402書き物。もう一つの日常。

「キーさあん。なにそんなにヘコんでるんですかあ?」

褐色の肌、茶色い髪、青い眼。
そして同じく茶色い尻尾。今日はポカポカ暖かいので、おヘソが出るくらいの丈の短いシャツ、短めのスカート、サンダル。
それらを白で統一している。

耳をピコピコ動かしながら、ショコラ、ことフュ・グリューンは上司であるところの冴えない銀髪の青年に尋ねた。

「あ・・・。そうだ。オマエな。スイーツとか詳しいか?」
「は?」
そんなの、知らないわけが無い。

「いや、前回の仕事でフネラーレがなんだかケーキの詰め合わせをもらったらしい。」
「いいなあー。キーさんオゴってくださいよー。」
「それでな、今回の案件の終了時に間に合わせて、そのケーキを用意しておけと。
そんなのドコで売ってるのか俺にはわからん。ということでだ。」
「送った人に聞けばいいじゃないですかあー。もしかしてバカですかー?」
「くっ、聞くには聞いたさ。だが、その辺を歩いて適当に選んだり、とか、それも複数人が持ち寄って、だ。
しかもフネラーレが食べ終わった後に「コレ」とか言い出すものだから、何を食べたのかがまずわからん。」
「じゃあ、ケーキツアーいきましょうよー。」超笑顔。
「オマエなあ、タカる気満々だろ?」シブい顔
「あ、じゃあお一人で探してくださいねー、わっちはこれにて。」とベンチから立ち上がる。
露店で買った串焼きが10本以上入った紙袋も忘れず持って行く。

「あ、待て。待ってくれ。」なさけない声
「ほい?」
「いや、わかった。ツアーを敢行しようじゃないか。」
「理解のある上司で助かるー。」
「そのかわり、俺にも一口食わせろ。」
「えー。マジすかー。」
「俺だって、そのくらい恩恵があってもいいだろ?」
「キモー。」
「オマエ・・・ソレが仮にも上司に対して言う台詞か。
それに、オマエ前に死に掛けた時、誰が助けてやったと思ってる?俺がフネラーレに連絡しなかったら、どうなってた?」
「フネラーレに感謝。」
「ソッチで即答かよ!今度そんな目にあっても、もう絶対に面倒みないからな。」
「あ、うそうそ、キーさん。大好きですよー!」
「超ウソくせえ。」



一方。



黒いストレートの髪をたなびかせ、白磁の人形のような少女が駆ける。

「まったく・・・。なニ逃げ出しやがるんダ。」
独特のイントネーションの発音に応える者は居ない。

昼下がり、ターゲットを見つけスタッブ(暗殺)するために、街の外まで誘導をと。
街中だとさすがに始末班に迷惑なため、囮を使って街の外まで。
ここで自分が囮になれば、まず話も早かったのだが、さすがに顔がバレている。
まあ、それでもこの男は食いついただろうが。
「しかし・・。」
逃げ足だけは恐ろしく速かった。

第一射、コレで仕留めるハズだったのに、運悪く囮の娘に抱きつき外れてしまった。
そして狙撃に気づき、猛ダッシュで逃走を始めた。さすがに犯罪者だけあって、逃走には技術がある。

「マーキング」してあるため、逃がさないがとりあえず射程に入らない。
純粋な距離ではなく、樹のウロや、坂道、曲がり角をたくみに利用して、視線に入らないように逃げる。
ココまでくるともう拍手の一つもしてやりたい。

「チ..」
次の角を曲がった瞬間、肩に痛みが走る。
相手も神勇隊のメンバーだ。弓くらい当然使える。
「く・・。」
もう一本。今度は二の腕。
不埒者にしては、それなりの腕前だと認める。

「へへ。フネラーレ、だっけ?殺されたくなけりゃ、大人しく弓を置け。そして全部ぬげ。」

「オマエ。バカか?」

肩と腕に矢を突き刺されたまま、速射の一撃。

眉間ではなく、胸に。急所をあえて外す。
がくり。そのまま膝立ちになる男。
「な!」
「僕はだナ。この程度は痛い、とは思ってナイんだヨ。オマエ、僕の痛みを少し分けてやるヨ。」
一本のダガー。

