389書き物。 A view to a Kill II

黒衣森。昼だろうが、夕闇だろうが。

夜のような昏がりの森の中。

一人のミコッテの少女が、3人の追っ手に追われ、必死に助けを求めていた。
「キーさああああああああんんんんん!!!!!」

「たああすけてえええええええええ!!!!!!!!」

少女の名は、フュ・グリューン。名前に反して褐色の肌に茶色い髪。
通称「ショコラ」こと、暗部に携わる情報屋。
今回はとある組織的な犯罪の黒幕の情報の確実性を求めて、政府高官の自宅まで行き、
首尾よく有力な裏づけが取れたところで、護衛の兵士に見つかってしまった。
「半日はかかる」、と上司の冴えない銀髪の青年に言ったものの、
ここまで早く裏づけが取れるとは思っていなかったのだが。
「もしかして、キーさん、寝てる?」と思いながら、必死に何度もパールで伝心する。
結果、街中で追われるハメになり、夕暮れも近い静かな街の中で逃走劇と相成ったのである。
もちろん、街中の冒険者や、鬼哭隊などに助けを求めてもよかったのだが、
情報屋として、(それも裏の)自分としては、顔が売れるのは非常に困る。
さらには、神勇隊に仮とはいえ所属はしているが、もともとフリーランスであるため、
これまた名前が売れすぎるのも困るし、一般隊士は知らないだろう。

「ひいいい!」

街中を走り回るが、戦闘能力なぞ皆無の彼女には体力の限界が早い。

とりあえず、どこかで休まないと、それこそ話にならない。
街中とはいえ、あんな連中に捕まれば、バックグラウンドを利用して「居ない者」にされてしまう。
取締り、またはこそ泥を捕まえた、という理由で。

そこに持ってきて、自分の「顔が売れないように」がさらに効果を増すだろう。
誰も気にしない。

「し、しぬ・・・かも・・・。」荒い息をつきながら、いつもの逃げ道ルートの途中、
街中の川の中に身を伏せ、水分補給と、火照った体のクールダウンをする。
服が濡れるので、逃げ足の枷になるが、ここには常に着替えが用意してある。
しばらく橋の下に身を隠し、手早く着替えるとその足でキャンプ・ベントブランチまでの逃走ルートまでなんとか走りきる。

「に、逃げ足だけは鍛えておいてよかった・・。」

そして。
「いたぞ!」と男3人が抜刀したまま追いかけてくるのが見えて、もうがむしゃらに走りまわる。
「キーさあああああああんんんんんんん!!!!!!」
もう涙ながらの絶叫だ。
こうなれば、助けを呼べるのは彼しか居ない。
「んが?」
やたあああああ!
助けを叫びながら、どうやって逃げたものか思案する。
彼女の驚異的な記憶力と逃げ足は、この先を曲がれば巨木があり、その樹に登れば大体は回避できる。
もちろん、見つかれば逆に逃げれないが。
彼女の肌は褐色、そして服は濃い緑。なんとか今まではコレで樹の一部になり、ごまかしてきた。

案の定、男たちは見失ってしまったらしい。
樹の根元でウロウロとしているが・・・。
帰らない上に、先に一人だけ先行して、また戻ってきた。
「居ない!」「探せ!」などと言っている。
この樹の一部になるのも、そうそう長くはできない。腕力にも限界がくる。

は・・・。早く・・・・来て・・・。わっち、死んじゃう・・・。


そこに、聞き覚えのある声。
た。。。たすかった・・・・・。
「へぇ。魔物ならソコにいるンじゃない?」などと言ってくる。
下を見る。指を指しているのは、あの葬儀屋だ。
「えええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」絶叫する。
腕に力が戻ってくる。ここで落ちたら死ヌ。
尻尾の力も総動員して、ひたすら樹にしがみつく。涙が出てきた。
が。
いつまで経っても怒声や、なにかの音は聞こえない。
下を見る。

惨殺された3人の男が転がっているだけだ。

「ふう・・・・。」たすかった・・・。
あ。

力が抜けて、樹から転げ落ちるように。

「死、しにかけた・・・。」一番痛かった。


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ショコラかわゆすw

その内に間違えてトレントに抱きつかない事を祈ります・・w
Jonathan Jones (Masamune) 2012年10月26日 00:56

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>ジョジョさん、どうもw
ショコラたんはマイペースだけど、必死になるとこんな感じですぅw
トレントにしがみつく・・・ありえるかもw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月26日 05:14

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