830セブンス。騎士の寂寥・・・

「やれるものならね!」
エレゼンの女騎士、ミーランは愛剣ジュワユースを抜き放ち、吠える。
「ほほ、イキのいい娘は好きよ。シャワーにうってつけ。」
応える貴婦人。はだけた寝着もそのままに、背中の翼で舞い上がる。
「な!」
驚くミーランだが、後ろにいる3人は予想通り、というか構成を展開し始めている。
「遊びましょう。お嬢さん。」
貴婦人の声と共に、紫色の灯がともり始めていく。

盾を押し出しながら赤い髪の女騎士は「シャワーですって!?」
「ええ。そうよ。目の前でこう、首を切ってあげるの。その時にあげる悲鳴の可愛さ、飛沫。そしてご褒美にキスをしてあげるの。どれも最高だわ。生き返るわよ。」
「狂ってるっ!」剣を突き出す。
「あらそうかの?」右手をあげ、構成を。
「うあっ!?」
雷の術式。しかし、普段見慣れたものでは無い。何か、違う。
「ミー!回復は任せえやっ!目の前のヤツに集中せえっ!」相棒の声にうなづくしかできない。
痺れた体が癒されていく。

「コッチはコッチで大変だネ。」弓を構えていたが、部屋の四隅にあるランプを消して回る葬儀屋。
「ホンマやな・・。」応える術士。
四隅のランプは、光り始めると共に魔力を放出しだし、しかも定期的に構成を展開し始める。
それに気づいたユーニが、まずこのランプをなんとかせんと!と、フネラーレに声を。
鈍い痛みを伴う光を撒き散らすランプを止めないことには、ジリ貧で食われてしまう。
「コッチ、いいヨ!」「わかった、向こう行くわ!」二人で連携して光を消していく。


「ふふ。かわいい剣士殿、そなたはどのような殿方が好みかえ?」
長い爪と、術式でいたぶってくるのを、盾で撥ね、剣で受け返し、耐える。
「今は!まだ・・」声と動きが鈍り・・・
「ミー!向こうの調子に乗せられんなやっ!」回復術式を。
それを見すえ、女主人が。
「いい殿方を紹介してたもろ?」
「ぐ、結構ですっ!伴侶は自分で見つけますっ!」
動きを取り戻す。
「さようか。女同士、も良いぞ?なんなら我がその悦楽の境地を教えてやろう。」
「いりませんっ!」
「つれない言葉じゃの。」
術式がその言葉で。黒い霧が蔓延する。
「あ!」しまった・・・
「ミー!」くっそ、こいつは回復できないんだったか。傷の手当てぐらいしか・・・
「おい!エリ!」
後ろから声が。確かランプの消火をしていたはずだが・・・ユーニから。
「ちょット、やっかいだネ。」フネラーレからも。
振り返る。この一瞬ですら惜しい。
見れば、ランプから湧き出したのか、炎の塊。
「そいつは!ボム!?」
「みたいや。なんとかするけんど、そっちの援護は少し無理や!」
「だネ。もう2つ、湧いてきタ!自爆させないかラ!騎士の回復に専念しテ!」
「ああ、おおきに!」目線を相棒に。
回復術式を。
まだ麻痺が抜けきらないのか、爪でいいように切り刻まれていく相棒。
「ミー!」
「だ、大・丈夫・・。」声も少しこわばっているが・・・
「ほほ。いいわ。貴女の返り血。すごく甘くてよ。生娘の血は甘くっていいわ。」爪を振るい続ける。
「いい加減に!」ジュワユースを、盾を。「しなさいっ!」剣聖の名に恥じない攻防一体の動きを。
「あら、元気なのね。じゃあ。」切り裂かれながらも、余裕の表情のアマンディヌ。
「お前達。おいでなさい。」の声に。
「はい。レディ。」と、ドアの向こう側から、そして寝台で事切れていたはずの全裸の少女が起き上がり、青黒い色に染まりつつある顔で向かい来る。
「なっ!」あまりの事に・・・
「こっちはなんとかしたで、てなんやそらっ!」ユーニもとっさの対応が遅れる。
「殺ル、しかないネ。」冷静に矢を寝台に居た少女に射る。

「このおっ!」剣聖は剣の速度を徐々に速めながら、弾き、突き、切り結ぶ。
「ミー!癒せ!」名前を呼び、回復しかできない自分も歯がゆい・・・

そして。二人の魔物と化した少女を葬り。
貴婦人にも。
「な?なぜ我がこのような仕打ちを?」
ジュワユースは、レディ・アマンディヌの心臓を穿ち。
「貴女は、もう・・ノフィカ様の御元に行かれるべき、です。」剣を抜く。
貴婦人は苦痛に歪んだ顔で・・・「・・・・ナ・ソス様・・我、は・・契約・・・」

どさり、と床に。
「ふう・・・終わった、かな?」
「最後の一言。気になるわ。なんや?」
「まあ、とりあえず帰ろうや。遺体の処置もあるやろしな。」
「だネ。棺桶がいるなら、僕にいいナ。」
(笑えねー)と3人は。

報告をしにグリダニアへと。

(ユーリ、無事でいろよ・・)ユーニは溢れる涙を見せまいとしてうつむいたまま帰路に。

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