497書き物。親子。

グレイの髪の女性はいたく不機嫌だ。
「レティ・・。だってなあ。」いかつい男性は少し気おされたように、しかし。
「お前、ここ最近ずっと出っぱなしじゃないか。マユが気にかかるのは分かるが・・。」
反論してみるが。
「なんで若い子ばっかりなのかなあ?」
本気で睨んでくる。
「ま、待て。本当に下心とかそんなんじゃない。たまたま。俺が愛してるのはレティ。お前だけだ。」
「ふーん。」
「本当、本当だから!その爪を出すのは勘弁してくれ!」
「ま、いいわ。人手があるなら、あたしの出番はもう無いわね。」
「まあ・・・、そうなるんだけど。マユはどうしてる?」
「んー、そろそろ爺ちゃん婆ちゃんになる覚悟というか。そっち?」
「なに!」
「あの子、多分子供ができたみたいね。相談受けたけど。まず間違いないわ。よろしくね。
爺ちゃん。」グレイの髪を揺らし、ものすごく嬉しそうな表情。
「うわー。複雑だなあ。」坊主頭を抱え、「オーダーでーす。」と少女の声も届かないようだ。
「えーっと?」と夫婦を見ながらどうしたものかと、給仕の少女は動けない。
「ああ、大丈夫。コイツならすぐに動くから。」と婦人に言われ、そそくさと客の対応に戻る。
「ほれ、働け。」と伝票を突きつけ、機械的に動き出す亭主。

「まーったく。あの子ったら。何もかもいきなりなんだし。」
しかし、よくよく考えると自分も人の事を言えたワケじゃない。
なるほど。遺伝というのはこういうことなのね。
一人納得しながら、まだ見ぬ孫の顔を想像する。
やはり、家系?というかグレイの髪なのだろうか?それとも夫のブロンドなのだろうか?
男女のどちらかは、あまり気にはしないが。できれば女の子がいい。
親子3代で一緒に風呂にでも入りつつ(男子禁制だからね)、いろいろと話がしたい。

だが。

これは夫にも言ってはいない。
「帝国戦」
グランドカンパニー主催の一戦。
これには参加せざるを得ない。
娘婿のウルラもこれには参戦する、と聞いている。
アラミゴ。
自分たちの故郷を解放するための戦い。そう、悲願でもある。
まだ時期は発表されてはいないが、遠からず実戦に至るだろう。
場所は・・おそらく北方。
皮肉にも竜が堕ちた地、モードゥナだろう、との情報は可愛がっているミコッテの情報屋の少女だ。
「ねえ。」
「どうした?」とせわしなく鉄板と向きあう亭主。
「あたし、ちょっと出かけても大丈夫?」
「らしくねえな。」
「そう?」
「いっつもそう言っては、ぽろっと帰ってきて。」おっと、これ、あっちのテーブルな。
「俺の事、ボロカスにしてるだろう?」っと、これアッチな。
「そうだっけ?」
「ほらな。」
「サンドロ。」
「あ?」
「大好き。」
「はは、照れちまうな。」
「うん。」
「お前。行くのか。」
「ええ。マユをお願い。あの子に背負わせたくない。」
「馬鹿野郎。」
「野郎、なんて女に使う言葉じゃないわ。失礼ね。」
「ならもっと、お淑やかになっとくべきだったな。」
「そう・・。ごめんね。サンドロ。」
「そんなお前が、たまらなく好きだったんだ。帰って来いよ。」
「もちろん、よ。天魔の魔女をナメないで欲しいわ。」
「頼もしいね。ウルラ君も、な。」
「あの子はタフだわ。ちゃんと帰ってくるから。椅子は処分しないでよね?」
「縁起でもねえ。いつでもウマイメシを用意してるぜ。」
「じゃあ、ね。」グレイの髪の女性は、軽く右手を。振り返りもせず。
一度だけ振って、そのまま蒼い光に包まれていった。

