388書き物。 A view to a Kill (死の視線)

褐色の肌、茶色い髪のミコッテの少女、ショコラこと、フュ・グリューンは一生懸命に仕事をしている。

それは、彼女の上司たる銀髪の冴えない男も理解しているだろう。
なぜなら、危険な内偵調査や、情報収集を自分に頼ってくるからだ。
もちろん、それに応えるだけの実績も残している。
そして、生存能力も。

なんの戦闘能力も無い彼女の一つの自慢が「逃げ足」だ。


「キーさああああああああんんん!!!!!!」

んが?

やっと得られた仮眠時間だったが、1時間も経たずにパールからの絶叫で起こされた。
「なんだ・・?」眠さと疲れで頭がぼうぅっとしたまま、伝心に集中する。


「たあああああすけてえええええええええ!!!!!!!」
部下のショコラ。

今回、政治的にも少し上の人間の内偵を進めていた部下だが、
ものの半日で終わらせる、とか言っておいて、おそらくこの1時間程度で「確定」してしまったのだろう。

「お前、今どこだ?」眠い眼をこする。

「ベントブランチーーーー出てーーーしばらくーー行ったトコーーーお!」
おそらく走りながらパールを握りながらの伝心だろう。ついでに言えば、かなり切羽詰っているらしい。

「もうだめええええ、わっち、もうだめえええええ!!!」
「落ち着け。すぐフネラーレに連絡する。それまで耐えろ。」
「ど、どれくらーい?」
「半時間、か。」
「死ぬううううう!!!殺されるううううううう!!!!!」
「がんばれ。俺も何度も殺されかけた。オマエもたまには殺されかけろ。」
伝心をフネラーレに切り替える。

「フネラーレ、悪いが急用だ。部下が死に掛かってる。
急いでベントブランチまで飛んで、ショコラの身を保護してやってほしい。」

「あン?あいつか。いつもウルサイって言ってたダろ。丁度イイじゃないカ。」
「頼む。さすがに寝覚めが悪い。ペイ(給料)の上乗せは確実にする。よろしく頼む。」
こんな時、自身にも戦闘能力がカケラほども無いのが悔やまれる。
行ってもなにもできないどころか、足手まといもいいところだ。せいぜい、この葬儀屋に連絡するだけだ。

「チ。ちょっと待ってロ。」
葬儀屋、ことフネラーレは寝台から降りると、装備を整え始めた。

一方。
「ふにゃああああ・・・・。」なんとか追っ手の目が届かなくなった時を狙って、巨木に登り始める。向こうは3人。
剣を携えた「高官」の護衛達が自分の登っている木の下まで来る。ショコラは生きた心地がしない・・。

「チ・・・。ドコ行きやがった・・」



キャンプ・ベントブランチまで移動術式で飛んだフネラーレはというと、あくびをかみころして、意識を集中する。
彼女の左眼「呪眼」金色の眼に視られたものは、なんであれ「対象」となる。彼女が意識して消さない限り、その効果は消えない。
そして、その対象の位置は常に「マーキング」され続ける。

「見つけタ。」
普段仕事を共にしている、このショコラも「マーキング」されているため、どこにいるのかがわかる。
「ペイの上乗せネ。」と少し顔がほころぶ。どうせあの銀髪の男はショコラからふんだくって自分のペイ上乗せに使う気だろう。

長い黒髪をたなびかせ、足早に駆けていく。
「居タ。」笑いをかみ殺すのに、数秒かかり。なんせトカゲみたいに巨木の半ばあたりにへばりついているのだ。
まあ、死んではいないからいいだろう。
その樹の根元周辺に、男が3人、抜刀しながらうろうろしている。

