多いかなあ・・。
後は仕事に追われる夢w
「書き物。」シリーズだと、あとはフネラーレが悪夢に悩まされていますが・・。彼女の場合、PTSDの方が正しいかも・・
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月28日 12:13
----------------------------
PTSDって障害ですよね・・・
心的外傷後ストレス障害
(しんてきがいしょうごストレスしょうがい、Posttraumatic stress disorder:PTSD)
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月28日 12:29
----------------------------
>ですね。トラウマ、っていうのが一般的かしら?
なので、フネラーレは毎夜のごとく悪夢にうなされています。
それを唯一、癒し忘れさせてくれるのが彼なワケです。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月28日 12:45
----------------------------
( ゚Д゚)<イチャイチャ
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月28日 12:47
----------------------------
(゜д゜)<イチャイチャ
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月28日 12:49
----------------------------
よし、僕が忘れさせてあげy(ry
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月28日 14:11
----------------------------
>フィズさん。寝室に入る前に・・・
たぶん数百本の矢が刺さってますがw
ゼロ距離射撃でw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月29日 08:31
----------------------------
うむ、フネラーネ嬢は過去に扉ごと打ち抜いてますな。
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月29日 08:33
----------------------------
扉どころかw
気が立ってるときには、キーファー氏のシルエットになるように矢をぶちこんでますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月29日 08:59
----------------------------
あ~w
ありましたねw、しかもあれって、寝ぼけながら撃ったんですよねw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月29日 09:06
----------------------------
そうそうw寝起きでアレとはねw
撃ちこまれる方の心情としては「死ぬかもしれないが動けない。」ですねw
まあ寝ぼけながらの射撃であの精度ですし、フィズさんには覚悟をもって飛び込んでもらいましょうw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月29日 09:13
----------------------------
ソース発見w
「書き物。Domino dancing(ユカイに倒れる奴等)」より抜粋。
ドアの近辺、もっと言えば、ドアを開けた銀髪の青年の頭をすれすれに、3本の矢が壁に刺さる。
丁寧に、両耳、てっぺんと中るスレスレのところ。
言葉も無く立ち尽くす青年に、さらに矢が飛んでくる。
今度は、両腕の形に左右3本づつ。さらに両脚にも3本づつ。
今ヘタに動けば、串刺し確定なのがわかってくる。
どの矢も、中るぎりぎりのところなのだ。
そうして矢は増えつつ。
綺麗に人の形を壁に作っていく。
----------------------------
寝台でうたた寝していた黒髪の少女は、愛用の大弓「コフィンメイカー」を持ちながら、寝ぼけ眼で・・。
「なニ?」
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月29日 09:21
----------------------------
さすがw
じつはこのエピソードをショコラに喚いていたことがありますw
あの
家に行ってみろ!人型の矢が、みたいなw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月29日 09:29
----------------------------
う~む、小説信者(自称)の自分もそれは覚えてないかもw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月29日 09:35
----------------------------
あははw
ですかw
その後、「家」の場所を知ってるのは自分(キーファー)だけだし・・・なオチなんですけどねw
まあ、ショコラですし、あっという間に「家」に潜り込んで普通に生活する程度にはw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月29日 10:53
----------------------------
ゴクリ。。。
僕の場合見事に、人型シルエットをさらに矢で塗りつぶされそうだ。
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月29日 17:24
----------------------------
>フィズさん、ということはw
どうあっても覗きにいきたいんですねw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月30日 07:37