713セブンス。武士道とは。

黒髪を後ろにまとめた少女。いや、もう女性と言ってもいい年頃か。
着流し、という東方の装束。
胸元もあらわなその姿は、到底戦闘に向いているとは思えないが。
まして川の中。
着物のすそをたくしあげ、動きにくかろうと。
しかしながら、腰には一振りの剣を佩いている。
「もう!なんだってこうなの!」
思わずグチがこぼれるが。
パシャパシャと川の浅瀬を草履を濡らしながら走る。

F・A・T・Eと呼ばれる「魔物退治」に参加したのだが、なんと自分一人。
大体はパーティと呼ばれる集団で参加するものだが、この黒衣森の中央森林は人気がないのか、一人で参戦するハメに。

しかも、川の中には一抱えほどもあるナメクジがわんさかと。
生理的嫌悪感丸出しなわけだが、マップにはさらに奥だと。

中央森林の南西の端、と記されたマップに沿っていくと・・・・・。

「居た・・・・。ってアレ!?」
黒雪と名乗る女性は、素っ頓狂な台詞を。

ナメクジ。

先ほどの川にごろごろと居た、襲ってこない魔物ではなく。

完全にこちらを敵視してきた。

「ひあっ!」
年頃の女性らしい悲鳴をあげつつ、距離を取り腰の愛刀に手をやる。
「不逃(逃げず・・・)」普段の戦闘時の物言いに切り替えるが。

「やっぱ、キモすぎ~!」と着物の裾が濡れるのも気にせず走る。

なんせ、デカイ。
悪夢のような大きさのナメクジは、軽く彼女の身長を超える。
重量にいたっては、彼女の10倍はあるのでは?というくらいのサイズ。

マップには、ル・カルコル、とだけ記されていたわけだが、こんな詐欺めいた依頼というか、討伐、そりゃあ誰も来ないよね、と内心で悲鳴を。

だが、このノートリアスモンスターは自分の事を大変気に入ってくれたらしい。
追い回してくる。

「この!」
追いつかれてしまい(大きいので一歩の速さが違う。まあ、ナメクジの一歩がどんなのかはわからないが。
というか、ナメクジ、こんなに足が速いっておかしい。)などと考えながら。
引けない。

抜刀。

ひゅん。

音がしたとすれば、こんな感じ。実際には無音だけど。

ちん。
鞘に収まる音。こちらは聞こえる。

抜刀術といわれる、東方の剣技。
彼女はその使い手にして「刀の主(ソードマスター)」の称号を得ているほど。
刀を鞘から瞬時に引き抜き、斬りつけるこの剣技は、攻撃、というよりも防御が主体ではある。
鞘走り、と呼ばれる技術ではあるが、生半可にマネをすると指が何本か飛んでしまう。
しかし、そういった連中を差し置いて、彼女は見事に技を極め「雨の村雲」という刀を頂戴したのだ。

「こんのクソ野郎!」
一旦攻撃の準備に入ると、彼女は容赦が無い。
粘液でぬめる身体には、なかなか刃が通じない。
しかも、その粘液を大量に吐き出す瞬間があり、事前に察知しないと粘液まみれになる、とも理解した。
少々、遅すぎたが。
粘液をぶっかけられ、抜刀術の基本、鞘走りも上手くできなくなり・・・。
「不可(あたわず)・・」

しかし、戦意が萎えたわけではなく、お気に入りの着物や愛刀を汚された方がよほど腹に立ち。
NM(悪名高き魔物)にこの支払いをつけさせるべく、抜き身のままの刀で。

「七之太刀、雪風さらに。月光!花車!!乱風!!!食らえ!!!!乱れ雪月花っ!!!!」
切り裂かれていくナメクジに。
「仕上げ、だ。零之太刀、回天。」

その大きさに見合った音と共にNMが崩れる。切り刻まれ、なかば細切れに近い。
「ふ。」刀を鞘にしまう前に川で粘液を落し、水浴びの一つもしたいなあ、と。
べっとりとついた粘液を落すためにひとまずはグリダニアにもどるとするか、と考えていたところ。

ぱちぱちぱち。
と拍手の音が。

「ん?」


音の出所を探る前に声がかかる。
「いや、お見事。」
影を抜き取ったような黒い衣装。
その顔とネッカチーフだけが浮いているように白い。
ぱちぱちぱち。もう一度拍手。
「何者?」
「やあ、はじめまして、かな。僕はこの討伐に乗り遅れてしまったのだけど。途中から拝見させてもらっててね。ああ、僕の名は魔魅夜、といふのですよ。」
「・・・。わたしは黒雪、だよ。覗き見なんて、趣味がいいとはいえないね。」
「失礼。加勢しようとおもったのだけれど、必要が無さそうだったのでね。冴え渡る剣技、堪能させていただいたよ。」
「見料でも頂戴しようか?」
「はは、じゃあ、こういう余興で如何かな?」
一瞬で周りの魔物達が岩の槍で串刺しにされ、下流へと流されていく。
何が起きたのか、瞬時に理解できなかった。
ただ、構成だけは一瞬見えた。
「な、何を?」
「いや、余興だよ。帰り道にヌルヌルしたのは嫌だろう?」
「な!」
「この川の帰り道、全ての魔物を退治したから、今のうちに帰るといい。それと僕も退散するから、水浴びがしたければするといい。人払いはしておいたよ。」
「・・・。」声もない。
「では、また。これにて。」
影のような男は立ち去って行った。

「・・・・」何かに化かされたのだろうか?


とりあえず、帰路に着く。さすがに魔物の死骸の入った水で洗うのは勘弁だ。
そして、宣言どおり行く時には居た魔物は全て駆除されて。
「あ、あんなの、魔物以上に危険だわ・・。」
侍の女性はつぶやくしかできない。




「ふふ、あの剣技、たのしいね。」
「黒衣」と呼ばれる年齢不詳の青年?はニコニコした表情で「家」にもどり
「クラ、おもしろい物がみれたよ。」
給仕、というか、押しかけ弟子の少女に。
「はい、ご主人様。どういったものでしょう?」クラリオンはお茶の準備をしつつ。
「それがね・・・・」


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作中の黒雪とゲームの黒雪のギャップが面白い(´人`)
Marth Lowell (Durandal) 2013年10月01日 17:31

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>マルスCEO、それはw
やっぱり、「FF11」の侍を実践しようとすると、かなり盛り込まないとw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年10月01日 23:46

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