196書き物。幕間。(リムサ・ロミンサ)

「あーあ。最近またぞろ物騒だな?ウルスリ。」
「そうですね。わたしのベッドも気をつけなければ。」
「そこかよっ!」
「そこは、「俺が守ってやる」とか言わないあたりがマスターらしいですね。」


海洋貿易国家でもある、リムサ・ロミンサ。
「でもある」の裏は、海賊国家。
荒くれ者の街でもあり、風光明媚な街でもある。
つまりは、昼と夜の使い分けが上手というわけで、
そういう意味ではウルダハよりは「初心者」がハマりやすい。
が、ウルダハの方がどっぷり浸かれる分、タチが悪いのだが。夜の面で。


「あー、つかれた。おい。バデロン。ラム。」

「溺れた海豚亭」リムサ・ロミンサ最大の酒場にして、冒険者ギルドのある店。

主人バデロンと、目の前の女性。
グレイの長い髪を後ろに束ね、革鎧に身を包む、見た目は少女のような女性。
本性を知らなければ、ここの酒場の誰もが声をかけるだろう。そのくらいには魅力的だ。
(まあ、俺はハナからヤバイって知ってるからな)心中に留めておく。

「魔女さん、いきなりだね。」ストレートに言ってみる。
「仕事すると疲れんの。」と、女性。
「旦那はもう少し疲れてそうだけどなあ?」と、「話題」がドコなのかを探ってみる。
「アレは好きでやってるからいいのよ。」と表情は読めない。
ラムを注ぎながら、「というと?なにで?」
「娘の保護。」ウンザリした表情。
「親バカ?」素直な感想。
「焚き火、してみる?」
見つめる目は本気だ。

「レティさん。どうしたんです?」と横にいたエレゼンの女性が声をかける。
「ウルスリ。ごめん。今からソイツをキャンドルにして祭りするから。」
「え!」意味が解らない。
「ああ、ちょっとばっかし燃えてもらって、パーティー用のキャンドルに、って。」
「ちょ、レティさん?」
すでにヒゲの主人は逃げ出している。

「何かあったんです?」とウルスリ。
「まあ、いろいろ。」とレティシア。
「でも、あの人にあたるのはよしてください。」
「わかった。悪かったわ。」
「相談にはいつでもどうぞ。」
「そうね、ひと一人消し炭にしてしまって、さらに犯人追い込んで。ロクでもない話しね。」
「お疲れなんですね。お酒に浸るのも悪くは無いですよ。」
「天魔の魔女、かぁ。名前ほどにはダメなのかもね。」
「この酒場では禁句ですよ、それ。」微笑むエレゼンの女性


「そうね。ウィッチケイオスの名はハリボテだろうがなんだろうが、
使えるものは使わないとね。」ラムを一気にあおるレティシア。

「そうでなきゃ。」と満面の笑みのウルスリ。

酒場は盛況だ。

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