831セブンス。冒険者達。

「お。」
一言目はそれだった。
ミコッテの白魔道士、エレンは腕輪の導きにより、青い光の輪の中に。
「ここ、ドコ?」
なんだか、見たことはあるような・・・でもいきなり移動術式で飛ばされたゆえに、記憶が追いつかない。
そして。
「あ。」女性の声。
エレゼンの長身の女性は、丈の短いローブ姿で背に長い杖を。髪は少し長め、セミロングというところか。薄いブラウンの髪を少しだけ赤く染めている。
年の頃は自分と同じくらいかな?と思って見ていたら、切れ長の目で見返されて。
「あ、その。こういうのって経験が少ないから。」美人系ながら、控えめな性格のよう。
「私、ヴァイオレット・シールって言います。呪術を嗜んでいます。よろしく。」頭を下げられる。
「ああ、よろしく。ぼくはエレン・ローウェルっていうんだ。よろしくね、お嬢さん。」
手を取り、接吻を。
「え!?」慌てて手を引き込む彼女。
「あれ、こういう挨拶するんじゃなかったっけ?」青年は不思議そうに。
「ど、どこの挨拶ですっ!?」
「リムサ・ロミンサだとこういうのらしいよ。ぼくは、ラザハン生れだけど。」ミコッテの青年はピンク色の頭をかきながら。
「なら、自国風の挨拶でしてください!」エレゼンの女性は左手を抑えて、後ろに下がる。
「まあ、いいじゃない。君は・・」
次の瞬間、もうひとり。
「お。ここは・・?」
茶色の髪の青年。槍を背負っている。
「あ、ごめん。ぼくはネルケ。今は鬼哭隊所属なんだけど、試しに行ってこいなんて言われてね。」
にこやかな笑顔。ハードレザーの鎧ながら、質がいいのは分かる。(いいとこの坊ちゃんか。)(ふうん。)視線と二人の感想など、全く気がついてない。
そこに。
「おう、ここはどこじゃの~?」と最後のひとり。
「ゲ!」「はぁ?」「えーと?」エレゼンの呪術士、ミコッテの白魔道士、ヒューランの槍術士はこぞって。
そこには、やや大振りの剣を腰に履いた、剣術士、いや、騎士?ただララフェルなのだが・・・
「お~う?ワシ、やってもうたんじゃな~?」
それ以外の装備といえば。
頭にカボチャのかぶり物。そして、下着オンリー。
「な、な、なんですか!」エレゼンの術士、ヴァイオレットが吠える。
「名に、と聞かれれば、こう応えるんじゃよ~。剣王、とじゃな~。」
!!!
一瞬、場の空気が凍りつく。
(まさか・・・)(この人、おもしろーい。ぼくも真似しようかな?)(うわ。マジで?)
「では、行くとしようじゃな~。」カボチャ頭が陽気に進み出す。
「ま、待ってください!剣王!此処がどこなのか、まだ把握出来ていません。少し待って位置の確認だけでも!」ヴァイオレットが声をあげる。
カボチャ頭が振り返り「ドコでもいいんじゃよ~。」とのんびりと返す。
「!?」あんまりな事に頭がついていかない。
「ま、そういう事みたいだねー。ぼくたちものんびり行こうよ。あ、終わったらご飯とか宿とか一緒にどう?」ミコッテの誘いは無視して、槍使いを見る。こ
ちらも呆れ返っているようだが、とりあえずはついていくしかない、と目で言っている。恐らくは、こういう相手の仕方は心得ているようだ。過去の経験上。
はぁ。

4人は進むうちに、ここが何処だかわかってきた。
潮の香り、ぬるっとした洞窟。「サスタシャ浸食洞」
「またサハギン達が・・・」槍使いの青年。
「あいつらはそれこそ湧いてでるんじゃよ~。」剣王はのんきそのまま。
「へー、一回来たことあるけど。思い出すのにちょっと時間かかったね。」ミコッテの白魔道士。
「油断は・・できません。結界が張られています。普段通りには・・」エレゼンの呪術士。

とりあえず道なりに進む。洞窟だけあって、ほぼ一直線に近い。
珊瑚を調べ、扉を開放しながら。
「ねえ、みんなはどこに住んでるのー?ぼくは、お姉ちゃんのいるリムサ・ロミンサだけど。」とエレンがほがらかに。
「僕はグリダニアだよ。今、妻が妊娠しててね。少しでも稼ぎが欲しいんだ。」ほがらかなネルケ。
「私はウルダハで、呪術士学院の寮住まいよ。女子寮だから。」ヴァイオレットは先の件もあり少し慎重・・か?
「ワシはの~、畑なんじゃよ~。」剣王はこともなげに。
3人は。「畑?」カボチャだからか・・・?しかし・・・本当に「剣王(キング・オブ・ソード)なのか?と首をかしげる。盾(タンク)のこの人が倒れたら、それこそPt自体が終わりかねない。
しかもこの下着だけって。3人、いや二人だけで目配せを。槍術士と呪術士。白魔道士はえらく気に入ったのか、打ち解けている。
「今度、刈りに行ってもいいです?」「かまわんのじゃよ~」などと。
「そろそろですっ!」ネルケが走り出し、大きな貝に槍を突き立てる。
「出ろ!紫電の奔流!」ヴァイオレットが術式を。
「怖いのう、おなごはのう~」剣王は、その名の真価を発揮し始める。「最近、手にいれたんじゃよ~なにやら、異国の、いや、異界の女の子からの~」
奇妙な形の剣。「ブレイズエッジ、というんじゃよ~」湧き出てくる敵を一刀両断、さらに後ろに湧いた敵まで振り返らずに切り裂いて、さらに切り倒していく。
「すごーい!」エレンは剣王の動きに関心しきりで、回復術式もろくに編めていない。

魔物を召喚し続ける大きな貝を倒し、周りに目を配る二人だが、もう二人は会話に夢中。
「すごいですね!」「当然なのじゃよ~」

ネルケは「なんていうか。僕たちがしっかりしないと危ないですね。」
ヴァイオレットが「そうね・・・でもまあ・・。「剣王」の名は伊達じゃなかった、ってところ?」
「ですね。」「そうよねえ・・。」

まだこの洞窟の攻略は前半戦だ。
蛮族が新たに戦力を補強している。となれば・・この先はハードになってくる。
しっかりしなければ。
3人は、誰に言うでもなく・・・・

「う~ん、この先どうなんだろうね?」とミコッテの白魔道士がのんきに。

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