675外伝。黒髪の少女達2

思えば。
それほどのことではなかった、気もする。
「忍耐」
ともすれば、厄介な。
いや、ほとんど全ての人が厄介な。
そして、厄介な事、というのは、ほぼ全ての人達が嫌がるに決まっている。
自分もそうだった。
だが。
「忍耐」が「厄介」と同意義ではない。
詰まるところ、「忍耐」を強いられた自身にとって、それは「厄介」ではなかった。
それだけだという事になる。
ただ、この経緯を他人に明かすと、誰も彼もが「厄介」事と、決め付けてくる。
そう決められる、決め付けられる方がよほど「厄介」なのだと。
心の中だけで反論し、後悔の理由としてきた。いや、後悔とは・・・少し違う。

腰まである黒い真っ直ぐな髪を途中で括り、東方由来の「着流し」といわれる着物を身につけ。
後ろには商人の親子。
小さな女の子をかばうように、いや、かばっているのだろう。
中年の男性は泣きじゃくる少女を必死に抱きかかえている。

目の前には。
昆虫とでもいうのか。
黒い甲冑をまとったような魔物が3匹。その後ろからもさらに増えつつある。

たまたま。
本当に。
行き先が同じ、というだけで隊商のグループの護衛を買って出たわけだが。
ウルダハからグリダニア行き、という在る意味危険なグループに。

そして、ちょうど渓谷に差し掛かった時にこの有様だ。
同じくして護衛を買って出た術士と剣士はとっとと逃げ出し、隊商もこの親子二人しかいない。
正直な話、自分もこの二人を連れて逃げ出せばそれでいいのだが。
だが。
許せないものがある。
それは何か?
「矜持」
先の二人の護衛には無かったもの。

「・・・不通(通さず)」
左手は鞘の鯉口に添えられ、右手は開いたまま、柄に沿え。

キシャアアアア!!!
黒い両手?のようなカマみたいなものが振り上げられる。
「・・・不笑(わらわず)」
左手が鞘から離れた刹那、右手が柄を持ち。
抜刀。
ひとつ、を数える合間に、ぱちん、と音がする。
左手は鞘に。右手は腰に。
帯と呼ばれているベルトに右手がいきかけ・・もう一度柄の近くまで・・・

シャアアア!!と叫んでいた魔物の両腕は既に無く、頭も垂直に断ち割られ、あまりにも綺麗過ぎる断面に、ただ「ずれた」としかいいようがない。
ただその魔物が倒れこんだ後、さらに3匹の魔物が次々に来て。
商人の親子は、ただただ、泣き叫ぶしかすることができない。
「・・不泣(なかず)」
革鎧でもなく、もちろん金属も使っていない。しかも、胸元もあらわな布の着物。
足元近くあるその服に、ブーツでもなく、軽そうな靴。
だが、黒髪の女性は左手を鞘に添え、右手を平げたまま柄に沿え。
「雪風、月光、花車、乱風。乱れ雪月花。」

ちん。

ただ、そんな音がした。
そして、魔物は3匹のみならず、後続にいた5匹ほどもバラバラにされていた。

しゃらん、と音が伴いそうな。そんな感じで振り向き。
「怪我は?」と。

二人は・・・ただ何が起きたのかわからず、「いえ。」とだけ。

「じゃあ、行こうか。」
「あ、あの!」と商人。
「なに?」
「その、こういうものがありまして・・・・その、もし貴女なら、と・・。」
男は封書を。
「なに?」
「多分、ですが、手違いで私の所に来たのでしょう。内容もサッパリですし、まず、私が行けるともおもえません。貴女ならどうか?と思いました。」
「ふーん。じゃあ、見るだけみておく。」
「おねえちゃん、つよーい!かっこいい!」少女の声に。
「たまたまだ。」と。

こうしてコロセウムチケットを入手する「黒雪」





「ナあ?」
黒髪の美女はかなり不機嫌だ。
「どう、されましたかね?」銀髪の青年。
「ナにこレ?」と蜜蝋で封をされた封書を放って返され。
「その・・・ご招待、なんですけどね。」と、気弱な返事。
「誰かをぶッ殺セ、じゃないンだな?」剣呑な笑顔。
「はい・・・・。」消え入りそうな...
「まァいいヨ。僕に依頼、デいいンだよネ?」にっこり。
「おそらくは・・・・ただ、そのですね。今、ショコラが居ないでしょう?」
「はァ?あいつは自分の都合デしか動かないダろう?」
「おっしゃるとおり。まさに彼女は自分の都合を優先してこの場に居ないんですから。」
「意味ガわかンね。ンだよ、出し惜しみしてっト、ブッ殺スよ?」
「今回の主催、といいますか。その一人に彼女の実兄にあたる、クォ・シュバルツ氏が。まあ、なんといいますか・・彼とはあたらない事を。」
「その前に、コレはどうなンダ?」
「済みません。断ることはできません。」
「ショコラは?」
「あー、そのー。私用、だそうで。(ドレス作りに一心不乱、だなんて・・)」
「ふうん。ベッキィは来るのは確定だロ?あいツ、黒猫しか見えテ無いかラな。」
「そうですね。」



最後の日。
「黒猫メ、スタッブしてやル。」



「リッラ、ね。使える駒を増やすのはいいが。メンタルが弱いな。あのくらいで倒れるようではな。アドルフォ。」
「はい。」
「あの娘からは目を離すな。俺を狙いに来る。」
「はい。」
「ただ、使いようでは十分使える。飼うのは無理だが、誘導さえすれば問題ない。」
「は。」


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675話!!!!
680話に届くかーー!?!?!?
頑張れマユリさん!
Marth Lowell (Durandal) 2013年08月24日 08:08

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>マルスCEO、がんばりまつw
ラプたんもリア充達成したみたいだし、つい気合入れて描きましたw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年08月24日 09:13

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いよいよ新生ですね! これからもマユリさんの書き物
楽しみにしてまふo(^▽^)o
Akatuki Reo (Durandal) 2013年08月24日 10:07

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>レオさん、がんばりまつw
新生、どうなるかしらんw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年08月24日 13:17

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