143ZERO書き物。4

暗い森は、黒衣森へ。

目を瞑る幻術士。

語りかけるは、古代からの精霊。

すでに。

森は。暗い。いや。黒い。
そのまとわりつくような黒は。
衣。
この黒い、まとわりつく衣をまとった森が織り成す先に。
精霊はいる。

背後から嘔吐の声が聞こえる。

振り返ると。

自身の吐いた物の中に埋もれる少女。
「くっ!」
(私はバカか。)

「大丈夫か?」と聞いてみるが、大丈夫じゃないことくらい見なくてもわかる。
本当に自分はバカだ。

優しく、かつての弟子をなでてやる。
が。
「はい。ありがとうございます。」と少女。
(そうか。覚悟が無いのは私なのだな。だが。無理をすれば・・。)

「無理に嫌なことを思い出すと。精神にキズを負う。やはり、やめておこう。・・・。」
自身の浅はかな考えと、少女を必要以上に苦しめたことに罪悪感があるが。


少女の頑なな懇願に。
「仕方あるまい。だが、これだけは言っておく。」
「取り込まれるな。」ミコッテの師はかつての弟子を見つめる。

「はぃ。」少女は少し疲れたような、でも期待に眼は光を持っている。
(これは・・、あぶないな。)
「いいな?私が言うまで何も言うな。守れないなら、この場でテレポをする。」
「はい。」
かつて、自身が妹に逢うとき。その時の眼だ。あの時は「取り込まれかけた。」
つまり、トレントに命の共有を求められるのだ。
「ヒト」としては、「森で死んだ。」と同語だ。
さすがにそれは自身はさておいて、この子にには自身としては容認できない。
それが精霊と共に生きるこの国の者であっても。

さて。ここらで・・・。

「鎮守の森の守護。偉大なる大樹、我が敬う精霊。この森の代弁者よ。今。少しの会話を所望する。」

頭を垂れる。

ざわ。
 
「ひ。」と少女が倒れる。が、ミコッテの師が支えてくれる。

「大丈夫?」「は・・ぃ。」
「我が妹と同じく、御身に繋がれた魂の息女との謁見にまみえました。よろしいでしょうか?」と幻術士。
「どうなってるんですか?」と少女。

「母に会いたい。のではないのか?」と。かつての師。

そう言われれば・・・・。

(ねえさん!・・・。ああ、・・。ああ。)
声が聞こえてくる。

「ヴィント。ありがとう。今。やっと。あなたの。救った子をつれてこれたっ!」 
感情をあれほど出さない師が、出した。
が、しかし。次の瞬間には平静になっていた。

「レティ?」

え?

母さん。

「ちゃんとしてる?」  ああ。母さんだ。

「もちろん!」と少女。


「このヘンで終わりだクポ。」
白い。そして丸い生き物。

3人目の声はいきなりだった。
「これ以上はダメ、クポ。」

「そうだな・・。仕方ない。」
「どうして?今、母さんが居たの!」少女は納得できない。師に掴みかかる。
「殴れ。」と師。
その声に勢いで殴る。少女。
そして、取り乱す・・・。
「あ、ああああ。その・・。あ。あああ。」
幻術士は、大樹の精霊に非をわびる。
「偉大なる森の守り手よ。この度は感謝をすること、極まりない。願わくばまた次の対話を許しを願う。」


「トレントに取り込まれたヒトと対話するのはキケンだクポ。」
「そうだな・・。」
「同じく取り込まれてしまうクポよー。」
「私もな。ただ。逝った者に言葉を届けられる。が、同じく引き寄せられる。」
「そんな・・。」
「お前には。やはり早すぎたか。すまない。」
「私はこのやりとりは悪くない。と。想いを伝えれるのなら。とおもったのだが。」
「お師さん!」
「モーグリ。この子の、私の記憶を消してくれ。今のやり取りもだ。」
「お師さん!」
「わかったクポ。」



「目が覚めたら、キミはいつもの場所だクポ。」とモーグリの声が。

目が覚めたら、いつもの小屋だった。

いつ頃から使っていたのだろうか覚えてはいない。
昼ごはんは・・魚でも釣りにいこうか。
竿を持って部屋を出る。
今日は格闘の鍛錬だったっけ?この時間でもあの師匠は気にしない・・怒るだろうか?
「うん。まあ。あの人ならどうでもいいかな。」と、つぶやきながら釣りに出かける。


「モーグリ。」とミコッテの幻術士。
「なんだクポ?」
「感謝する。」
「記憶の一部を残したことクポ?」
「そうだな。」
「大事なコトは忘れるとキズになるクポよ。」
「そう。思ってくれていれば、何も言うことはないな。」
「家名?だったかクポ?」
「なんの記憶を残したか、私にはわからないよ。」
「山猫って家名をあげたクポ。」
「そういえば。私たち姉妹になぞらえてな。なんで知っている?」
「お前が一番望んでいたコトだからクポ。」
少し複雑な表情。
「あの子が名乗ってくれればそれで良し。かな。」
「名乗って欲しいクポ。」
「それは言うな。さて・・。」
「照れているクポね」
「まあな。」


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山猫っていうとリボルバー・オセロットしか思い出せないw
Bob Dalus (Hyperion) 2012年01月31日 01:18

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>ぼびー。いらはいw
や、映画ネタ?じゃなくw単にドイツ語読みwヴィルトカッツェ。
そこまで深読みしないでwその映画しらないしw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月31日 03:35

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