コンコン。
木の板を挟んで少女とやりあう合図。
難破船から救い出した少女の居場所はすぐ横の荷物置き場だ。
普段は横についているが、寝るときばかりはさすがに別の部屋。
が。
海賊船ゆえに荒くれ者が多い。
なので、寝る前や起きるときにこうやって合図をしているのだが。
ガンガンガン!
慌てて外に出る。
隣りの部屋はカギがかけてある。
そのためか、男が3人ほどドアを叩いていて。
中からは悲鳴が聞こえている。
「おーい、お前らナニしてんだ?」と声をかけたが、酔っているのか気にも留めないようだ。
(腕力では勝てないしな、はて・・?)
考えるが答えは出ない。
「よーう、クソ坊主。なにかの祭りか?」
現れたのは坊主頭。クソ坊主とはよく言ったものだ。
「で?このクズをどっかにやりゃあ、祭りが終わりだな。」
「大将。頼みます。」
「え!」「マイスター?」「そ、そんな!」
有無を言わさず放り出された後に。
「なんかやべえぞ。」とマイスター。
「やばいのは今、大将が済ませたんですが?」
「ちげぇよ。もっとやばそうだ。」
「ん・・。確かに。っていうか、この航路やばいというか、
読まれてますよね?例の調査員が親切なら2,3日後の昼でしょうが・・。今夜、もありえますね?」
「そこまでは俺にもわからんが。」
「あの・・・。」
部屋から出てくる少女。
「悪かった。今度からは俺の部屋で寝るといい。」
優しく声をかけてやる。
「お前、どうするんだ?」斧の名人が告げてくる。
「船降りて、酒場でもやろうかと。」と無精ヒゲの青年。
「そうか、俺もどうしようかとな。」
「え、大将なんかあるんです?」
「こう見えても料理はそれなりに出来るんだ。お前、ここの飯誰が作ってたか知ってるか?」
「まさか?」
「ああ、まさかだ。」
「えー!」
どん。
「まさか?」
「ああ、まさかだ。」
「えー!」
襲撃が来たらしい。