351書き物。少女達の時間の過ごし方6

うららかな午後。

グリダニアの木陰はきもちがよすぎる。

黒髪のミコッテの少女、ミュ・アハートは、いつもの昼寝を公園で堪能していた。

子供達の声も聞こえるが、いつもの子守唄だ。

たまに何かが飛んできて、飛び起きるが。

「ん・・・・。」
かすかに目覚める。日差しの加減からすれば、もう少し寝れそうだ。

「ん・・む・・・。」

もう一度眠りを貪る。




そして。
体が揺さぶられ。
「ちょっと!オーア!起きて!起きなさい!」
ん?

目を開けると、同僚の金髪のエレゼンの少女、カナルと目が合う。
「にゃ・・・・?」
「にゃ、じゃなーい!交代の時間、すぎちゃってるわよ!」
「え?にゃ?」
「まったくもう。」
「ごめんにゃ・・・。」
すでに陽は暮れそうになっている。
彼女にしては珍しい事ではあるのだが。
それもあって、カナルが探しに来たのだが。

ほとんど宿が荷物置き場のオーアは、だいたいどこかの公園で昼寝をして、カフェに出勤している。
この、ドコで寝ているかを知っているのは本人のみだけに、カナルはそうとう走り回っただろう。
「まったく。誰かに拉致されても知らないわよ?」
「大丈夫にゃー。」
「まあ、鬼哭隊がいるからね・・・。あ。そうそう。例の人。来てるから。要チェックね。それじゃ。」
「おつかれさまにゃー。」


カフェに着き、主人ミューヌにひとしきり謝ってから給仕服に着替える。
「カナルから聞いた?」
とミューヌ。
「あぁ、はい。」
「でね、ちょっと気をつけてて欲しいのだけれど、今日はその。お仕置きの助っ人というか・・。」
「あ。」
店内にはララフェルが二人。
一人はテーブルで、もう一人はカウンター。
そろそろ夕食時だというのに、二人とは。
などと考えながら、カウンターの少女?のララフェルを見やる。
食後?だろうか。お茶をすすりながらのんびりとしている。
この人・・・・・たしか魔道士だったな・・。
「ミュ?」
「はい?」
「やばそうな気配を感じたら、一声かけて。」真剣な女主人。
「は、はい。」
「よろしくねー。」とティーカップを持ち上げながらララフェル。
「はい!」
ええと、たしか・・えらっちさん?
お客さんの名前をあだ名で覚えるのもどうかと思ったが、ちゃんと紹介されたわけじゃなく、会話のなかで汲み取ったんだし・・・。



しかして、時は過ぎ・・・その時が。


ヒューランの金髪の男性が店に入ろうとしたその瞬間。
「いら・・」あの男だ・・。組み付かれ、魔法で吹っ飛ばされた・・・。ってもしかしてまた?
ララフェルの老人が動いた。素早い動き。
「ちょっと!」
指示どうりに一声。ミューヌはたまたまキッチンに入っていた。
「まーかせて!」

カウンターの少女は振り返りざま、「いかづち。」と言った、気がする。
青紫の雷光がほとばしり、逃げ去ろうとするララフェルに突き刺さろうとしたが、すんでのところのステップでかわされ、床を焼く。
「右手に雷光あれ。」
かわされるのを承知のうえでの牽制だったのか、次は逃げた先に突如上から振り落ちる雷撃がララフェルに襲い掛かる。

バチィ!

ものすごい音に耳を手で覆う。
恐る恐る目を開けると・・・
もうひと言聞こえてきた。

「我が手に、雷の誉れあれ。」

杖の一振り。

耳をつんざくような爆音と目を瞑っていてもわかるほどの光。


がらんごろん、とテーブルが転がる音もきこえてきた・・。

恐る恐るもう一度目を開ける。

床、というか、空気そのものが焼ける匂いがした。

「あちゃあ・・。」あまりの音にミューヌが飛び出してきて。

ララフェルの少女は「あちゃ?やりすぎた?」とケロリ。
「まあ、いいわ。持ってるときは払いがいいから。」
ミューヌのこんな顔を見るのは数回目だが・・。
前回は・・・さっきの男に組み敷かれた時だっけ・・。
って?あれ?居ない?

いっしょに吹っ飛ばされたか・・・。ま、いっか。


「ま、お仕置きだしね。」これまたケロリと言い放ち。
「お代、おいてくわね。」と。
「あ、あり・・。」
「ちょっと後始末。」ララフェルはさっと椅子から飛び降り、駆け出していく。
「いってらっしゃーい。」としか、言い様がなかった・・・。


「逃げられたか。」
と、ひと言。

ジジジジジと、魔法の余韻の残る杖を一振りすると、駆け出していく。

「次はフレアにしようかな。」と、限りなく恐ろしいひと言を残しながら。


店内はテーブルがいくつかひっくり返り、空気はなんか焦げ臭い。玄関あたりの床は張替えが必要だろう。
ステンドグラスが割れなかっただけでもよかったかもしれない。
いつもの通り、イーリスは遅刻しているが、かえってよかったかもしれない。
「(えらっちさん?)やりすぎにゃあ・・・。」
「そうね・・・。」
ミューヌも賛同する。


とりあえず、テーブルを・・キッチンスタッフにも手伝ってもらってすぐに直す。

あ。


「いらっしゃいませー!」
満面の笑みで4人の冒険者をテーブルに案内する。

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