「ひ。」

ぐり。

左眼に突き立てる。そして眼球を抉り出す。
「ドウダ?痛いか?」
「ギャ嗚呼ああああああああああああああ!!!!!!!!」

両手で顔を覆い、倒れ付す男。
「ああ、そしテこれはお返しだ。」
2発。
肩と二の腕、同じ位置に男のものとは比べ物にならない大きな矢が刺さる。
「ひいいいいい!」男の絶叫。
「痛いのカ?」
「いたいいいいいいいいい!」
「そウか。じゃあ、しばらく見物しといてやルよ。」
「やめて、もうゆるして、たすけてくれえ!」
「オマエが手篭めにしてキタ女達もそう叫んだだろうナ。」
「ひい!」
股間に一発。
「ぐあああああ!」
「コレでもう悪さはできないネ。」
「たすけてくれええええ!」
「ダメだネ。死ネ。」
一撃で死なないよう、急所を外しながら矢を撃ちこんでいく。
「挿すのは得意だろうが、挿されるのは中々なかッタだロ?楽しめよ。」
「もう、いっそ殺してくれ・・・。」
「オマエがそのままくたばるノを見てるのが、何より楽しイからネ。もう少し挿しとくか。」
5本。
既に30本以上が急所を外され、撃ちこまれている。
「人数的にはこのくらいかナ?なあ、何人くらいヤったんダ?」
「・・・・・覚えてない・・・。」
「覚えとケよ、この下衆!!!」
もう一本。もう声もない。
「死にたいカ?」
「・・・・はい・・・・もう、ころして・・。」
「イヤだ。」冷めた視線でハリネズミになった男にもう10本ほど矢を突き立てる。
「このまま野たれ死ネ。しばらくは見物しテおいてやル。十分に踊レよ。」
蹴り飛ばす。
「ぎゃあああああ!」
「ふン、下衆め。」
冷めた目で見ながら自分に刺さった矢を引き抜く。コレは不覚だった。
黒いチュニックなので、色的にはそれほど目立たないが、それなりの出血がありそうだ。パールで始末班を呼ぶ。
ついでにヒーラーもくれと。班が来るまでこのユカイなハリネズミと遊んでいよう。
もう一度蹴り飛ばす。刺さった矢が深く食い込んだり、抜けそうになったり。さらに矢を追加してみたり。
「今まで犯してきた罪をよく噛みしめテ、逝け。」



「ねえ、キーさん。ここのケーキ、どうですかー?」
とある露店。といっても冒険者が営むものだが。
「うーん、確かにあの箱に入ってた可能性は高いな・・。」
もくもく、とケーキを頬張る部下を見ながら、銀髪の青年は応える。
「で、オマエ、俺に一口くれって、忘れてるよな?」
「えー、覚えてますよー。イヤなだけでー。」
ぐ、っとジト目で部下をにらむ。
「コレ、超絶オイシイですよー、コレなら彼女も満足でしょう!」
茶色いミコッテ、ショコラと同じ色のチョコレートのケーキは、残り一個だ。
そうなると、自分は食べることが出来ない。
冒険者の露店は、毎日やっているわけではないので、今日を逃すともう無いかもしれない。
「くぅ・・・。」
最後の一個を箱詰めしてもらい、さらに露店を目指す。
「さて、フネラーレが帰ってくるまでにいくつそろえられるかな・・。」
「またハダカ見たんですねー。言ってくれれば、わっちも見せてあげるのにー。」
「オマエのはいらない。」
「どうしてですかー?」
「これ以上ペイの要求されたら、明日には俺は飢え死にする・・・。」
「ちぇー。」


----------コメント----------

ケーキ美味しそうじゃよ~w
ケーキ食べたくなったんじゃよ~w
そういえば子どもの頃モンブランの糸状?のクリーム?の部分を
フォークでそっと剥がしながら食べたのを思い出したんじゃよ~w
Syakunage Ise (Hyperion) 2012年11月05日 13:26

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>おうさまw実は甘党w
あたしは、子供の頃、モンブランのあのウネウネが気持ち悪くって苦手でしたw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年11月05日 20:45

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そうじゃったのか~w苦手では仕方がないんじゃよ~w
さらに言うとじゃな~w子供のころはスパゲティが大好きでな~w
今も好きじゃが、あの当時は大好物だったんじゃよ~w
パスタではないがパスタに見えて必死になって取ろうとしてたんじゃな~w
まぁ懐かしい思い出じゃよ~w
Syakunage Ise (Hyperion) 2012年11月06日 15:26

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>おうさま、なるほどw
パスタは好きだけど、ボリュームあると少しダメっすw
ちょっとでいいw
子供の頃の麺類だと、うどん、だったかなーw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年11月07日 01:27

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