300書き物。少年と少女の始点。7

「なあ。」
「なンだよ?」

「ここって、どこなんだ?」
「リムサ・ロミンサ。知らないのか?」

クセ毛で金髪の少年は、周りを見渡す。
エーテライトといわれる蒼い魔法石のすぐ近く。
さっきまで膝枕だったのだが、石畳に後頭部をゆだねるハメになり、キョロキョロと見渡していた。

そして、膝枕から少年を突き落とした黒髪の少女は、無愛想に、もとより無愛想ではあるが。その質問に答えていた。

「初めて来たよ。で、だ。」
「あン?」
「こういったらなんだけど、下着が丸見えだぞ?」
「死ヌか?おい、死んでみるか?」
慌ててチュニックの裾を押さえる。
黒いチュニックの裾からは白い脚が見えているが、先ほどの膝枕の際にそんな事は気にもならなかったらしい。

「さて・・。」少年は立ち上がり、鎧の胸元に手をやる。
豪快に切り裂かれた鎧。そして、深紅に染められてしまった鎧を見て。
「まずは鎧の修理からだな・・。」
「しかしスゴいな。あの斬撃は。お前、よく耐えたナ。」
「おかげさまでね。」
「それじゃあ、僕はちょっと行くところがある。街の観光をするなら誰か他を当たってくれ。」
「ああ。わかった。」
「じゃネ。」
「そうそう。ありがとう。」少年は頭を下げる。
「ちょッ!ヤメろよ。そういうの。」少女の頬が少し赤らむ。
「じゃあ。」
少年はそのままどこかに歩いていく。

「ち、調子狂うゼ。」黒髪の少女は酒場に足を運ぶ。


「で?」
「あんな化け物みたいなヤツ、僕でもどうかとおもうネ。」
酒場「溺れた海豚亭」
そのカウンターにて、ヒゲの主人と向かい合う。
「ウルスリ、またドえらい依頼をしたもんだな?」
「そうでしょうか?」エレゼンの女性は冷静だ。
「イッペン、やってこいよ。アレに。10秒耐えたらホメてやるよ。」
「それはそうと、少年はどうした?」
「どっかに行ったヨ。」
「エーテ前での絶叫、なかなか評判だったようだが。」
「!?」
「血まみれの少年を抱きかかえて、黒髪の美少女が泣き叫ぶ、って構図はなかなか無いからな。」
「ぐ・・・・。あ・・・。」
少女はこめかみを押さえながら、何かに耐えている・・・。
「案外、お前さん優しいんだな。」
「ウルサイ。」
「しかしなんだな。カルヴァランも見る目があるなあ。」
「ウルサイ。」

「えーと、酒場ってここでいい・・。って。あ。」
「よう!いらっしゃい!」
少年にヒゲのマスターが声をかける。
「噂の彼じゃないか。」
長い黒髪の背中を見た少年が固まっている所に。
「フン。僕はもう行くよ。」
少年には目もくれずに、歩いていくが。
不意に手を掴まれ。
「デザートくらい、食べていけば?」少年の提案に。
「バデロン、今日のオススメ、なンだよ?」
「そうさな、プディングかな。ウルスリ特製だ。」
「じゃア、食べていく。そこの坊主のオゴリだし。」
「どうぞ。」






「ねえ。母さん?」
「どうしたの?いきなり。」
母子のパールを使った会話。

「リムサ関係でさ、なんかキナ臭い話しとかあったりする?」
「ん?話が読めないけど?」
「その・・・。」

グリダニアのカフェの上。「宿り木」
その一室にて。
ブルーグレイの髪の少女は、寝台に腰をかけながらパールに念を送る。

「なによ?」グレイの髪を後ろで束ねた女性、レティシア。少女の母であり、かつてはグリダニアの密偵として各地に足を運んでいた。
もちろん、当時のコネも残っているので、情報には鋭い。

「や、その・・。」
「例の彼?」
「あ・・。」
「アイツはやめとけって、言ったでしょ?」
「う・・・。」
「しっかりフラれた、って聞いたわよ。」
「!!!???」
「まあ、どうしても、っていうなら仕方ないけど。惚れた者の弱み、かしら。」
「んぐぐぐぐ・・・。」
「そういえば・・。さっきリムサで見かけたわよ。」
「えええ?」
「彼、ちょっとした有名人になったかもね。」
「ど、どういうこと?」
「エーテライト前で死に掛けてたみたいね。」
「はぁ?」
「直接見たわけじゃないけど。例の「呪眼」に抱きかかえられてたんだって。」
「はああ?」
「助けて欲しい!って、あの娘が泣き叫んでたそうよ。今度お礼の一つでも言っておいたら?」
「さらに、はぁああ???」
「ま、そういうコトらしいわ。キナ臭い、ってのはおそらくコレの事じゃないの?」
「う・・。リムサに行こうかしら・・。」
「やめておき。心配しなくてもあの娘には立派な彼氏がいるからね。」
「ヴーーーー・・・。」
「ま、そのうち情報が入ってくるから。今日はもう寝なさい。」
「・・・はーい・・。」

パールでの会話を終え。

「なーにやってんだよ・・あいつ・・。」少女は枕に顔を埋める。

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