403書き物。一応のオフ。

「あぁー、終わった終わった。」

とある一軒家。特区にあるマップには無い場所。

寝台に飛び込む、長い黒髪の少女。

その横にはナイトテーブル。そしてケーキが8個くらいはあるだろうか。
今回の特別報酬。
「ちゃんと用意できたじゃないか、やればできる子だね。」
自分より年上のマネジャー、銀髪の青年キーファー
まあ、特別と言っても裸身を見た、とかでふっかけて買わせたワケだが。
普段はペイのアップだが、今回はケーキの盛り合わせとなった。
「さーて・・。」
今回の仕事は非常に後味はよくない、しかし、スッキリした案件。
連続婦女暴行犯の殺害。
森の中でハリネズミにして、蹴り倒してたら死んでた。
同じ神勇隊のメンバーであり、隊長の親戚だとかいう男。
あんな胸くそ悪い下衆の始末など、本当に後味が悪い。
最後がハリネズミで終わる、というその一点だけはスッキリしたが。
「んー、何からたべようかな。」
なにせ8個もある。
もう夕暮れも過ぎ、夜ご飯な時間だが、それはさておきケーキ。まずケーキ。
なんせ、日持ちしない。
1日くらいなら、氷の魔法の利いた箱でもつだろうが、それでも半分は攻略しておきたいところだ。
「やはり、ここは・・・。」
寝台から降りて、ティーセットの準備をする。
今朝のシーツの汚れは家政婦が来て、シーツごと交換してくれたのだろう。
また汚しては気の毒だと思い、ちゃんとしたテーブルに持っていく。
そしてナイトテーブルを引き寄せ、いつもの黒いチュニックを脱ぐ。
左肩から、二の腕にかけて血がこびりついている。
「チ。」
不覚を取った証だが、ヒーラーに癒してもらい傷口はもう無い。
「まずはコッチが先だったなあ・・。」
お茶が冷めてしまうが、もともと熱すぎるのは苦手だったので、軽く水浴びでもしてこよう。と、浴場に行く。


そういえば、チュニックも直してもらわなければ。
明日は、草色のチュニックにするか、白のワンピースにするか、どうしたものか。
体を拭き終え、さっと寝着に袖を通し、リビングのテーブルに戻る。
「とりあえず、コレだな。」
クリームのたっぷりついた、ベリーのケーキ。
好きなものから食べる、がモットーだ。
いい感じに冷めたお茶と、ケーキを頬張る姿は年相応の少女だ。
「カルヴァラン、まだかなー?」と。
「あ!アイツ、まだパール返してない!!!ブッコロス!!」
クチの悪さだけは、年相応ではないが。
とりあえずは、目の前のケーキの制覇だ。
「次は・・もくもく・・。チョコだな・・。」
そして、
「おいこラ!キーファー!手前ェ、パールどうしやガったンだ!?ブッコロスぞ?」
こっちは仕事用パール。
いつも肌身離さずネックレスにつけていたパールを、仕事のため、
と称して引きちぎられ、怒り心頭だったのだが、連続した仕事でつい忘れていた。
恋人との唯一の連絡手段であるのに、ソコを失念していた自分にもハラが立つ。
なのでマネジャーの銀髪の青年にあたる事にした。
こっちはリングの上のパール。ケーキを食べながら、返事を待つ。もし無くした、とか言い出したら、本気で殺す気で。

「あ、すみません、フネラーレ。ケーキの置いてあるナイトテーブルに、小箱が無かったですか?そこに入っています。
今回の件での無礼は、いずれ償います。ただ・・。今はお金に困ってまして・・・・・。」
「わかッタ、もういい。」
伝心を切る。

「ふう。」
ケーキを一つたいらげ、その小箱とやらを探すと。
青いリボンで括られた小さな水色の小箱が確かにあった。
クッキーか何かと思っていたが、まさか、ね。
開けてみる。
引きちぎった銀の細いチェーンではなく、薄いピンク色の金のチェーンが付いたパールだった。
「ほう、やるじゃん。センスは悪くないね。」
身につけて。
「ね、カルヴァラン。」と呼びかける。
「ん、どうした?」
「この前の爆雷、笑ったね。」と笑顔で言う。
「ああ、アレはいくらなんでも死に掛けた。笑うしかなかったな。」笑い声。



恋人達の夜は更けていく・・・・。

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