「ねえ、きいてくださいよー。」
酒臭い息をまきちらしながら、ミコッテの少女が・・。
「ンだよ・・。」
ヒューランの少女はクイっとグラスをあおりながら。
グリダニアのとある一角。
小さな露店で二人の少女は酒を飲んでいた。
ミコッテの少女。茶色い髪に褐色の肌。フュ・グリューン(緑)とは全く言いがたいが、付いた愛称はショコラ。
青い瞳と愛嬌のある顔だが、残念ながらモテた事は無いらしい。
ヒューランの少女。こちらは白磁を思わせる透けたような白い肌に、真っ黒な長いストレートの髪。
そして夜を思わせる瞳と、左眼を隠すように不自然にカットされた前髪。
その奥には、満月のような金色の瞳が隠されている。人形のような端麗な顔だが、言葉使いは・・・。
「ヲイ、もう一杯出せ。」
悪い。
露店の主人が慌てて注ぎにくる。
「なア、ショコラ。この酒うめえナ。」
「でしょー?でもあまり飲んだらぶっ倒れますよー。」
「そうカ。」
二人が飲んでいるのは麦の蒸留酒だ。アルコールとしてはワインの倍以上あるだろう。
最近見つけた店では、かなりの点数をショコラはつけている。
ここ以外だと、実家のあるリムサ・ロミンサの酒場「溺れた海豚亭」のラムくらいか。
あそこに行くと、実家がらみのしがらみやなんだかんだでウルサイから行きたくはないのだが・・・。
「で、キーファーが気になルのか?」
「いや、全然。むしろ、見せびらかしてペイアップしたいくらいですよー。」
意外と豊かな胸を持ち上げる。
んーむ。僕はここまでのサイズは見込めないな・・、と内心穏やかではない。
「キーさんはですねえ、胸の大きい女性が好き、っていう、そういう情報がとれていますー。」
「オマエ・・。そんな情報意味あルのか?」
「フネラーレさん、わかってませんねー。情報あっての情報屋なんですよー。いまのお話もお金が取れますしー。」
「へ?」
「キーさんを篭絡したい連中にとってはかなりの情報ですよー?鬼哭隊は隊長が代変わりして、
かなり規律も厳しくなりましたけど、幹部連中なんかはそんままですしねー。
あとは、カヌ・エ・センナ様の腹心あたりなんか、何考えてるかわかりませんからねー。
こういったお得意様を持ってるわっちとしては、今の話はただの冗談ではないんですー。」
「まあ、僕には関係なイけどね。」
「そうですよねー。」
「まあ、飲もうゼ。」
「はーい。」
気が付いたら特区の一軒家、そして寝室。
「あ、やらかしちゃったかなあ・・・。」
黒髪の少女は寝台から起き上がると。
キーファーのグチや、彼氏のグチを振り撒いていたようにおもう。
「あちゃー。」
あの後、ショコラはおそらく、宿に戻る前に自分をこの家に届けたのだろう。
本来ならキーファーしか入れないのだが。
さすがは情報屋。
カギすらピッキングしてのけたようだ。
「アイツ、犯罪者確定だな。」
服を脱ぎ捨て、軽い頭痛のする体を寝台に押し込める。
「おやすみ。カルヴァラン。」