487書き物。少女達。

「ね、オーア。ちょっとヤヴァクない?」
カーラインカフェで給仕を務めるヒューランの少女、イーリス。
赤毛にソバカスの彼女は、おそらくは同年代であろう少女二人を見て、相方のミコッテの少女にささやいた。
「んー。どうだろうね?イーリス君。まず、あなたの遅刻がもっともヤヴァイんだけど。」
黒髪クセッ毛のミコッテは容赦が無い。
店内は賑やかだが落ち着いてきて。
多少の余裕が出てきたところに、先ほどの暴挙、というか。
一人の少女が店内に入って来たとおもえば、なぜだか投げ飛ばされる、
というか転げさせられる、しかも見知った顔だったりしたものだから、もう何がなんだか。

オレンジ色の髪のエレゼンの少女は、すっくと立つと先ほど投げ技を披露した少女と、その師?のテーブルについて。
「ワインちょーだい!」と、普段では絶対にありえないオーダーをしてきた。
「はーい!」とイーリスが請負い、「ちょっと!イーリス!」と、止めようとしたが。
「ま。いいんじゃないか。」と女主人ミューヌ。
「そんな。いいんですか?」と困った顔で。
「何か吹っ切れたんだろう、あの子も。祝杯くらいあげてやらないとね。」
「そういうものですか。」
「ミュも何か吹っ切れたらいいんだけどな。彼氏はできたかい?」
「まだです!」
「あはは、それは悪かった。早く作ったほうがいいよ。」
「その・・。アルトさんとは?」
「ああ。彼とは・・籍だけは入れているよ。何かと忙しいみたいでね。あまり逢えないけれど。」
「うわあ。初耳~!」
「そりゃ誰にも言ってないから・・。」
「聞いちゃった!」と横から赤毛の少女。
「あ、イーリスには聞かせたくなかったかも。」オーアが仏頂面で。
「まあ、いいさ。隠すほどの事でもないし。」とミューヌは超然としている。



「ユパ様!この子!」とワインを片手に。
赤銅色の巨漢、というか。ルガディンはえてして巨漢ではあるが。
「どうかしたかい?」と和やかに。
オレンジ色なのか、赤色なのか。そんな光の加減で変る髪の持ち主のエレゼンの少女は。
「後で勝負を挑みます。いいでしょうか?」と。
この息巻いている少女は、少し頭を冷やすべきか?いや、現実を知ってもらうべきか。
「いいだろう。立会いは見させてもらおう。」
「はいっ!」
「ち、めんどくせえなあ。オマエ。」
「エレディタ。剣で勝負な。」
師の一言に。「はいよ。ししょー。」
「まあとりあえずは、おいらの弟子になってくれたんだ。お祝いから先にするべきだろ?」にこやかに。
「そうですかいね?」と皮肉げな笑み。
「別にいいわよ。」一人ワインを揺らす。
「まあ、そう言うなよ。」
オーダーをいろいろと。


木々に囲まれた空き地にて。
木剣を二人携えて。
「じゃあ、はじめ。」といきなり発言する師。
隣り合わせだった少女達は弾かれたように飛び出す。
「そ、そ、いきなり?」とオレンジの髪を肩にまとわりつかせた少女が。
「あたりまえや、阿呆。敵はすぐ隣におることやってあるんや。実戦を知らんとってからに、偉そうに文句たれるなや。」
木剣を振りかぶり、突進してくる。
抜き打ちの一撃。が、かろうじて自身も木剣で受ける。

できる!
そんな不確かな実感でもって、高揚していく自分を止められない。
「この!」と木剣を振り、相手にも同じくパリィ(受け流し)をされるが、気にもせず、どんどんと打ち込んでいく。
「はは、お嬢様はキレたらコワイね!」全ての攻撃をパリィしつつ、薄笑い、いや、馬鹿にした笑い。
木剣を受け流し。次の攻撃に移ろうとした少女に。
黒髪の少女は遠慮なく反撃を。

