264書き物。とある双子の日記XIX

少女は。

金髪を。


ふわりとした風が舞う。その度に髪に手をやってきた。
ふわふわした金髪は、その緩やかな風にさえ巻き上げられるように乱れてしまう。
「どうして?」
同じく金髪の両親は、ふわふわしたというわけでもない。双子の兄もクセっ毛だが、こんなにはふわふわとしていない。
「そう?かわいいわよ。」「やだ!」「しょうがないわね。かわいいのに。わかったわ。明日、いっしょに市場に行きましょう。」

幼少の頃、母にねだって買ってもらった髪飾りは、カバンの中に。
当時の自分が選んだ色は、うすい黄色だった。よくよく考えると、金髪の中に埋もれてしまって目立たない。
しかしながら、そんな事には気がつかなかった。


「なあ、あんた。頭痛いのか?ポーションあるけど飲むか?」
目の前の黒髪の少女は、腰のポーチから何かを出そうとしたが。
「あ、違うの。ちょっと、ついクセで。」
真っ赤なカチューシャから手をのける。
「そうか?」
怪訝そうな黒髪の少女はポーチから手をどける。


キャンプ・ナインアイビー。
黒衣森の東にあるキャンプ。ここで知り合った、少し変わった?黒髪の少女のペースに少しついていけない。
そこに。

さあああ。

緩やかな風が通り過ぎ、もう一度カチューシャを押さえる。
目の前の少女は、気にすることも無く、腰まで伸ばした髪を風にゆだねる。
風に流された黒髪は、さらっとまた少女の背後に戻るが。
切り損ねたのか、わざとなのか真っ直ぐではなく斜めに切りそろえた前髪。
その中に、ひと房。銀色の髪が混じっているのが一瞬見えた。

「ん?」自身の肩くらいまでの身長の少女が覗き込んでくる。

「あ、いや。その。うらやましいなあ、なんて。」
いきなりの質問にしどろもどろに答えてしまう。

「んん?どこがだ?僕はそれほど恵まれてないんだがな。
大体、身長からしてあんたの方が高いだろう?胸だって僕より大きいしな。
見たところ、僕より年下なのにうらやましい、と言われてもナ。」

「え?そうなの?私・・。18なんだけど・・。」蒼い瞳は驚きに満ちている。

「ほらな。僕は19だ。」大きな弓を背に戻し、長い黒髪をかき上げる。
花飾りのいくつかがその際に髪から離れて、風に舞う。

「まあ、いい。マルグリット・・、ああ、もっと呼び易いのがいいな。マルでいいか?」
「は?」
「マル、もう用事はすんだんだろ?」
「え?ええ・・・。多分。」
「そうか、じゃあ、テレポってわかるか?」
「・・。その、移動術式、だったっけ?」
「わかってるなら話は早い。グリダニアまで行けるよな?ちょっとばっかし、僕を連れて行ってくれ。」
「???なんで?どうして?」
「アニマ、ってわかるか?わかるよな?そいつを僕は今使い果たしててだ。
まあ、さっきのレクチャー代だと思えばいい。ついでに神勇隊にも紹介してやってもいい。今はそこのやっかいになってるからな。」
「はぁ。わかりました。その。術式の使いかたって?」
「さっき、頭ン中に声が聞こえただろ?アレのトコロで。」後ろを指差す。
「はい。」
「アレと一緒だよ、目瞑って行きたい場所を願えばいい。頭ン中にイメージすれば、次に目を開ければグリダニアって寸法だ。
ああ、一応手を繋いでおくぜ。置いてけぼりにされたんじゃ、意味がねえし。」
「はい・・。」


少女の手を握りながら、どうしてこうなったのか。カチューシャに手をあてて目を瞑る。

 
まぶたの裏に蒼い光が見えた気がした。
フネラーレと名乗った少女の手に、つい力がこもってしまう。


「いってーなー。握りすぎだろ。まあ、ありがとーな。」
グリダニア。

「あ、はい。その。」

この少女とは腐れ縁になりそうな気がする・・。
「とりあえず、カフェ、かなあ。」
ふわふわした金髪も少し湯浴みしないと。
「そか。僕は神勇隊に居る。まあ、いつでもおいでよ。」

「あ、はい。」

少女はカフェに向かう。


----------コメント----------

初対面の人といきなり乳をくらべあうとは・・・。
恐るべし!なんじゃよ~w
Syakunage Ise (Hyperion) 2012年08月03日 09:13

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>しゃくなげさん、いらっしゃいw
女の子同士だと、よくありますw声に出してはなかなか言いませんがw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年08月03日 10:05

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