421書き物。少女の剣2

うう・・・ん。
  おにいちゃん・・・

 せいっ 

   あいたたた・・・・

たぁっ

 あ、みんな・・・

おにいちゃん・・・

「ううん。」
「起きたかにゃ?」

「はえ?」
「マリー、おはよにゃ。」
顔を覗き込むミコッテの少女。
あ、ルー。

「おはよう。」
体を起こすと、他のメンバー、ベル、グリュック共に準備は出来ているようだ。
「わ!」
慌てて身支度にかかる。
「あ、そんなに慌てなくてもいいよ。ちゃんと準備してくれれば。」とリーダー。
「はあい・・・。」
にひひ、とルーが笑っている「お寝坊さんなのにゃ。」もう。


クルザスに狩りに来て二日目。
今日の夕暮れで狩りは終わりという手筈なので、できるだけ時間を作りたかったのだけど。
私としたことが・・。

荷袋から甲冑を取り出し、チュニックの上からつけ始める。
ブレストプレート、ガントレット、レギンス、ブーツ、
一通りそろえると一丁前の戦士に見えるから不思議なものだと、いつも思う。
本当ならヘルムを装備すれば完璧なのだろうが、代わりにサークレットを装備。
ヘルムだと、その・・。カチューシャに触れない。

「うん、おまたせ。準備おっけーだよ。」

「よし。じゃあ行こうか。今日はできればお城まで行ってみたいね。」
「え!ベル!お城!ってどこにゃ?」
「この、もう少し北のほう、というか北端だね。白亜の尖塔がすごく綺麗なんだよ。」
「えー、見たーいにゃ!」
(あ。・・マユちゃんとお兄ちゃんが・・・そこで・・。)

しばらく街道づたいに歩いていく。
ついでに、アンテロープとかいうヤギを仕留めながら。
「そろそろかな。この丘を越えたら見えるよ。」ベルの一声に、ルーが。
「一足先に見てくるにゃー!」
「あ、待って!危ない!」
ベルの悲鳴に近い叫びも・・・・
え!?

走り去るというか、全力ダッシュのミコッテには届かなかったようで・・。

「ち、おい、グリュック、行くぞ!」とベルが走り出す。
私も同じく走り出すが「マリー、危ないからルーを拾って逃げてくれ!俺達はなんとかする!」
「え?どういう・・?」
「この先は獰猛な獣がいるんだ。ちゃんと説明してなかった俺が悪い。
ルーだと、おそらく見つかった時点で瀕死に追い込まれるだろう。
そうなる前に俺達で足止めする。だからテレポを使って逃げてくれ。」
「じゃあ、ベル達は?」
「ああ、俺はグリダニアの正義の御旗、鬼哭隊の隊員だぜ。泣く子も笑わせるのが信条だ。任せとけ。」
「オレは・・弱いものイジメが苦手でなあ。強いものイジメが好きなんだ。」
「みんな・・。」走りながらも、決意を新たに。
「私もですね、誰かをほったらかしにしてまで逃げるなんて、到底看過できません!やるとこまでしっかりやります!」
「はは、困った子だね。」「頼もしいな。」「まーかせて。」

「にゃああああああああ!!!!!」

案の定、獣に見つかり追い回されている。
見た目は、背丈で言えば私と同じかそれくらい。黒い毛並みに、太い四肢。
かなりの強さだと見て取れる。
「ルーー!こっち!」と叫んでみるが、パニックを起こした彼女はただ走り逃げるだけ。

「グリュック!」「おう!」戦輪を投げつけるルガディン。
同じくして、私もスローイングダガーを投げる。
投擲には自信が無かったけれど・・。幸いあたりはしたけど、ダメージにはならなかったようで・・。
もう一度投げつける。
その間にもルーの体に獣が体当たりを仕掛けている。
なんとかかわしているようだが、少なからずダメージを負うような怪我をしているのがわかる。
グリュックの戦輪も数発が中っているが、獣はルーに狙いを定めたままだ。
このままだと。

