210書き物。幻術士の一幕。

エレゼンの少年、アルフレートは幻術士ギルドに身を置いていた。

グリダニア。
緑生い茂る精霊の加護の街。
この街において、軍閥と同様に権力はあるが、どちらかと言えば隠遁した賢者のようなギルド。

「お師さん!」グレイの髪を長く伸ばした少女が赤いローブのミコッテに付いていく。

(おれも弟子なんだけど。)なんとなく疎外感を覚えたが、兄弟子としては我慢するしかない。そう考える。

「ん?」いつもの光景ではあったが、少し違和感があった。
少女がすがり付いている。
「本当?」と少女。
「帰ってからちゃんと話をする。」と師。

(なんだ?)
「アルフレート」と呼びかけられ、「はい!師!」
「しばらくこの子の面倒をみてやってくれ。」「はい?」「いいから。」


パールから伝心が来る。
「実は私はそろそろギルド、というかグリダニアを離れることになる。もう戻ることは無いだろう。」
「え?そんな?」
「仕方ない。世の中はそういうものだ。」
「シ・ヴェテックト師!」
「お前はよく出来た、とはいえないが私の愛すべき弟子だ。このまま励め。」
「そんな・・・。」
エレゼンの少年は少女がローブに引っ付いてる光景を見ながら・・・。



あれから何年だろうか?
冒険者として身を立て、伴侶を得て、娘までいる。

そして、目の前の少女はあのときの兄弟弟子の面影、どころか、生き写しにしか見えない。
「あのー、その。これから双蛇党の作戦に行くんです。ソーサラーの方が足らないので、ご一緒してもらえませんか?」
少女の誘いは偶然だったが。

願っても無い。心の中で偶然ではなく必然、と言う言葉もそういえばあるんだったな、と付け足す。

「わかった、お嬢さん。俺はアルフレート。君は?」
「あ、すみません自己紹介が遅れまして。マユです。」
「そうか、ご両親はご健勝かな?」
「はい?」
「いや、忘れてくれ。よろしく。」


腐れ縁、とでもいうのか・・。まさか、あの子の娘だとは・・。
ということは、兄弟子としてはしっかりと見ていなくてはな。
レティシア、君の勇名は響いているが、この子に負わせてもいいのかな?



一戦の後に祝勝会を開いて(まだ危ういが、私が気をもむところは少なそうだな。
血は争えん、か。レティシアとそっくりだな。後はパートナー次第か。)

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