391書き物。もうひとつの門出。

ねえ。」
元鬼哭隊の隊士のミコッテ。
シャン・ズティッヒ。
オレンジ色の髪を短めにして、今は薄い赤色のドレスを着ている。

今日は親友の少女の結婚式。
グリダニア最大のカフェ、カーラインでの挙式。
もっとも、結婚自体はすでに済ましたらしく、今回は披露宴、というわけだ。

周りにはそうそうたる面子がいる。もちろんかつての上司、スウェシーナとか。
(明日からは義母さん、になるのにゃー・・。)とか思いながら傍らの少年に問いかけた。

「どうしたの?」と。
こちらは細面の茶色い髪の少年。
線が細く、少し頼りないが、ほうっておけないところが多々あって、ついつい面倒をみてしまう。

「マユちゃん、綺麗だにゃー・・・。」
「そうだね。」

この少年は、今は鬼哭隊隊長となったスウェシーナのひとり息子で、明日サプライズで婚儀と企画中なのだが。

「先輩、明日のドレスとか選んでましたっけ?ぼくはこれでいいんですけど。」と礼服をそのまま指差す。

「ちゃんと用意してあるにゃ。そして、もう「先輩」って呼んだらダメにゃ。ちゃんと、シャン、って呼ぶにゃ。」
「あ、は、はい、先輩。」

ツメで顔面を引っ掻こうかと思ったが、さすがに明日の事もあるので、ふー、ふー、と荒い息と、尻尾を逆立てるにとどめた。
少し髪も逆立っているかも知れない。


「いいにゃ。もうイーリスが手配してくれてるからにゃ。」
「そっかー・・。さすが先輩。」

今度こそツメで頬に3本線を刻み付ける。
我慢の限界にもホドがあると言うコトを、教えるためだ。
「ぐあ・・。」
少年は思った以上のダメージにのけぞる。

周りは、ああ、またかと笑いながら眺めているが、明日の式は大丈夫か?とも。

マユ、ウルラの夫婦には黙っているが、それ以外の全員は知っている。
二日連続の婚儀のパーティ。


「マユちゃんみたいな失敗はしたくないにゃあ・・・。」
先のお披露目のドレス姿で、階段を3段くらい転げ落ち、旦那に受け止められる、
というサプライズで周りを湧かせたものの、アレはやりたくない。
なんせ・・・。
「ネルケ君。もし、あたいがマユちゃんみたいに転げ落ちたら、受け止められるかにゃ?」
「無理かなあ。」
否定すら、一瞬たりとも悩まずに言う。
やっぱり・・。

だが、以前ウルラ達の居たリトルアラミゴまでの道程で見せた、あの姿が印象に残る。

「聞いたあたいがムリだったにゃ・・・。」
ガッカリ感は常の通り。せめて、あの時みたいに・・・。


短めのドレスにしよう。そう心にとどめておく。

お披露目も終わり、短めのドレスに着替えた親友を観て、やはり短めだにゃ・・。

「マユちゃん、ウルラくん、おめでとうにゃー!」と抱きつく。
「シャンちゃん、ありがとう。」目には涙が浮いている。
「ありがとう。シャンさん。」
「ネルケはどーするの?」とマユ。
「ん、ああ、ええと。明日のシャンと・・・・・
向こうスネに蹴りを入れる。
「あっ!」
「明日はまたパーティだにゃー!」
「あ、そっか。あたしもドレスを用意しないと。さすがにこのドレスじゃね。」と純白のドレス。
どうしようかな~と悩んでいる新婦に気づかれないように
「バカ?」と、明日の自分達の婚儀をこの二人に知られないように周到にしてきたのに、台無しにしてくれようと。
「ご、ごめん・・。」としか言いようが無い。蹴りを食らったのだけは気づかれまいとは、努力しているようだが・・。
ボソボソとした会話だったが・・・

新郎のウルラにはバレてしまったかもしれない。
微笑みながら、「頑張って。」と。


「いよおおっし、ここらで一発、我等が鬼哭隊隊長殿が、一つスピーチがある!どうぞ!スウェシーナ隊長!」
グレイの髪を後ろで束ねた少女のような女性、レティシア。
「えええええ!!!!!、ちょっと!!!レティ!!!!わたしそんなの聞いてないっ!!!!」
茶色い髪の、小柄な隊長はうろたえまくる。

ネルケとシャンは、そのうろたえ振りに、くすくすと笑いを漏らすが・・・
「あ・」「にゃ。」


明日は我が身なのだ。


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この二人はギャップ萌えコンビですねw
シャンのたまにみせる女の子らしさと、ネルケくんの極稀に出るかっこよさw

ええコンビじゃw
Jonathan Jones (Masamune) 2012年10月26日 01:09

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>ジョジョさん、どうもw
そうねーw
しっかり者のシャン。頼りないネルケ。
この二人の違う面が出せててよかった、とおもいますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月26日 05:30

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