「んー。どうする?」
「カナル、どうしたい?」
「イーリス、赤でしょ?」
カーラインカフェ。
おそらく、数日内には行われるであろう、婚儀のパーティに合わせる為に、
給仕の少女達はドレスのデザインで悩み倒している。
カフェの女主人ミューヌからの好意により、
ドレスの心配が無くなった少女達は、歯止めという単語がなくなってきた。
まず、ミューヌがオフホワイトのドレスを見せびらかした上に、新婦は間違いなく白だ。
こうなると、当たり前だが、色がかぶるなんてありえない。
白系はない。
赤髪のイーリスが赤いドレスを選択するのは当たり前かといえる。
デザインは好きにすればいいだろうが、色でかぶりたくない。
しかもこのヒューランの少女は、男性に対して特に積極的だ。
同年代の少女の婚礼に、刺激が強かったのだろう。
「・・・。青・・・・。かな・・・。」
薄い金髪の少女、カナーリエンフォーゲル。仲間内や、常連からは「カナル」で通っているが。
当の本人は男の子みたいでイヤだと言う。
エレゼンの少女で妖精めいた見た目で実は影で人気が高い。
色白な肌と、淡い真っ直ぐな金髪で、おそらく青いドレスは似合うだろう。
「んー・・・。」
最後の一人。
ミコッテの少女。彼女もそれなりに人気はあるのだが・・・。
「そうなると・・・。」
パニックになるとミコッテ訛りが出るあたりが実は密かな人気なのだが、
本人は気にしていない、というか、気づいていない。そして、それがイイらしい。
「そうだねえ。そうなると・・。黄色?」
「ないない。」「うん。」「だね。」「ちょっと。」「それは。」「いやいや。」
店内のほぼ全てから否定の声が。
「じゃあ、何がいいのよー!」と半ギレ。
そうね、オーアだと・・・。と。お洒落大好きなイーリスが。
黒髪を短く、それもクセ毛。こうなると・・・。
肌はそれなりに白いし・・・。
「ピンクにしよう!」と切り出す!
「うにゃあああ!!ピンクぅ!!!!!」
「肩はないほうがいいね、あと、タイトなライン。裾は...このくらいかしら。」とヒザ上で測ってくる。
「ちょ・・・イーリス?」
「こんなところかしら。たぶん、レンタル帳みればあると思うから、コレで決定。」
「うあ・・。」
「あ、じゃあ、わたしの青いドレスはどれがいいかしら?」
「カナルはねー・・・線がほそいからー・・。」
「む。」
「こういうのはどうかなー?」
カタログから見だしたのは、ふわふわした妖精のようなドレス。
「あ、かわいい。いいね。」
「でしょー!」
少女二人揃って、さすがイーリス。
ファッションは任せます。と言わんばかりだ。
にこやかに見守っている主人、ミューヌ。
「はいはい、そろそろ開店だよ。それにアイツラも来るかもしれないから。」
はあーい。