神勇隊。
グリダニアの誇る、森の守護者。
鬼哭隊が街の防衛を担い、神勇隊は森の敵を駆逐する。
かつて、ウルダハをはじめとした連合軍をすら、撃退せしめたほどだ。
隊の長であるリュウィンは、とある一室で・・。
「今回のターゲット、だ。」
「はい・・・。」
「罪状は、薬物の取引。非常に常習性のあるもので、最後には精神が崩壊するようなシロモノだ。」
「見過ごせませんな。しかし鬼哭隊向けなのでは?」
「鬼哭隊の隊長だと、たしかに怒り心頭だろうが、暗殺、という手段にも怒り心頭だろう。
捕まえて、獄舎送りにするだろうが、相手もそれなりに大物なのでな。おそらく大金を払ってまたすぐに出てくるだろう。
そうなれば、また繰り返される。それも隠し方がより巧妙になってな。」
「なるほど。」
「というわけで、葬儀屋の出番ということだ。」
「はい。」
「ただ街中でさすがに矢で射殺されてる、というのはいかんともしがたい。なんとか森の中に誘導したいが・・。」
「は・・。」
「さすがにこちらからは警戒されすぎて、なんともできない。」
「はい。」
「というわけで、彼女には「客」を装って、外に連れ出してもらいたい。」
「一人、でですか?」
「そうなるな。複数だと警戒されるし、なにより不自然だろう?」
「護衛に一人、つけます。」
「それなら、見つからないようにすべきだが、相手も恐らく2,3人だろう。そのくらい、彼女ならどうという事もあるまい。」
「は。(ようするに、他の隊士達には知られたくない・・か。)」
「そして、これがその似顔絵と名前。場所は・・おそらく売人そのものがいるんじゃなく、手駒だろう。
護衛も兼ねているかもしれん。それはこっちだ。符丁も書いてあるから、それで呼び出せるはずだ。
鬼哭隊にも連絡して、森に連れ出しやすいような配置にしておく。以上だ。」
「分かりました。」
昼過ぎ、リムサ・ロミンサだと、そろそろお茶の時間だ。
「んー!よく寝た。」
黒髪の少女は、大きく伸びをして、あくびをかみころす。
昨夜は最愛の人との伝心ができて、ご満悦である。
枕元にある箱を覗くと、クッキーが残り1枚だった。
とりあえず、クチに放り込むと水浴びに浴場に行く。
神勇隊の宿舎、だが少し離れた一軒家。
彼女のために用意されたものだが、一通りのものが揃っている。
他の隊士が見れば、おそらくはうらやましがる事間違いない。
なにせ、宿のように並んだ部屋に二人一部屋なのだから。もちろん浴場などは共用だ。
だが、逆に言えば隔離されている、ともいえる。
水浴びを終え、部屋に戻って髪を乾かしているとノックがする。
そして、このノックの音は符丁になっている。仕事。
「いいよ。」
タオルだけで体を覆っていながら、受付役の青年を部屋に招きいれる。
「はい。」
入ってきた青年はいつもの事とはいえ、ぎょっとしながら。
「キーファー、僕の裸見たデショ?給料上乗せネ。」
「またいつもの手段ですか・・・。それに、タオル巻いてるじゃないですか・・。」
はらり。
無造作にタオルを解く。白い裸身があらわれる。
「ほラ、見た。」
「わあああああ!」さすがに、このシーンは見た事が無い。あわてて後ろを向く。
「で?」
「こちらの方に書いてあります。」と2枚の羊皮紙を振り向かずに差し出す。
「なんだ、ウブなヤツだナ。」と。
「いいから、タオルでもなんでも隠してください!」
「しょうがないネ・・。」
「フン、下衆なヤツラだな・・・・。」タオルを巻きながら。
「ええ、なので貴女に。」
「で、誘い出せってか・・。」
「はい・・・その・・・・護衛はだせませんので・・。」
「お気をつけてくださいッてカ。」
「はい。」
「最近、ムチャが増えてきたナ・・。」
「すみません・・・。」
「まあ、いいサ。なんとかする。」
「はい。お願いします。」
「給料増やせヨ?」
「はい・・・・。」
すごすごと帰っていく青年を尻目に。
「まーた、お仕事ネ。どうやって呼び出すかナ・・。」
思索にふける少女。