「そこまで。」

ぴたり。

エレゼンの少女の額を断ち割らんとする剣筋は、直前で止まり。

振りかぶった木剣を、ぽとりと落としたエレゼンの少女は、へなへなと。崩れるように座り込んだ。
「ウチの勝ち、やな?オッサン。」
「ああ。」
「ほらな?ウチに勝つなんて百年早いわ。」と手を差し伸べる。
「1年で勝ってみせるわ!」と手を振り払い、なんとか立ち上がる。
「ええ根性や。やってみい。」と笑う。

「ミーラン。今の攻撃、パリィ、共によかった。だが、やはり荒削りなのは否めないなあ。ちゃんと指導を受けてくれるかなあ?」
「はい。お願いします。1年でコイツに勝てるよう、ご指導よろしくお願いいたします。」
「はは、エレディタはなあ。実は格闘がメインなんだな。
今は剣術を教えてはいるが、まだまだ先は長いというところかなあ。
それこそいっちょ格闘の彼女と一戦してみるか?」
「ウチはかまわへんで?」と黒髪の少女は挑発を。
「む・・じゃあ、一度お手合わせ、お願いします。」
「ええで。武器はナシでやったるわ。」
「どうぞ。」
「では、始め!」

木剣を一振りする間もなく、アゴに一撃。
そのまま立っていれなくて、見事に倒れてしまった。
フラフラする頭が意識を戻したとき、宿の寝台に寝ていた。
「アンタ、阿呆やな。」
呆れた調子で黒髪の少女が濡れたタオルを渡してくれた。
「なっ!このっ!」
タオルは受け取りつつ(それ以外に体がまだいう事を聞かない)、口だけは動く。
「まあ、今日から師弟関係や、あのオッサンと。ということは、ウチとも兄弟弟子やってことで。まあよろしくやで。」
「よろしく・・。ミーラン・ロートス。それがミーの、私の名前だから。」
「そうか、ほなよろしゅう。ウチはエレディタ・クリゾリート。好きに呼んでや。」
「じゃあ、エリで。」ニっと笑う「次は勝つから。」
「ほなアンタはミーでいいな?」同じくニっと笑う「やれるもんならな。」
二人は拳をつき合わせ。
「ま、仲良くやろうや。」「そうね。」
二人の少女の邂逅はこうしてなった。


----------コメント----------

某忍者漫画の
ドタバタ忍者とエリート一族の末裔のような
いい関係ですね!切磋琢磨!
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月03日 12:16

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>フィズさんw某鳴門マンガは実は見たこと無いんですw
ひとかけら(ワン。。)もw
それでもこの関係はすごく大事にしていきたいですね。なにしろ面白すぎますからw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月03日 13:19

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ソウナノカ
自分関西人なんで黒髪の子に好感が持てますw
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月03日 22:47

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>フィズ」さん。あたしも関西のひとなのですw京女w

「そやかて、偉そうにはいえへんどすえ。」

ま、ふつーいわないけれどw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月04日 01:11

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おぉなんか
京女って響きが色っぽい。

お上品どすえ。
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月04日 14:14

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>フィズさん、www
色っぽい、というか、艶っぽいですw
それと、上品じゃないなーw京はw
腹黒いw見た目は上品ですけれどねw
京女、ですが・・「東男に京女」とベストカップル?みたいな言い回しがありますがw多分、腹芸カップルじゃないかな?と邪推してみますw
あ、あたしはピュアですよ?きっと。多分。おそらく。そうだといいな・・・・。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月04日 14:27

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腹黒いのか・・・w

ピュアでないとこういうステキ物語は書けませんよw
きっと・・・。
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月04日 17:22

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>フィズさん、どうもw
ありがとうございますw
うーん、ピュアかー。いろいろと染まってる感はいなめないけどw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月04日 18:05

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