712セブンス外伝。二人。

ウルダハ。
荒野の都市。そして繁栄と滅亡を内包した都市。
その象徴でもある、ナル・ザル神。
そして、その片割れアルダネス神殿内に魔術学校。
その高等クラスより上級の特別クラスに一人の少女。
淡いグリーンに染め上げた髪がよく似合う。
「もう。なにしてんのよ、ターシャったら!」
そろそろ授業が始まる。
今年18になる彼女は、たった二人だけのクラスの相棒アナスタシアが遅刻寸前なのにやきもき。
出逢った当初はまだ11歳だった。
その年頃のせいか、首席の少女に対抗心が先立ち何かと突っかかったものだが。
この数年、二人だけのクラスで次第に打ち解けて、彼女の人となりも分り、「ターシャ」と「ウィス」と言い合えるまでに。
そして今日の授業に彼女にしては珍しく遅刻しそうなので、ちょっと心配。
教室に入り二つだけの席へ。
普段ならそこにはアナスタシアが座っている。
そこに教師ヴァイオレットが。
エレゼンの女性教師は数年来の。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「あら?アナスタシアは?」
「それが・・・。」

ガラっ!勢いよく開くドア

「おっはよーございます!」
淡いグレイの髪の目下首席の少女が。
「もう!ターシャ!おそい!」
「ごめんごめん!ウィス!あ、レト先生すみませーん。ちょっと弟の世話にてまどっちゃいまして。」
「いいから席に着け。講義を始めるぞ。」


術式の講義を正午まで。
昼食休憩に。
「ターシャ?弟の世話って?」
ウィスタリアの質問に。
「んー、いまだに彼氏がいないってバカにしやがるから鉄拳制裁してた。」
「ちょっ!私だってまだいないのに。」
「ウィスならすぐにできるわよ。」
ヒューランの少女は十分に魅力的に見える。最近は頬に蝶のマーキングなんかしたりして、それなりに意識してるように見える。
ターシャはちょっとうらやましい、か。自分は母がそういうのを許してくれないので。
その後取り留めの無い会話に。


サンドと香茶を食べ終え、午後の授業に。


午後からは実践の授業で、術式の構成、展開を披露する。
二人の実力は伯仲していて、教師としては舌を巻くしかないが、まだまだ教えることはある、と。
自分が師事した「黒衣」はもっと凄くて、それでも未だに追いつけない。
彼は今どうしているのだろう?
「もう少し呪を短くできるように。」
「はあい。」「はい。」

午後の授業も終わり、二人は別れる。
「ターシャ、この後は?」
「うーん、パパのところで少し剣術教えてもらうかな?」
「ふうん、私もやってみようかしら。」
「ウィスならすぐに身につくとおもうよ。」
「じゃあ、一緒にいってもいい?」
「もちろん。でもあたしはそこそこ練習してるから、対戦はまだまだね。」
「言ったわね。すぐに追いついてみせるわ。」
「おう、挑戦待ってるよ。」
「まかせなさい!」
少女ふたりはきゃいきゃい言いながら剣術士ギルドに向かう。

その前に屋台で買い食いしてから、だが。

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