「ネ?お兄さんタチ?何してるノ?」と聞いてみる。
「何だ?」「おい、姉ちゃん、見なかった事にして先に行ってくれ。俺たちは狩りをしてるんだ。」
「へぇ?魔物ならソコにいるンじゃない?」と樹の上を指差す。茶色い生物。
「えええええええええええええええええ!!!!!!!」ショコラの絶叫。
「なに!」と男3人は同時に上を向く。
そして、「よし!」と先頭の男が仲間の顔を見る。
しかし、一人足りない。3人居たはずだ。
その向うには、黒髪の美少女がニコニコしている。
ん?
足元を見る。こめかみを巨大な矢が貫通して、目が飛び出している。
「おい!」返事が無い。ん?もう一人を見る。声もない。
頬を同じく巨大な矢が貫通していて、声が出せるような状態ではない。
黒髪の少女は、両手を振りながらニコニコしている。意味がわからない。
「な。なにが?」と少女に問う。
「ン?」夜のような闇のような、それでいて人形のような美少女は。
一瞬で大きな弓を取り出すと、頬を串刺しにされた男の腰に巨大な矢を打ち込み、一瞬で背に戻した。
男は、ガクンと腰を地面につけ、うううう、としか声が出せない。
「う、うわ・・あああ!」
逃げようとする。が。足が動かない。よく見るとかすかな明りの下、影に矢が突き立っている。
「え?」そして「影縫い」という技術に気づく。だが、これはすぐに治るはずだ。
もう一度、影を見る。その前に自分の足だ。巨大な矢が両足の甲にブーツを貫いて地面に縫いこまれている。

今度はどうすればいいのだろう?

「おしゃべりの時間だネ。」黒髪の少女が声をかけてくる。


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Dance into the fire~♪
DuranDuranの名曲ですよね。view to a kill.
多鯖から失礼しました。
Jouram Monde (Sargatanas) 2012年10月24日 06:16

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>ヨランさん?ジュランさん?かな。間違ってたらごめんなさい。
ようこそいらっしゃいましたw
そうですw
007、ゴールドフィンガー、ですよね。PVがとっても好きw
いろいろ歌のタイトルもお借りしてますので、そちらのほうもw
よければ、またコメントくださいね♪
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月24日 06:43

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む。007のタイトル忘れた・・・。ゴールデンアイ?む?
まあ、この主役の彼女は「ゴールデンアイ」ですがw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月24日 08:33

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普通に英語読みでジョーラムです。
007のボンド役がロジャー・ムーアだったころの映画ですよね。
敵役がクリストファー・ウォーケンだったと思います。
Jouram Monde (Sargatanas) 2012年10月24日 12:12

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追記:今のボンド役は渋くてかっこいいですね。先代のピアース・ブロスナン
もはまり役だと思ってましたが、もう霞んで見えますねw
Jouram Monde (Sargatanas) 2012年10月24日 12:39

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>ジョーラムさん、いらっしゃい♪
007、そこまで詳しくはしらないんですw
ごめんなさい。
でも、俳優が代変わりして行ってるのは知ってますがw
ショーン・コネリーもボンド役だったんですよね。確か。
日本が舞台で、ジェームズ・ボンドは2度死ぬ、ってタイトル。
トヨタ2000GTがボンドカーだったのを知っていますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月24日 13:22

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>ジョーラムさん、追記です。
この少女のお話はそれなりに前から書き連ねております。
折に触れてごらんくださいませw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月24日 13:29

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ショコラの行く末と黒髪の少女は弓術士なんでしょうけど、気になりますね。
続きもあるようなので、ゲームの箸休め時に読みたいと思います。
Jouram Monde (Sargatanas) 2012年10月24日 13:43

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>ジョーラムさん、どうもw
そうですねー、ショコラは新キャラなんですが、愛嬌があっていいかとw
本編の主人公としては、マユ、ウルラ&マリー、フネラーレとなっておりますw
ちなみに、マユの母、レティシアの生い立ちから冒険までもございますですよw
なにせ、投稿400回超えましたしw
過去作品もぜひw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月25日 08:22

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