グリダニアの早朝。
というか。
明け方に近い。
そもそも、森の街グリダニアは陽が上っても、木々に囲まれているせいで朝が遅い。
そのため、住人達もかなりのんびりと生活しているのがほとんど。
少女はそんな明け方に起こされて、昨夜の労働の疲れもとれていない、と自分に言い聞かせた。
「僕は眠イ。」
長い黒髪を枕に散らばらせ、一度は起きたものの、もう一度眠りを貪るために倒れこむ。
マネジメントをしている青年が何やら言っているが、気にしない。
が。
「ペイ(給料)がアップ」の単語には少し惹かれたので、がばっと起き上がる。
銀髪の青年キーファー。見た目は冴えないが、色々冴えない。
こちらをあまり見ない青年もこの時はさすがに顔を向ける。
(ンー・・・3人ぶっ殺せばいいのネ・・・)
説明を聞きいて、ぽりぽりっと頭をかく。
自身を見やり、うン。
肌が透けて見えるような薄い素材の寝着。
よシ。
一気に脱ぐ。
白い裸身がさらされる。
小振りな胸だが、全体的には人形のように綺麗にまとまっている。
白磁のような肌もそう思わせるのかもしれない。
それに長い真っ直ぐな黒髪もあいまって、等身大の人形のような気もする。
「あ、見たネ?」
銀髪の青年に。
もちろん確信犯でやっているので、見られたところで恥ずかしくもなんともない。
寝台の上で上半身を裸にしておいてなんだが、この青年とはこういう関係だ。
もちろん、肉体的な関係は一切ないが・・。
「ペイ上げろヨ。」
見物料、というわけだ。
青年はうなだれながらも、ペイ分の眼福だけはとしっかり見てくるのでシーツを纏う。
「はぁ・・。」とため息が聞こえたが、気にしない。
「着替えるかラ、出ていきナ。」
「はぁい・・・・。」とションボリな青年。
寝台から降りると、まずは姿見の横にある水桶で顔を洗う。
「うーン。寝ぼけ顔だナ・・・。」
このサイズの鏡が置いてあるという時点で、彼女の家はちょっとした上級なのだが。
「ペイアップ、か。いい話だネ。」
顔がほころぶ。
さて、水浴びもしたいところだが、この時間にわざわざと言うコトは、急ぎだろう。
もう一度内容を頭で繰り返す。
園芸師ギルドのメンバー3人の殺害。
ドコのダレだか、もう一度確認しなければならない。街を出てからがいいのか、そうでないのか。
とりあえず、仕事用の装備に取り掛かる。
いつもの黒いチュニック。これは明け方だと逆に目立つだろう・・。
「汗臭いから洗濯しないとネ・・・。」
ということで、草色のチュニックを取り出す。
ブーツや、その他。
そして、愛用の大弓「コフィンメイカー」名前は彼女がつけた、母の形見でもある。
「よシ。」
姿見で一応の確認をする。
バン。
ドアを開けて、マネジメントの青年キーファーから、事の詳細を尋ねる。
「ああ、コッチが似顔絵です。それと、できるだけ街の外がいいんですが、逃げられたら意味がないので、臨機応変ってコトで。」
「ララフェル二人に、ヒューラン一人、か・・・。」
「はい、主犯格はこのヒューランの男なので確実に仕留めてください。」
「まとめて居るのカ?」
「どうでしょう・・。普段は普通に園芸をしているので、一般的な家にいるかもしれません。」
「なンだよ、そこ重要だロ。」
「すみません・・・。」
「別々に逃げられたら、追いかけるノ大変ダろ?」
「はい。ですので、鬼哭隊に連絡して、出口の封鎖をしています。
あえて東側だけ空けていますので、抜けるのならベントブランチ方面だけですね。」
「移動術式は?」
「はい、彼らはグリダニアから出たことがほとんどありません。なので、近辺のキャンプ、そうですね。
エメラルド・モスくらいなら飛べるかもしれませんが。おそらく一般的なギャザラーとして、街から逃亡するでしょう。」
「ナルホドネ。」
「まずは探し出しましょう。ぼくも手伝います。」
「ま、一回でも見れば逃げれないからネ。」
「呪眼」
一度視れば、意思で切らない限り、永遠にどこにいるかが分かる上に、
ドコを狙えばいいのか、狙いたい場所を精密に教えてくれる能力。「ターゲット」
さらに、暗闇だろうが、閃光の中だろうが、普段と同じ以上の視力。「ノクトアイ」
視覚に入る限り、この「眼」からは逃れる事が出来ない。
彼女自身は知らない、もしくは知りたくないだろうが、知ってしまう能力。
「イージスシステム」
全ての魔力と引き換えに、ターゲットされた相手に、不可避の魔力の矢を撃ち放つ。
それは数百人だろうが、お構いナシに放たれる、絶対死の矢。
代償として、魔力を使い切った体は「眼」に喰われる。
汚泥のように成り果てるか、干からびて炭のようになるかは、使ってみてのお楽しみ、というわけだが。
とはいうものの・・。ギルドはこんな時間でも、というよりは、この時間が通常営業の開始という、なんとも早い時間。
「すみません、こういう人、今日は来てません?」
似顔絵を見せて、受付に聞く銀髪の青年。
「さあ?多分、みてないね。」
「すみませんでしたー。」と去っていく。
その頃少女は東出口付近で鬼哭隊の隊員に聞いていたが、情報がなかった。
「あー。。。。。。面倒だナ・・。帰って寝たいヨ。・・・・。」
そろそろ本格的に朝になる・・・・