「えい!」走り出し、剣を鞘ばしらせる。
「なめんなああ!!」雄叫びと。一閃。

剣は届かない間合いだったが、獣は敵を見定めたよう。
「お前の相手は私だ!」盾を構え、剣に意識を集中する。

「ルー、こっちだ。」ベルがルーを確保し、グリュックが安全を確保する。
「マリー、無茶するな!そいつはかなり手ごわい。隙を見てテレポしよう。」
「あ・・・。多分無理。もう、コイツヤル気満々で・・。皆でテレポしちゃって。」
「そんな。」
「移動術式の間は何も行動できないでしょう?その間に屠られる。」

「せいれいさんせいれいさん、ちょっと寄り道してくださいな。」
小石が集まり、防壁になる。
「せいれいさん、ちょっと助けてくださいな。」
白魔道士のミコッテの少女が紡ぐ言の葉に、精霊たちが応える。
「よーし、ルー!分かってるじゃない!」私は剣を握り締める手にさらに力がこもるのを意識する。
獣が突進してくる。

後ろを振り向く暇も無いが、グリュック、ベル、共にフォローに回るためのポジションに着くのが分かる。
ルーは、ショックから立ち直ったため、もう大丈夫だとの判断。
一撃目。
これは敢えて盾で正面から受ける。
ものすごい衝撃だが、こらえてみせる。ここでナメられては獣にいいようにされるだけだ。
「ふン!」と盾を払い、獣の眼を見る。正直コワいが・・
剣を突きつけ、「どっちが強いか、分からせてあげるわ。」
右下から、左上に駆け抜けるように切り上げる。
鼻面を切り裂かれ、獣は悲鳴をあげる。
怒りの雄叫びと共に、さらに突進を仕掛けてくるが、横手からの槍で躓き。
さらに追い討ちで、腰のあたりに拳が炸裂する。
プギャア!

すぅ・・・はぁ・・すぅ・・・・・てやああっ!

剣に紅い魔力の残光を残しながら振り下ろす一刀。
次いで、蒼いカケラを纏った槍の一突き。
さらに、黄色い爆発めいた光の伴う拳。

獣はもうそれで動かなくなった。

「あー、なんとかなったわねー。」
「そうだね、マリー、助かったよ。」
「うんうん、マリー、ありがとにゃー!」
「ルー、お前が人の話も聞かないまま飛び出すからだぞ?」
「もう、グリュックッたら。白亜のお城なんて聞いたら、夢見る女の子は飛び出すにゃ。」
「ルー。それ、私も当てはまらないとどうなのかなあ?」
「マリーは夢が足らないにゃ。」
「そうですか・・。」
「あ、あ、マリー、そういう意味じゃ・・」
カチューシャに手をやる少女に、それ以上言葉が出せなく。
「うん、大丈夫。気にしないでルー。」
「マリー・・・。」
「そういえば白亜のお城が見えるのはもうすぐだよね。行こう。」
「ああ。」ベルは目を瞑ったまま返事をする。
「おう。」グリュックはいつもの。
「にゃ。」ルーは・・少し、遠慮がちに。

「よっし、冒険しようぜ!」
ふわふわの金髪をなびかせながら、我先にと海岸めがけて走り出す。

少し、吹っ切れたかもしれない。
やがて海岸線が近づき、白亜の城が見えてくる。
感動も束の間、自分を振り返る。
夕焼け空が沈んでいく中、カチューシャを取り、思いっきり海に投げつける。

「私は、これからも私だーー!」叫ぶ。

はは、とみんなも笑いながら銘々好き放題叫んでいる。

よし。私の居場所は此処だ。


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夢見る少女じゃいられないんじゃな~w
Syakunage Ise (Hyperion) 2012年12月04日 13:16

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>王様、どうもw
ルーは良くも悪くもムードメーカーだからねーw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年12月05日 02:45

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