「馬鹿野郎め。」店主の男は目頭を押さえ。
「孫の顔見なきゃ、ババアにもなれねえだろ!」と。


「マユ?」
「え?なに?かあさん?」
「ええ。あなた、受胎してるわ。」
「え?」
「月のものが来ないんでしょう?もう二月も。多分、3月めもこないわ。」
「え?ええええ?」
「それって、赤ちゃんができた証。」
「あ、やっぱり・・・。」
「おめでとう!よくやった!わが娘よ!」
「ありがと。おおげさなー。どうしようかしら?」
「実家に帰りなさい。ウルラ君は・・。恐らくそっちに残ってしまうわ。」
「え!?なんで?どうして?」
「彼、カンパニーに入ってるのでしょう?だったら。」
「え?意味わかんない!」
「アラミゴ奪還。この悲願がお題目な以上、あたしだって引くに引けないの。」
「ちょっと!それなら!あたしだって!」
「お腹の子を道連れに倒れる気?」
「あ・・。」
「じゃあ、約束して。決してこの戦役には参加しないって。」
「そんな・・。あんまりよ。あんまりだわ・・。」
「戦争、ってそういうものよ。」
「じゃあ、ウルラは!」
「彼は。彼には何も伝えていない。でも。あの子は伝えないことで、マユ。
あなたを護ろうとしている。恐らくカンパニーの通知を見た瞬間、覚悟を決めたでしょう。」
「もう!あんたらばかーー!」
「ゴメンねマユ。馬鹿には馬鹿なりの筋の通し方ってのがあるの。」
「もういい!」
「じゃあ。これだけ。」
「なによ、いまさら!」
「産まれてくる子の名前は決めた?」
「・・・・まだ。」
じゃあ。
「私の一存。女の子だったら、アナスタシア。あたしの母、あなたのおばあちゃん。その名をあげて。いいかしら?」
「いいけど・・・。」
「男の子だったら、好きにすればいいわ。」
「ここに来てそうくるか。」
「あたしらしいでしょー?」
「らしすぎて、今更ビックリしないわ。」
「じゃあね。」
「・・・。じゃあね。これって別れじゃなくて・・。」
「・・・・・・・・・」
「返事しろ!おばはん!  かあさん!!!ねえって!!!」
無言のパールを握り締める少女。


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最後のパをバで読んでしまった痛恨のミス・・・
Crystal Mana (Hyperion) 2013年03月08日 04:37

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>まなんwwww
戦死者エンドロールにいれたろーかw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月08日 05:15

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もう「○ールのようなもの」にしか読めないwwww
Ryusya Holto (Hyperion) 2013年03月08日 06:38

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>リュシャさん、いらっしゃいw読み間違えならごめんなさい。
「○ールのようなもの」って、小説かしら?こっちもゴメンなさいねー、薄学なもので。なんだろ?
新生に向けて、物語が動いてます。というところでしょうか。
今後も是非お楽しみをw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月08日 06:50

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お母さん(´;ω;`)ウッ…

バールww
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月08日 13:31

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>フィズさん。
あ。バール、ね。そっかそっか
でもあれで殴ったら死ぬね。まぢで。
って、バール握り締めて涙する少女って、どう考えても想像できないw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月08日 13:48

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やってたのかΣ(゚Д゚;)

うんバールにしかよめないw
Bob Dalus (Hyperion) 2013年03月08日 14:42

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いい話なのにごめんなさい。リャシャですよ~。
でも悪いのはまなっちだw
Ryusya Holto (Hyperion) 2013年03月08日 19:41

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>ぼびー。「やってたのか」が謎・・。
ちゃんと読んでる?
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月09日 01:31

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>リャシャさん、失礼しましたー。
まあ、まなまなはいつもこうなので、据え置きでw
またコメントいただけたら嬉しいですーw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月09日 01:33

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