764セブンス。東方の剣の技について。

息を潜め。
 すぅ・・ すぅ・・ 
ふう、バカらしい。不意打ちなどする気もないが、聞こえた声に苛立ちを。
いや、それでは、ね。

心を澄ませ・・・・

「次は・・・。」
黒い髪を縛る紐をもう一度結わえなおし、着物の右袖から腕を抜く。
そして、型をあらためて。垂直にした木刀をやや右寄りに。

静かに時を刻むに任せ、眼を細める。

カキンっ!と硬質な音が聞こえた。(来る、か)

資材の片隅から姿を現したミコッテの社長はもはやツルハシを持っていないようだ。
さもありなん、か。
代わりに、短い杖を。そして目の前に掲げるや「此処に集え。」術式。
周りの砂や、小石達が一陣の風となってミコッテの周りに陣を描くようにまとわりつく。

「お待たせ。か?」
「いや、丁度だね。」
「そうかい。」
「あぁ。」ささっと。摺り足で前に進みながら「不意打ちなど。いざ、黒雪が推して参る。」
「いいね!」
杖を構えながらミコッテの女社長は不敵な笑みで迎え撃つ。

構えた木刀に、空気が巻き込まれていくような錯覚を覚え、一度目を凝らすがやはり気のせいだと思い、杖を振りかぶろうとして・・・まずい。直感だが・・少し後退を。
そこに。
「五之太刀 陣風」
木刀が上段から振り下ろされ、土の結界に中り耳障りな音を立てるが木刀の動きは止まらない。返す刀で左から右へ。
これも土の結界と防護の盾で防ぎきる。
しかし、背すじを這う悪寒は止まらない。なぜなら・・
振りぬかれた木刀は、先と同じ型に戻っていたから。
「なんだとっ!」
「続けて、陣風 弐」
もういちど、今度は分った。やはりあの木刀は風の魔力をはらんでいる、ないしは空気をそのまま巻き込んでいる!
これでは・・!ざりっ、という音と共に土の結界が耐え切れず散っていく。
ぎゃりん!青い光を放ち、防御術式がなんとか凌ぐが、それでも耐え切れず杖で弾く。
「ちっ!」
だが、それで終わりではなく。
もう一度、木刀は引き戻され、下段、右から最上段へと。
その流れるような捌きは、先端が弧を描きまるで・・
そして、左から弧が滑り落ちるかのように、突進と同時に斬撃のような突き。
下弦の月のような軌跡は吸い込まれるように、ミコッテの胴を凪ぎ、突き崩す。

「八之太刀 月光」ぼそり、と。

今度ばかりはさすがに受け切れず、倒れしたたかに腰を。

「いっぽーん!」と茶色いミコッテ、ショコラの声と
「社長、大丈夫ですか?」秘書の声。

みぞおちを押さえながら、「大丈夫、だ。」と言いたかったのだろうが、先の突きで肺の空気がみな出きってしまったのか、声が出ない。
「・・・がふっ・こふ。」

少々、恨めしく黒髪の剣士を見つめるセネリオだが、社長がそれを制する。
「いい・・。」
「そうだな、いい勝負だった、よ。」
着物を正して、手を貸す。
「よ・・っと。」
立ち上がり、「負けた。まーけた。アレは持って帰っていいよ。でも、あれ。あの技何?魔力つき?」
「五之太刀、か。気を練り、空気を纏わせて叩きつける連撃の技。風の術式に見えた?」
「しかも、それをもう一回と、最後に大技でしょ?あんな連発アリ?」
「明鏡止水・・流派、鏡心流の秘伝。己が心を止まる水の如く穏やかにし、心を映す鏡を明らかにす、か。その境地を求めるのが、求道者、とは親父殿の弁だったが。」
「ほう、お父上は?」
「こっちに逝っちまったよ。」天を指差す。
「そうか、失礼した。」
「いや、いい。エオルゼアに来るきっかけにはなった。で、あれだがな。」
「あ、そうそう!やったね黒サン。コタツゲットだにゃん!」
セネリオがん?と・・
「そういえば、ショコラさん?貴女はこのコ?だっけ?の事をご存知で?」
「あ、うん。(兄様との関係は・・マズイかな・・?)」
「社長?正直、このショコラさんから普通に聞けばよかった、のでは?」
「・・・・。まあ、そうだな・・。でもまあ、楽しかったよ。それでいいじゃない。」
「そうですね・・。なんなら出所を探って発注してみては?」
「ん?ああ、使い方くらいなら・・。ショコラ、手伝って。」「あいにゃん!」

やがて、準備が整い。
毛布をつまみながら注意事項(この中で寝ると死ぬ、など。)を伝えると、ささと足を突っ込もうと一番乗りのはずが、すでにショコラが中で丸くなっていた。
それを蹴りだし(「何するにゃ!」「死たいか?」)4人でコタツを・・いや、3人はすでに座ることをアキラメ、というか、寝転がる誘惑に勝てずに肘枕で熟睡体勢になってしまい、
黒雪はその丸まったネコと揶揄される3人を眺めながら、「みかん、か鍋が欲しいな・・・。」とつぶやいた。


そのころ、ウルダハのエリスは・・。
「ねえ?そろそろ届いてもいいよねえ?」
「どうかしました?」と秘書。
「いやね、暁一家がさ。東方の輸入品を仕入れたって言ってたじゃない?」
「そうですね。」
「それが、お茶は着てるんだけど・・・コタツがまだなのよ。あと、お茶用の食器とか、ツボとかね。困ったものねえ。
レオさん、ちゃんと送ったってパールで言ってたし。せねっちに聞いてみようかしら?」


----------コメント----------

”周りの砂や、小石達が一陣の風となってミコッテの周りに陣を描くようにまとわりつく。”

上記みたいな室内戦の場合はストスキどうなってるの?w
別に本物の石ではないのかなw
Marth Lowell (Durandal) 2013年12月06日 16:59

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採用…(^。^; あのセネリオさんが、よくも丸くなったものだけどw
ネーコは こったつっで まーるくなるっ♪ で世界に広げよう、ともだちの輪!
ってトコかな。
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年12月06日 23:16

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>マルスCEO、それはね・・
靴の裏についた土や砂、果ては小石といっても、米粒レベル。
この時代設定あたりだと、そのくらいは屋内であってもおかしくないわけで、そういうものが精霊を呼びつける媒体として機能してる、かな。
細かい粒子でも、寄り集まれば固くなる。ダイヤみたいにね。そんな感じで、精霊が耐え切れなくなったらストスキ終了。とw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年12月07日 01:26

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>えふぃたんwわ!だねw
あのコタツの誘惑には、なかなか抗えないのですw
そして、オチのエリスは・・・wな展開でしたw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年12月07日 01:39

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エリスから送られてきたお茶は伏線だったんですねw
Marth Lowell (Durandal) 2013年12月07日 07:56

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>マルスCEO、ですw
前の回にネタバレしないよーに、ってのはコレでしたw
伏線回収、終わりっとw
あ、さすがに800話は無理くさいので(新生もあるしw)、本編は次の一話でひとまず終了。
以降、新生にて継続しますね♪
で、不定期?に短編を入れていこうかと。
この短編でウルラの1年(ロストシーズン)を2話くらいでなんとかw
それ以外もちょこっと。
同時期に新生でプレストーリー、本編キャラの日常みたいなのも。
できる限りがんばりまつw(o ̄∇ ̄o)♪
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年12月07日 09:04

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