524書き物。進軍。左翼は・・

夕暮れを過ぎ。
荒涼としたザナラーン西北部に向け、部隊が進行を開始しようかという時。
「ふぁーあ。」ララフェルの女性は一人アクビをかみころすこともなく。
盛大に大きな口を開けていた。(こんなしぐさが許される、というかかわいらしいのはララフェルの特権だと誰かが言っていた)
そこに。
「あの・・隊長?」とおずおずと声がかかる。
「ん?」顔を上げる。概ね身長差があるため、顔を上げることが多いのだが、肩コリは種族的に無いらしい。
銀髪で黒目の肌のエレゼンの女性、ミアヌ。彼女は神勇隊の一員で今回の遠征にも参加している。
神勇隊の隊長はグリダニアに残っているため、隊長代理ということなのだが。
今回は冒険者の黒魔道士と白魔道士が部隊長、および副長として所属されていたため、
彼女は実質的には攻撃指揮を取る際には弓隊の分隊長だったわけで。
しかし。
なぜだか今は副長に抜擢されている。
かの白魔道士のララフェルはドコに行ったのだろうか?

ここザナラーンで最後尾を受け持つこの左翼隊は時間差をつけて進軍しなければならないため(狭い峡谷ゆえ)、先に休息をとり、夜間行軍となったのだが。
「いえ、隊も整いましたので、そろそろ進軍の合図をお願いします。」
グリーンのチュニックと同じ色の帽子の彼女は控えめに見て美人だと思えるが、どうにも控えめらしく少しオドオドとしている。
「んー。りょーかーい。」
「水晶の魔力」と称されるララフェルの少女?はもう一度アクビを、今度はかみころす事に成功し、杖を持って全軍に支持を出す。
「いくよー。」
なんとも覇気に乏しい号令だが、進軍は始まる。


「おい、大丈夫かな?あの隊長殿。」「お前、それ目の前で言って来いよ。5秒耐えれたらビスマルクでフルコース奢るぜ?」
「マジか?」「ああ。3秒もあればお前の丸焼きができあがるからな。」「・・・・。」

夜も近づく荒野だが、不思議と暗くは無い。小月といわれている赤くて何処か禍々しい天体が太陽のそれよりも大きく、近くにあるからだ。
誰だか学者がのたまっていたのは、「月が明るいのは太陽の光を反射させているからだ。」
と。まゆつばものの話だが、実際としてはこの月は太陽なんて関係がなさそうだ。やはりあの学者は妄想を語っていたのだろう。

「イヤな空ね・・。」ポツリとつぶやく薄い金髪をツインテールにしている隊長。
「そうですね・・。」不安げなエレゼンの副長代理。
「まあ、早いトコ行っちゃおう。えらっちも待ってるだろうし。」
「あの?それって。副長?ですか?」
「先行偵察に行ってるの。彼女は。」
「はあ。なるほど。それでですか。」
「ああそれとね。不審者がいるかもだから注意しておいてね。」
「え!そ、そ、そうなんですか!?」
(声がおおきい)(すみません・・・)
「まあ、夜間だから魔物も活発だからね。どこから出てくるかわからないし。とりあえずは気をつけながら、かな。」
「はい!」
部隊にその旨を伝えるべく彼女は走って行った。
「まじめよねえ。」
ひとりごち。

自身が筆頭に峡谷を進軍していく。
そこに。
「わあ!きやがった!」と後方で声が。
振り向くと、崖の上から魔物が数匹。目に見える限りでは3、か。
攻撃に特化した左翼だが、逆に攻め込まれるともろい。特に不意打ちなどくらえば。
「はぁ。魔女はコレを奇策に練りこんでるんでしょうねえ。」ふっと。
無数の矢が魔物達に降り注ぎ、損耗は無さそうだ。
「まあよし。」
進軍を続ける。
夜半を過ぎる頃にはキャンプがあるであろう箇所まで来たが、このまま強行軍を続ける。まずは合流しなくては。
そして。

ボト。

目の前に魔物が落ちてきた、といわんばかりに。
「ひゃあああ!」とエレゼンの副長は悲鳴をあげ、弓に手が伸びない。
仕方が無い。
大きなトカゲを思わせる姿。見上げるのは慣れている。肩コリなんてしないから平気。
「螺旋。」
ひと言。

巨大な火球が出現と同時にトカゲに重なるように転移し、爆炎と轟音を撒き散らし一瞬で大きなトカゲの形をした消し炭に変えた。

構成を練り上げ、魔力を注ぎ、呪を紡ぐ。これらの所作に全くの隙がない。まさに一瞬。

「ひっ!」腰を抜かすエレゼンの副長。
「らくしょー。」ララフェルの隊長はこともなげに消し炭にケリをいれ、がらがら、と崩しながら進んでいく。
あんまりのことに部隊が静まり返り、足が止まっている。
「はやくおいでよ。」
隊長の声に皆が慌てふためき、進軍を開始する。


「俺、やっぱ5秒保つ自信ないわ・・。」「だろ?」


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こんな戦地であくびが出るのは自信の表れか・・・w
僕は5秒と言わず炭になっても焼き続けて欲s(ry

@ひとりごち。がちょっと笑えましたw
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月28日 09:38

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>フィズさんwwwどんだけw
独り言>ひとりごちる なんですけどねw
これって関西弁なのかしら?たまに作中でも使ってますがw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月28日 10:51

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あら、誤字かと勝手に思ってしまった失敬
そうなのかぁこっちじゃあまり聞かないなぁ。
京都弁?w
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月28日 14:09

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>フィズさん。どうかしら?
ひとりごちる、って言わないのかしら?
京都弁じゃないとはおもうけど・・。
んー~む。(´・ω・`)
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月29日 09:18

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(皆ググッたと思うけど)ひとりごちるについての記事を貼っておきますね。
http://club.japanknowledge.com/jk_blog/nihongo/20120924_127.html
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月29日 09:31

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>マルスCEO!おおっと。うっぷす。
そうだったのねw意外とレアな言葉使いだったかー・・。
検索ありがとw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月29日 10:57

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おぉ、ここは勉強になるなぁ。。。まじめに。

とひとりごちってみましたぜ!!hehe
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月29日 17:19

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>フィズさん、ありがとw
うん、やっぱりあってたw
口語と文語でいえば、文語しかない言い回しだと。
まあ、書き物。ですしw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月30日 07:32

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