巨木の下。
ここは黒衣森。
3人の男が色々な格好で。
一人は両の眼球を半ば以上はみださせて倒れている。
こめかみには巨大な矢。
もちろん、頭蓋を貫通しているため絶命している。
一人は頬になにかの冗談のように矢が貫通している。
こちらはまだ息があるが、口蓋の一番奥、奥歯あたりを貫通しているため、何も声を出せない。
そして、腰骨の付け根、背骨と腰に、もう一本づつ。確実に脊髄を粉砕している矢。ぺたり、とすわりこんでしまっている。
最後の一人。
両足の甲に、それぞれ矢が地面に縫い付けている。
「おしゃべりの時間だネ。」
凜とした、しかしどことなくイントネーションが変わった少女の声。
もう一度、男は少女を見た。
夜の闇。そうとしか思えなかった。そして白磁のような、人形を思わせる美麗な少女。
が、奇妙な前髪。
不自然に斜めに切りそろえられた。
そして、その奥に闇の真実を見た気がした。
金色。
少女の眼は、右眼は夜の色。だが。
左眼は満月のように金色だった。
まさか?
噂の・・。葬儀屋か!
「その・・。なんだ。アンタ、この俺なんか始末してもしょうがないだろ?ここは俺も引くからさ。なんとか・・。」
と言って、助けを請うが近寄ってくれば剣でなんとかしようと思い、剣を持つ手を見る。
矢が突き刺さって、剣が手に固定されている。
「な・・。」
「僕相手に交渉できると思うなヨ?この下衆野郎。」
「いてえ・・・。痛てえええ。」
「おしゃべりの時間だヨ?もっとおしゃべりしようネ。」
左手で矢を抜こうとする。が。
左手には2本刺さっていた。
「たのむ。助けてくれ。」
「ココ。頭のココ。」自身の頭、指で位置を示す。
「な、なんだよ。」
「まあ、見てナって。」と言いながら、声が出せない男の頭に矢を撃ちこむ。
「ひっ!」
そして、頬から矢を無造作に引っこ抜く。
「ひいい!」
抜かれた男の口からは声も出ない。ただあんぐりとクチを開けたまま、
ふらふらと前後に揺れるようにして、倒れるでもなく、荒い息を漏らすだけだ。
恐怖のあまり、声もない。
「こうなりタいかナ?」
「い、イヤだ・・・。」
「じゃあ、交換ダ。痛みがないようニ殺しテやる。その代わり、話セ。」
「オイ、キーファー。」
「ああ、どうだった?」
「始末しタ。」
「ショコラは?」
「あア、あのトカゲか。さア?死んではなかったネ。」
「そうか・・。」
「じゃア、今かラ言うもの、準備しロ。」
「へ?」
「今すぐ、ダ。」
パールからの伝心が途絶える。
ん?
なんじゃこりゃ・・。
氷の矢。
3本。
それを収納できるもの。
今から、か?というか、こんなもの、どうやって?とりあえず、知己の魔道士に声をかけて回る。
「準備、できたカ?」
戻ってきた黒髪の少女。
黒いチュニックに、黒いブーツ。
そして、白磁のような面貌に、チュニックとブーツからの素足。
黒と白のコントラストが恐ろしくバランスがいいが、逆にそれが本当に人形みたいな印象をあたえる。
「ああ、でも、かなり形はいびつになっちまった、と職人が言ってたよ。ちゃんと飛ぶのか?ってね。」
銀髪の青年キーファー。彼女のマネジメント役。
入れ物は?と重ねて問う少女にも、こちらもそんなには持たないかも。と。
「判っタ。行ってくル。」
「え?おい?」
青年の問いは無視して走り出す。
逃げられる。今でなければ。
先の内偵での話、始末した男の話。
総合すれば、今夜しかない。
もう陽も暮れた。狙撃するには難しい、と相手も考えているだろう。
が。
「呪眼」があれば、関係ない。
この「眼」で視れば、そこで終わる。
矢が溶けるまでに完遂しなければならない。聞いた情報で実家ではなく、別宅に行く。
「アイツか。」
窓越しに見えるエレゼンの男。
まずは・・。
男が出る前に試さなければならないことがある。
氷の矢。魔法で作った氷を職人に削らせてあつらえたものだ。
入れ物も矢筒だが、フタがついて、毛布でくるんである。
魔法の氷ゆえに溶けるのが遅いが、なにせ細い。
しかも、矢羽まで氷だ。どれだけの精度で射撃できるか試さなければ。
3本しか用意できなかったが、おそらく足りるだろう。作戦としては。
氷の矢をつがえる。
玄関に居る警備兵に狙いを定め、撃ちこむ。
「ぐあ!」小さい悲鳴のあと、何が起きたのかわからず、次の巨大な矢が即頭部を貫通する。
「チ。やっぱリ、遠距離は無理か・・。」
つがえた右手がひんやりと冷え切っているのも、そのせいかもしれない。
このまま、別宅に走る。
頭を貫通した矢を引っこ抜く。
脳髄がたれ流れ出して、石畳に染みを作りだす。
残り2本。
証拠を残すわけにはいかない。そのための「氷の矢」なのだ。
だが。
この「眼」で視たのだ。逃げ切れはしない。
「スタッブ(暗殺)してやル。」小声でそう自分に言い聞かせる。
しばらくすると、別宅内で動きがあったらしい。
もう一度、スナイピングできる位置まで戻る。
この距離か。先ほどの射撃で把握できた。
どうした?おい?と、主人が玄関の護衛を呼んでいる。
そして、その半身がドアから出てくるのが「視えた」。
放つ。
胸に命中。
「ハートショット、OK。」
ついで2発目。
即頭部に氷の矢が命中した。
「ヘッドショット、OK。」
「終わりだネ。」
くず折れた男は、護衛に重なるようになって倒れた。
翌日、この政府高官が何者かによって殺害されたと、話題になったが、肝心の殺害に使われた凶器が無い、
との事で大きく「ナゾの死」とされた。魔法による狙撃でもなければ、弓矢や剣でもない。
ただ、胸から血が流れていた、それだけだ。
「ふうン。」
黒髪の少女は、特に気にするでもなく、ゴシップ紙を放り投げ、ゆっくりと眠りにつこうとしていた。
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氷をつかった凶器・・・と言うとなぜか名探偵コ○ンを思い出します・・・w
それにしてもフレラーネは怖すぎですw
マユママの方が色んな意味で恐ろしいけどw
Jonathan Jones (Masamune) 2012年10月26日 01:05
>ジョジョさん、フネラーレですw
彼女が感情の起伏をみせるのは恋人の前だけで、基本的に無感情です。
荒事その他は、海賊時代から馴れているので、こうなっていますw
あと、リムサからの密偵というか、二重スパイでもあるので、情報収集なんかも実はひっそりとやっていますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月26日 05:23
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あ、追記。
氷の凶器はかなり昔からのミステリで使用されていますw
サウナで、氷のナイフで殺害ですとか。
某、体は大人、頭脳は子供の迷ニート、カナン氏はどうでしょう?w
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月26日 05:56
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フレグモーネとゆう競走馬の疾病といつも混同してしまいます(´・ω・`)
許してねフネラーレさん(´・ω・`)
たしけてえええええええええええええええええ
Jonathan Jones (Masamune) 2012年10月27日 02:20
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>ジョジョォォォ!
競馬ですかw
そのうち射ぬかれますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月27日 06:00