ぎぎぎ。
大きな水車が廻る、木々の生い茂る中に在る街。
そこかしこに水が溢れ出で、苔むした道には灯篭と呼ばれる灯りがともる。
静謐な空気は、黒衣森と変わらない。
精霊と共に在れ。
この教えにより、森との共存を図った街だから。
他の街とは違う雰囲気はそこにあるのだろう。
そして、あちらこちらに仮面を着け、槍を装備した自警団、「鬼哭隊」がいる。
槍術士ギルドも兼ねている義に厚い集団の副隊長、スウェシーナは実はちょっと困っていた。
「ねぇ。」と手に持ったパール越しに往年の友人に声をかける。
「どうしたの?」とは、その相手。天魔の魔女、と畏怖された女性だ。
「いや、いろいろと困ってるんだけどさぁ?あんたの差し金でしょ?コレ。」
「なんのコトかしら?」
「レティ!絶対!間違いなく!!アンタの仕業!!!」
彼女にしては珍しく、激昂している。
「はて?」と、とぼけるレティシア。
「もーーーう!アンタの娘をとっ捕まえたんだけどっ!」
「え?なんで?そんなトコで捕まるようならあたしの娘じゃない。」
「マテコラー!」と、ヨコから声が聞こえてくる。間違いなく娘の声だ。
「と、いうわけなんだけど?」とスウェシーナ。
「あ。そうそう。昔あたしがやってたじゃない?ホラ、スゥに頼まれてキャンプ襲うやつ。
アレを修行がてらにやってみたら?って、この前言ってたのwwwマジで実行しちゃったのねw」
「レティ・・・・・。」と、その後にため息一つ。
「そんでね。まあ、それは不問にするとして、もう一人いるんだけど。こっちも知り合いなの?」
「へ?ウチの旦那?」とキョトンとした返事。「今、店にいるはずだけど。」
「あんなタフガイ、見たらわかるし、ウチの連中でも勝てるかどうかといえば壊滅されるわよっ!」「うん。それで?」
「えー、金髪のヒューランで、報告には・・えーっと・・そのサブリガを履いてるらしい、んですって。
まあそれほど珍しい装備じゃないんだけど、ことさら際立った見た目だったらしく、
注意しようとしたら「ぼびー!ドコ!?」とか言い出して・・・まさか、仕込んだりはしてないよね?」
「なんで?」とレティシア。
「いや。詰め所に行ったらどうにもマユちゃんと同じLSだって言うから。」
「ところで、ミューが上手い事いったらしいわね!」
「話そらすな!」が。
「マジで!」といきなり態度が変わる。
「うん、マジ。少し年下だけど。」
「そっかー、よかったよかった!後はウルスリだよね。相手があれじゃねー・・。」
「だね、ミューが乗り気だったのもあるけどね。ライバルにしてるっぽいからw」
「そうよねー・・。でも、前よりは詰め寄ってるみたいだけど。」
「今度、バデロンとこに襲撃しようぜ!」
「OK!」
パールのやり取りが終わる。
あれ?なんだかすごくはぐらかされてない?わたし?
本題が・・・。
あれ?
魔女は何かにつけ、惑わすモノだと今更ながら気がついた。